執筆者:伴 武澄【萬晩報主宰】

2月4、5日と京都国際会議場で「関西財界セミナー」が開催された。今回のテーマは「日本再生、企業再生」。関西地区に本社を置く企業のトップの生の声を聞きに行った。とはいうものの筆者にとっては通勤するよりずっと近い。
刺激になったのはアパレルのサンリット産業の小池俊二社長の話だった。外国人労働者問題で一人、開国論を張った。
●中小企業では今も人手不足

現在、日本では企業のトップとか、英語教師や料理人など特殊技能者を除いて、外国人の就労は原則禁止である。一部開放されているのは日系人の「帰国労働」だけである。これはかつて移民で海外に渡った人たちの親族である。
バブル経済のとき、労働力の逼迫がさけばれ、外国人労働の活用が議論されたが、生まれた制度は「技術研修生」。体のいい低賃金労働制度で、1年間の企業研修の後、2年間の就労が認められただけだ。主に中国などから組織的に導入され、中小企業を中心に働いている。
小池氏は「雇用不安が高まっているときに外国人労働の導入をいうのは矛盾しているようだが、中小企業の現場には、日本人はだれも見向きもしない。需給のミスマッチはいまも続いている」と労働力不足の悲惨な現状を紹介し、外国人労働者導入の大幅な枠拡大の必要性を強調した。
同氏によれば、5万人の正規の外国人労働者に対して、不法就労者28万人、不法滞在者28万人もいる、合計で130万人もの外国人が日本にいるという。「日本政府の外国人対策は一方で締め付けし、他方で放置しているような状態だ」とする小池氏の主張に日本の行政ダブルスタンダードを改めて思い知らされた。
日本の多くの人々は外国人と聞くと「蛇頭」による組織的不法入国事件や犯罪を重い浮かべるが、技術研修生たちの素性はまったく違う。多くの場合「何千人のなかから数十人という形で選ばれたエリートたち」なのだ。
●活性化を生む異文化とのぶつかり合い

パソナの南部靖之氏の話も萬晩報的に言えば当たり前だが、会場では異彩を放っていた。やはり外国人の問題で「1990年前後にアメリカが年間の移民受け入れ枠を拡充して世界から優秀な頭脳を導入した」ことを紹介し、異文化とのぶつかり合いが今のアメリカ経済の牽引役を果たしていると主張した。
ある分科会で、南部氏はそうした外国人導入のために「雇用省」の設立を提案したのだが、議論は本質のところの異文化とのぶつかり合いの是非には発展せず、「雇用省の設立は行革に逆行する」「労働省があるのだからそこでやらせればいい」など本末転倒となった。
一部の新聞記事にも「後段」の論議が強調されて、南部氏の本意は理解されないままに終わってしまった。
セミナーのテーマは「日本の再生、企業の再生」で一部からは「ここまできたら過激すぎるほどの議論が必要だ」との意見も出ていた。しかし、議論の多くの時間は「雇用の確保」と「雇用の維持」に割かれた。小池氏や南部氏の意見が多くの参加者の賛同を得たのではない。
企業トップの日本に対する認識はこんなものである。そんな思いで会場を後にした。