執筆者:佐藤 嘉晃【萬晩報通信員】

それは、正月の三が日も過ぎた4日の午後、妻の実家からの帰路、高速道路を避けて国道12号線を札幌に向け走っていた時の事だ。時々雪がちらつく程度の路面は、発進・停止に多少気をつければよい程度の快適と言っていい状況であった。

ちょうど、国道では日本一長い直線道路(30km弱)と言われる道の途中で、上り坂になっている頂上付近を過ぎたあたりでふと、対向車線の車に目がいった。こちらから見て右手前方が凹んだようであり、さらに運転席のドアの下には運転手のものと思われるジャンパーのようなものがはみ出していて、慌てた様子が見て取れた。

とっさにこれは事故かもしれないと思い、その車から1mほど過ぎたあたりで車を停めると、その車のすぐ後ろ、歩道と車道の間くらいのところに、小学生くらいの女の子のように見える人が倒れていた。どうやら事故直後らしく、はねたと思われる車の運転手と同乗者が慌ててその子を抱き起こそうとしていた。

その様子を横目で見ながら大急ぎで携帯電話で119番通報した。事故現場はちょうど「南砂川郵便局」の真ん前だったのだが、繋がった消防本部は岩見沢市にあった。電話に出た担当者は開口一番「携帯電話ではなく、近くに公衆電話はありませんか」と言った。さらに、公衆電話から今から言う番号(管轄の砂川市の消防本部)に掛け直すようにとのこと。

子供の命がどうなるかという緊急時に、何を言い出すのかと思ったが、携帯電話からでは管轄消防本部には繋がらないという。しかしまわりを見渡しても公衆電話らしきものも見当たらず、番号を控えるにもペンの持ち合わせがない事などを告げ、とにかくそちらから管轄の消防本部へ電話して欲しい旨を説明し、ようやく救急車の手配を終える事が出来た。

電話を終えた頃には、郵便局の職員らも駆けつけ、出来る事はここまでと車を発進させたが、どうも釈然としない思いが残った。冬の北海道では、仮に運良く公衆電話を見つける事が出来たにせよ雪に埋もれたボックスの雪を払い除けてからでしか使えない訳で、とても緊急連絡用として重宝出来る代物ではないのだが・・・。

街中でこれ見よがしに会話を楽しむのも携帯電話なら、まさにこのような状況で、そしてここ北海道のように広大で、公衆電話ひとつ見つけるにも苦労するような場所の緊急連絡用として活用してこそ価値があると思っていただけに、今回のような緊急時のお寒い対応には縦割り行政の愚かしさを感じると同時に、なんとも言えない憤りを憶えずにはいられない。

もっと血の通う、人が主体の行政をと心から望む次第である。

後日改めて契約している携帯電話会社に問い合わせてみたところ、110番通報に関しては”都道府県単位”で対応しており、国内においてはどこから掛けても管轄の警察署に通報可能であるという。また、119番通報に関しては”市町村単位”で対応する事になっているが、現在携帯のキー局からの回線をそれぞれの自治体が負担する事になっており、その負担を拒否している所が通じないそうで道内においては全体を11個所のブロックに別けたそのどこか最も近い消防本部には繋がるようにはなっており、それで今回のようなケースが起るという説明であった。

現在のところ、救急車や消防車の必要がある時でも、まず110番に通報するのが最も手っ取り早い方法であるとも説明された。最後に、同じ通信員の中にも、またこれを御読みになっている方々の中にも、海外に居住されている方々もいらっしゃるかと思いますが、そちらではこのような場合はどう対応されるのでしょうか。また、国内におられる方々は、どのような感想をお持ちになったのでしょうか。(さとう・よしあき)

佐藤さんへysa@voicenet.co.jp。ホームページはhttp://www.voicenet.co.jp/~ysa/