執筆者:八木 博【シリコンバレー在住】

今回は、情報を価値に変える仕組みを考えてみたいと思います。今まで情報は独占するところに価値があったのですが、インターネットや個人の意識の変化で、オープンな情報を早くビジネスにつなげることが、世界の主流になってきました。それを米国がどのような仕組みにしているかを眺めてみたいと思います。私の考えも入っていますので、ご了解ください。
●戦略的情報開示

今まで、何度かお伝えしていますが、米国は1980年代には日本の経営を学びました。そしてその中から、会社のマネジメントを徹底的に強化してきたわけです。そこで、仕事をシステム化してその仕事に合わせて、組織を変えてきたと思います。すなわち、仕事=情報のネットワークの成果、と考えることで組織をネットワーク化して、動けるようにしているわけです。
そこでは、情報を独占することではなく、開示することで仕事の効率が図られます。すなわち、情報を開示する仲間を作ることがビジネスの大きな枠組みになるのです。そしてそれらのネットワーク同士がさらにつながり、お互いの情報が共有される社会へと広がって行くわけです。
情報を手に入れる仕組みはいろいろありますが、米国ではお金を使ってシステム化しています。すなわちアイデアを持つ人が、投資してくれるお金を持っている人に説明するところから情報開示が始まります。それを、系統的に行っているのが、ベンチャーキャピタルですし、あるいは株式公開サポートの機関です。
すなわち、お金と引き換えに、情報を手に入れるわけです。もちろんその時には、ビジネスの形をしている情報になっていることが多いです。このときに多様性を認める社会という基盤が、新しいアイデアを出やすくさせているわけです。
●情報を高度化させる仕組み

ベンチャーキャピタルのような、情報を集める仕掛けがあるわけですが、その仕掛けはさらにその情報の価値を高めて行きます。それは、単発的な情報を統合することによって、新しい技術がどのような展開をして行くかの見極めをする役割になるのです。すなわち、単独でもすばらしい技術にソフトウェアをつけたり、周辺ビジネスと結んだり、広がりを持たせることが出来るわけです。
もちろんビジネスでお金を儲けることが、ベンチャーキャピタルの目的ですから、投資している案件はもちろん成功させなければなりません。しかし、周辺のビジネスの展開も見えてくれば、投資の成功率も大きくなってきます。それで、最近のベンチャーキャピタルの投資成功率は5割を越えるといわれるようになったわけです。
すなわち、個々の案件同士を有機的につなげることによって、お互いが支える形を取り始めたと言えると思います。そして、ベンチャーキャピタルが舵取り役をしていることになるわけです。
株式公開と言う、情報集め米国では店頭公開株(NASDAQ)の時価総額が、ニューヨーク市場の時価総額を越えました。マイクロソフトや、Intelなど元気に良い会社がいるせいもありますが、新しいビジネスが成長していることを示しています。この店頭公開と言う時も、会社はその中味を公開してから、公開株と言う形で創業者は金銭を手にするわけです。そこでも、情報が開示されます。それから先は、投資家が目を光らせますので、その情報も公開へと向かうわけです。
Win-Winという新しい考え方が実証されている今までの考えではKnow-How(情報)を隠すことが価値を生んでいたのですが、現在では情報を公開するほうが、もっと価値を生むと言うことになってきたのです。それは、一人だけではリスクまで抱えてしまうのですから、投資など恐くて出来なくなるのですが、お互いが情報開示をすると、その中味を使いながらリスクを減らし、次のビジネスを生むと言うことが実証されてきたわけです。
これは人類史上はじめての行動だと思います。自分も相手もHappyになれる世界をWin-Winと言うのですが、21世紀には日本もこの考えに基づいた社会の仕組みに大きく変化していると、期待しています。
参考図書

スティーブン・コヴィー著「7つの習慣」キングベアー出版。米国でのベストセラーでWin-Winという考え方が、重要な理由が良く分かります。ご一読をお勧めします。(日本でもベストセラーだとか)
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