ハイウエーからフリーウエーに
執筆者:中野 有【とっとり総研主任研究員】
新潟に住むロシアの友人と高速道路を走った。彼は日本の高速道路について外国のように料金面でのフリーウェーでなく、スローで高いスーパーハイウェーであると指摘する。日本では当たり前のように高速料金を払っているが、日本ほど移動するのに高くつく国はないだろう。橋を往復するだけで1万円近くかかる。ミュンヘンに住む友人にこのおそまつな現状を話したらジョークとしか受け取ってくれない。
ドイツの威厳はスピード制限も高速料金も存在しない「アウトバーン」だという。ヒトラーがアウトバーンを造ったのであるが、皮肉にもドイツの発展に貢献している。アウトバーンの存在は、地方分権に資しているからだ。即ち、効率的な移動が可能となり一極集中を避け、バランスのとれた都市開発が可能となった。
また、ドイツ車は、アウトバーン走行のために設計されており、常に最高の技術革新が要求されている。アウトバーンの4車線の追い越し車線を走行するときには迫力がある。ルームミラーに200kmを超す速度で迫るポルシェ等が映ったときは即座に車線を譲らなければいけない。小型の日本車も150kmを超す速度で走行している。
すべての車が最高に整備されたアウトバーンをかなりのスピードで走行することでスピード感がなくなる。不思議とスピード制限がないにも関わらず事故が少ないと聞く。更に、仕事に集中し、ホリデーを楽しむドイツ人の発想はアウトバーンから生まれているようにも感じる。アウトバーンの存在は、ドイツの国土計画、技術力、そして国民性の高揚に寄与している。
さて、日本はどうであろうか。ドイツもそうであるが、敗戦国である日本は戦後復興と高度成長の根幹となった東海道新幹線や名神高速などが世銀からの融資で建設された。当時は資金不足のため高速料金の徴収を行ったのであるが、日本は世銀の借入国から出資国へと変貌を遂げ、また減価償却が終わってからも料金を取り続けている。
日本の高速道路が無料になればどんなことになるのであろうか。
列島を移動する人口が激増する。交流人口が増え観光産業が栄え、地方が活性化される。流通コストや物価が下がり、経済が蘇る。またヒト・モノがよどみなく流れることで社会が元気になる。日本海新聞の富長一郎記者は、これらの現象を携帯電話を連想すれば納得できるという。携帯電話が爆発的に普及したのは機器が無料だからであり、高速道路の料金無料化と景気浮上を結びつけている。
知る限りでは、先進国の多くの国の高速料金は無料ないしは日本のように高くない。スイスでは一度通過するのに1年分の料金を取られステッカーを車にはられた。その1年分の料金も納得のいく金額であった。大国に囲まれた国だけに1年分の高速料金をまとめて取るとはスイスらしい合理的な考えである。
世界の常識を日本の高速道路に適応すべきである。首都移転など大きな事を言うぐらいならハイウェーをアウトバーンとまでいかなくてもフリーウェーにすべきである。景気が浮上すれば高速料金以上の収入は賄える。新世紀は、ちまちました発想でなく大きな発想と変革が求められている。数パーセントの経済成長は案外身近な発想の転換で達成されるのではないだろうか。(なかの・たもつ)
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