一日一言(3月2日付け)サイバー記者クラブ
 ネコもしゃくしもインターネット時代にまた注目すべき動きがある。もしかすると記者クラブがなくなるかもしれない。だれでも利用できる「サイバー記者クラブ」開設が準備されている▲サイバーとはサイバネティクス(人工頭脳学)の略。つまりインターネットのホームページ上に「仮想記者室」を開いて、企業や官庁の発表情報を、だれでも取得できるようにする試みだ▲記者クラブは官庁などが報道機関のために部屋を提供して取材の便宜を図る制度。名目上はクラブ員同士の交流が目的だが、現実は「発表ジャーナリズムの温床」と批判がある▲特にクラブ内での報道協定やオフレコ取材が、結果としで情報操作を招くことは少なくない。それでもクラブがなくならないのには訳がある。一度座ればすぐ分かる。実に便利▲今日の予定から今月の予定まで。いちいち担当課や企業を回らなくても、情報の方から記者を求めてやってくる。新米記者でも発表にきた担当者に、いくらか質問するだけで大方の記事は沓けてしまう▲しかもクラブ員以外は排除されるから、既存の報道機関だけで情報を独占できる。まさにー石二鳥の取材システム。外国人記者が日本に来て、まず一番に批判するのも記者クラブ制度だ▲今月13日、鎌倉市が日本で初めて記者クラブ廃止の方針を打ち出して大騒ぎになっているが、もしサイバー記者クラブが誕生すれば、もう議論の必要さえない▲いま準備が進んでいるのは大手企業の発表情報をまとめるサイバー記者クラブ。すでに東京の50社ほどが参加を申し出ている。これが広まれば記者がクラブにへぱりつく必要は少なくなる▲電子の仮想空間は着実に世界も日本も変えっつある。香川もその例外ではありえない。

一日一言(3月4日付け)似て非なる兄弟
 昨夕のNHKテレビで高知県の橋本知事は、さすがの明せきさで国籍条項廃止論を展開した。少しまゆ根にしわを寄せて話す例の癖も健在。政治家の素質なら首相の兄を超えるだろう▲いま高知県は都道府県で初めて、在日外国人を一般職公務員に採用する準備を進めている。自治省は「公権力の行使、国家意思の形成に携わる」から|と例の通り、真っ向からフニャフニャ? 反対だ▲国家意思とは本来、国民が形づくるもので、公務員はそれに従うのが道理だから、理屈はどうもお兄ちゃんが束ねる(?)国より、弟の理屈の方が勝っているように聞こえる▲国のあり方そのものに関わる重大事だから、条項の当否は即断しないが、それより印象深いのは、一地方の首長が、これを果敢に政治課題に取り上げたことだ。彼には問題設定能力がある▲「似て非なるもの」というが、政治家と行政官もその典型だ。両者は同じ分野で活動し、似た能力を求められるが、決定的な違いがある。それは問題を提起する力の有無だ▲一般に、能吏とは問題解決能力に優れた人を指す。さらに有能なら露見する前に、問題まるごと消す奇術さえ行う。問題になるべき問題が問題にならず、安心していると後で泡を食わされる▲これに対して、有能な政治家とは、次の時代に現れる必然の問題を率先して明らかにし、議論を起こし、解決の道を探ることで、同時に新しい時代そのものまで世の中に理解させる▲国籍条項は、国のあり方、その過去の清算と未来、たとえば官僚支配の中央集権から地方分権社会までの道筋で出食わすはずの、実にさまざまな問題を浮かび上がらせる大テーマだ▲首相と知事。2人はよく似ているがずいぶん違う。香川のテーマって何だったっけ。