【読者の声】特定という名の不特定–臨時暫定特定国家
執筆者:伴 武澄【萬晩報主宰】
1999年02月15日付萬晩報「特定という名の不特定–臨時暫定特定国家」に興味ある2通のメールが届いたので紹介したい。ひとつは使命を失ったまま存続を続ける通産省の外郭団体の実態であり、片や飲料用に転用できるからと医療用アルコールに酒税相当分が”課税”されているというとんでもない話である。
中央官庁や地方政府の外郭団体にはほとんど世間から忘れ去られた団体が多い。OBたちの定年後の格好の天下り先であるというだけでひどい話なのに、時代錯誤の国の基準認証の隠れ蓑になっている場合が少なくない。医療用アルコールを飲んでいたのは終戦直後のモノ不足の時代である。今どき、飲酒目的で薬局でアルコールを購入する人がいるとは考えられない。こんな時代錯誤は即時、廃止すべきである。【伴 武澄】
●国産OSシグマを死滅させたまま存続するIPA
米国カリフォルニアにて、ソフト関係の仕事をしております。職場は5名だけのスタートアップベンチャーです。「特定という名の不特定–臨時暫定特定国家 」を読ませていただきました。日本において、ソフトウェア産業もまた通産省が”仕切って”いるわけですが、やはり官僚丸出しの体制だと実感しております。
1980年代後半に「西暦2000年にはソフトウェア開発者が30万人不足する」とかいうキャッチフレーズを掲げ、IPAなる団体を立ち上げたのは通産省です。そのIPA主導で開発された国産OSシグマは、2000年問題を待つまでもなく絶滅した模様です。仮に存続していたとしても、2000年問題はクリアできなかったことでしょう。仕組みとしては、どうしようもない代物でしたから。
10年ちょっと先の技術動向など読めるはずもない連中が2000年には何人の技術者が不足するなどと豪語して特殊法人を立ち上げる。そして、そのIPAは実質上、ソフトウェア技術者があぶれて、今も立派に存続しています。いつの間にやらその役目はコンピューターウィルスの情報収集などに変わったようですが、セキュリティーに関する情報なら米国のCERTなどをウォッチしている方がよっぽど迅速・確実な情報が入手できます。
つまりは、IPAなどという団体に存在価値はないわけです。シグマOSが存続していない以上、彼らは収入源を持ってないはずです。逆にその団体が存在するということによって、納税者からのお金が流れているということが容易に推定できます。
あるいは、情報処理技術者試験なども、同様の位置づけですよね。昭和40年代に「情報処理に従事する技術者を育成するため」という目的で一種、二種情報処理試験からスタートしたわけですが、今や特種・ネットワーク・アプリケーション・システム監査などのメニューが追加されています。
つまり、当初の目的だった情報処理技術者の育成などという理由はすでに達成されているわけです。あとは、その仕組みの維持そのものが目的となるだけです。そして、その情報処理技術者試験に合格するためには、開発現場ではまず使われることのない知識の習得が強制されます。Microsoftのやっている試験のほうがはるかに実用になります。
ソフトウェアに限らず「一旦たちあげた以上はなにがなんでも外郭団体は存続させよう」という連中が産業を仕切っているわけですから、私は日本の将来には悲観的です。「身内の首を切らない」ために、全員が危機にさらされる仕組みの縮図がそこにあるからです。
だからこそ、競争原理が存在し、元気のあるカリフォルニアにて働くことを決心した次第です。実際、こちらは面白い。自分の実力を向上させ続けないと生き残れない社会というと大袈裟かもしれませんが、会議ばかりで何も生産しない日本の会社にいた頃よりは、毎日がはるかに充実しています。(パロアルトにて 匿名希望)
●酒税相当分が課税されている医療用アルコール
いつも萬晩報を興味深く拝見しております。最近、2月15日号と同じような経験をしましたのでメールいたしました。消毒に用いるエタノールに酒税がかかっているという話を聞きまして、河野太郎衆議院議員にメールしてお尋ねしたところ、大蔵省いわく「そのような事実はない」との返答が来たそうです。
再度調べてみたところ、エタノールは通産省の外郭団体「日本アルコール販売」が専売しており、医療用途に用いられるものは酒税相当分の上乗せがされていました、確かに大蔵の言うとおり酒税ではないのですが、同じ税率のものがかかっております。大蔵が知らないはずはないのですが、酒税がかかっているかと聞かれたのでそういうことはないと答えたまでだとのことでした。
エタノールの販売価格には一般価格と特別価格の二通りがあります。一般価格は医療用などの価格、特別価格は工業用として酒税相当額の上乗せがないもので、 両者には大きな価格差があります。
95度のエタノールの場合、医療業者は1リットルあたり966円で買っており、工業用途で使う場合は146円です。この差額820円が酒税相当分になります。本体価格を100とすると酒税相当額は84.8% 税率にすると560%以上に相当します。
一般に使われている消毒用のエタノールは若干濃度が低いものの酒税相当額が81.5%を占めていると聞いております。先に述べた特別価格は法令で定められた物品の製造用途に使用するアルコールに適用される価格で、残念ながら消毒用エタノールは飲料用に転用可能との趣旨で適用除外されております。
液体消毒剤であるアルコールにはエタノールの他にイソプロパノールがあり、前者の方が広範囲に作用します、後者の酒税相当分の上乗せはありませんが、毒性があるため口腔内では使えません。致死量が定められ、消毒に用いられる薬剤にほとんどの医療従事者が知らずのうちにこんな酒税まがいのものを取られているのは納得がいかないものであります。またアルコールは多くの医薬品の製造に用いられますが、一部を除き一般価格で納入されていると聞いており、価格に上乗せされております。
消毒用のアルコールは飲料用として転用できるから酒税相当分をかける、しかも文句の出ないように大蔵ではなく通産が価格上乗せをすると言う構図です。215号をみていて根は同じだなと思ったのでメールさせていただきました。(東京都小金井市、医師)