Yorozubampo Since1998
無料配信します
北海道独立論 金融・財政 わくわく話 環境と生活 日本的経営 日本人と日本
TopPage
BBS
去年のコラム
00年のコラム
99年のコラム
98年のコラム
萬晩報とは
縮刷版2号
かぼちゃFund
萬傘会Forum
通信員ページ
よろずリンク
常任執筆陣
ご意見

 
ビンラディンの勝利
2002年03月26日(水)
萬晩報主宰 伴 武澄


 「ビンラディンの勝利」と題して英ガ-ディアン紙に掲載されたオックスフォード大学のドーキンズ教授のコラムを、イギリス在住の読者が翻訳して送ってくれた。対イラク戦争こそがオサマ・ビンラディンが望んでいたことで、アメリカはビンラディンの罠にはまってしまったというのである。またブッシュのような危険人物を指導者に選んでしまうアメリカの民主主義に欠陥があるのではないかとも結論付けている。原文を読んだ読者もいると思うがあえて、その邦訳を転載したい。
(伴武澄)

この悲惨な過ちを引き起こした政治体制

リチャード・ドーキンズ・オックスフォード大学教授
Saturday March 22, 2003 The Guardian

http://www.guardian.co.uk/alqaida/story/0,12469,919618,00.html

 オサマ・ビンラディンが熱望していた夢の世界がこれ以上願ってもない形で訪れた。真珠湾以降、かつてないほど、世界規模、最大の同情が膨らんだアメリカへの挑発行為を起こしてから約18カ月後、国際親善が無駄にされ続け、国際的な善意の交流がゼロの状態に到達した。ビンラディンは、きっと自分で祝杯を挙げていることだろう。そして不信心者達は、イラクのブラックホールへまさに飛び込もうとしている。ビンラディンが長きに渡って準備して来た巨大な悪魔との聖戦には、いつも世界規模のアメリカへの同情によって妨害されるかもしれない危険をはらんでいた。しかし、心配する必要は全くなかった。ブッシュ軍事政府の舵取りによって、万事予想通りにことが運んだ。すばらしいことにこの戦争で何が起ころうと、どうでも良いのだ。

 ビンラディンの歪んだ観点から、どんなことを考えているか想像してみる。

 もし、アメリカが迅速に勝利した場合、ブッシュは憎きサダムは取り除かれ、好ましいイスラム政権への道を開くという我々の仕事を達成してくれたことになる。さらにうまくいけば、2004年の選挙で本当にブッシュが勝つことになる。ついにはブッシュが鼻高々に己の所業を自慢をし始める時、これによって、不満に口を尖らせ、いきがって闊歩する若者が立ち上がり、憤慨して蜂起することを、今、想像できる奴などいるはずもない。我々は、攻撃目標が足らなくなって困ってしまうほど、たくさんの積極的な殉教者を獲得しようではないか。あの愚鈍でいけ好かないアメリカ人が勝利した方がまだマシだ。

 「大量殺戮のために戦争を起こす」という主張は、不誠実であるか、または先見の明がなかったために怠慢に陥っていたことを露呈しているに過ぎない。もし、現時点で、そんなに戦争が本当に必要だというのなら、少なくとも2000年または2001年の選挙期間中に少しでも触れておく必要がなかったというのか?

 ブッシュにしろブレアにしろ、それぞれの選挙民に対しこの戦争について、なぜ一言も触れなかったのか?

 主要な政治家として、戦争に関する選挙公約を挙げたのはジェラルド・シュローダーだけだ。それも彼は反対している。 

 なぜブッシュは、ブレアが誠実ぶりながら忍び足で後ろに付いて来るのを見計らってから、突然イラクを侵攻するぞと脅し始めるのか?
 何故、その前から行動しなかったのか?

 答えは恥ずかしくなるほど簡単で、そして彼らにはそれを恥じ入る気配すらない。 筋が通らず、子供染みている。がしかし、ずべては2001年9月11日で変わってしまった。

 大量殺戮兵器やサダムの自国民への残虐行為について誰が何といおうと、ブッシュがこの戦争を起こしても非難されないのは、多くのアメリカ国民そしてブッシュ自身も、これを9・11の復讐だと捉えているためだ。これは、もっと性質が悪い。これは完全な人種差別であり、また宗教に対する偏見だ。イラクがこの残虐行為に加担しているというほんの小さな仮説すらも立てている者は、誰もいないのだ。 

 世界貿易ビルを攻撃しのは、アラブ人だったンダヨな?それなら、アラブ人をぶん殴りに行こうぜ!9/11のテロリストは、イスラム教徒だったんだろ?じゃあ、イラキーもイスラム教徒だよな?それならオッケーじゃん。そこまで行って、最新ハイテク兵器をちょっと見せてやろうぜ。驚愕してビビるぜ。決まってるさ。

 ブッシュは、この世界が、聖ミカエルの天使たちが悪魔ルシファーの力に対抗したという正義と悪の戦場だと本気で信じているようだ。我々はアマレク人を追い払い、ミディアナ人には自警団を派遣してこれを撃破し、その後、彼らの魂には神の裁きが下るであろう。こんなでっち上げの神学説で気分を高揚させれば、サダム・フセインとオサマ・ビンラーディンの区別が付くようになるまでに、かなり時間がかかる。ブッシュの忠実な支持者の中には、善と悪の最終戦争=アルマゲドンとその後の歓喜を呼び起こす前兆だとして戦争を歓迎する者までいるのだ。

 私たちは、ブッシュが本当にこんな狂った宗教を信じているわけではないと仮定するか、少なくともそうではないと願うしかない。だが彼は、自分が神の代わりに悪魔の魂と戦っているのだと、本当に信じているらしい。当然トニー・ブレアはブッシュよりもはるかかに知的で有能である。しかし、自分が正しく、他の皆はほとんど間違っていると捉えている揺ぎない信念からは、何か神がかり的なものを感じるのだ。ブレアは力によって平和をもたらすという輩の邪悪でどこか疑わしい主張に対して憤っていたはずだが、しかし彼もまた悪魔を信じているのだろうか?

 悪というものは、罪や(イラクという狂気の沙汰が起こる以前は、ブッシュのお気に入りの標的だった)恐怖と同様、独立して存在するのではなく、また精神でもなく、そして対決し征服すべき対象でもない。悪とは、手に負えない人々が巻き起こす手に負えない事柄の雑多な集まりなのである。このような手に負えない人々はどこの国にも存在する。愚かで気の狂っている人々や絶対に権力に近づかせてはならないような人々も存在するのだ。

 ただ、このような危険な人々を抹殺しても何の役にも立たない。このような人々はすぐまた新たに入れ替わってしまう。私たちは、このような人々が権力の頂点に現れないよう、その社会制度や憲法、選挙制度を見直さなければならないのだ。サダム・フセイン同様、西側の我々も、罪を負わなければならない。米、英そしてフランスは、折に触れてサダムを支え、さらには軍備を与えたりすらして来たのだ。そして私たちは自慢の民主主義制度についても検討すべきなのかもしれない。私たちの選挙制度は自国のリーダーを選ぶ際、とんでもない過ちを犯すことのないよう、本当にキチンと整備されていたのか?そうではないか、このような過ちが、現在のきわめてひどい結果を導き出したのだ。

 アメリカ合衆国の人口は、約3億。そこには地球上の人類の中でも、多くの教養があり、才能がある人々が住んでいる。ノーベル賞の受賞者数を始め、あらゆる教養ある功績を鑑みても、合衆国は世界を大きく引き離している。このような有能で才能に満ち溢れた人々を土壌に持つ国なら、きっと最も優秀な人材をリーダーとして選出するだろうと思うに違いない。しかし、一体何が起こったというのか?多くの予備選挙や議員総会、数々の演説やテレビ討論、1年以上も休みなしに続いた選挙活動の雑踏の末に、3億もの全人口の中から、頂点に浮かび上がったのが、誰あろう、ジョージ・ブッシュだとは。

 アメリカの友人よ、私が君たちの国を愛していることはご承知だろうが、一体何がどうなったら、こうなるのか?ああそうだ、そうかもしれない。ブッシュはいわれているより馬鹿ではないかもしれないし、彼が見かけほど馬鹿ではないことも神はご存知なのだろう。どちらにせよ、君たちのほとんどが彼に投票していないことは私も知っている。しかし、私が言いたいのはそこなのだ。でしゃばるようで申し訳ないのだが、君たちのかの有名な合衆国憲法の何処かに、何かちょっとばっかり間違いがあるかもしれないのでは?

 もちろん、特にあの時の選挙はデッドヒートで普通ではなかった。通常なら、選挙にはコインを投げるのと同じような同点決勝戦なんて必要ない。国内で優勢だったアル・ゴアは、選挙人団でもその得票差を広げていたが、デットヒートを展開したフロリダで、公正で偏見のない最高裁に持ち込まれ、同点決勝という判定を下されてしまった。その通り。ブッシュは一種のクーデターによって権力を手にしたのだ。これは憲法上合憲のクーデターだった。この選挙制度には、ずっと以前から問題が指摘されていたと言うのに・・・

 選挙人団25票が一方からから他方へ動くことで、各個人の投票が州全体の誤差の中に深く埋没してしまうようなことは本当に起こっていいなのか?そして、選挙結果がこんなにも直接的に金に比例して決定するのならば、選挙で勝利する候補者は、とても金持ちであるか、金持ちに有利に取り計らう用意のある人間でなければならなくなる。それが本当に賢明な選挙だと言うのか?

 ある企業が新しい最高経営責任者を探したり、ある大学が新しい学長を選ぶような場合、最適な人材を見つけるためには、想像を絶する労苦を費やすだろう。プロのヘッドハンティング会社によって、書面による審査や徹底した面接が何度も行われ、心理学的な適正テストが導入され、内々に調査もされる。それでも、まだ、間違いが起こることがあるのだ。

 しかし、それは誤りを避けるためのたゆまぬ努力は必要ないということではない。恐らく、このような方法は、地球上で最も力のある権力者を選ぶには、非民主的なのかもしれない・・・が、ちょっと考えて欲しい。世界中で一番有能な所で、丸々1年かけて、新しいCEOを選ぶ方法とほんの少し違う努力を費やした末にブッシュを選ぶような会社と一緒に仕事をする気になるだろうか?

 サダム・フセインは、イラクに大惨事をもたらし続けたが、直接の近隣諸国を超えた脅威となったことは一度もなかった。ジョージ・ブッシュは、世界に対して大惨事をもたらしている。そしてそれは、ビンラディンには願ってもないことだなの。(リチャード・ダーキンス:英国学士院の特別研究員、オックスフォード大学教授)

(原文)http://www.guardian.co.uk/alqaida/story/0,12469,919618,00.html


Bin Laden's victory

A political system that delivers this disastrous mistake needs reform

Richard Dawkins
Saturday March 22, 2003
The Guardian


Osama bin Laden, in his wildest dreams, could hardly have hoped for this. A mere 18 months after he boosted the US to a peak of worldwide sympathy unprecedented since Pearl Harbor, that international goodwill has been squandered to near zero. Bin Laden must be beside himself with glee. And the infidels are now walking right into the Iraq trap.

There was always a risk for Bin Laden that worldwide sympathy for the US might thwart his long-term aim of holy war against the Great Satan. He needn't have worried. With the Bush junta at the helm, a camel could have foreseen the outcome. And the beauty is that it doesn't matter what happens in the war.

Imagine how it looks from Bin Laden's warped point of view...

If the American victory is swift, Bush will have done our work for us, removing the hated Saddam and opening the way for a decent Islamist government. Even better, in 2004 Bush may actually win an election. Who can guess what that swaggering, strutting little pouter-pigeon will then get up to, and what resentments he will arouse, when he finally has something to swagger about? We shall have so many martyrs volunteering, we shall run out of targets. And a slow and bloody American victory would be better still.

The claim that this war is about weapons of mass destruction is either dishonest or betrays a lack of foresight verging on negligence. If war is so vitally necessary now, was it not at least worth mentioning in the election campaigns of 2000 and 2001? Why didn't Bush and Blair mention the war to their respective electorates? The only major leader who has an electoral mandate for his war policy is Gerhard Schroder - and he is against it. Why did Bush, with Blair trotting faithfully to heel, suddenly start threatening to invade Iraq when he did, and not before? The answer is embarrassingly simple, and they don't even seem ashamed of it. Illogical, even childish, though it is, everything changed on September 11 2001.

Whatever anyone may say about weapons of mass destruction, or about Saddam's savage brutality to his own people, the reason Bush can now get away with his war is that a sufficient number of Americans, including, apparently, Bush himself, see it as revenge for 9/11. This is worse than bizarre. It is pure racism and/or religious prejudice. Nobody has made even a faintly plausible case that Iraq had anything to do with the atrocity. It was Arabs that hit the World Trade Centre, right? So let's go and kick Arab ass. Those 9/11 terrorists were Muslims, right? And Eye-raqis are Muslims, right? That does it. We're gonna go in there and show them some hardware. Shock and awe? You bet.

Bush seems sincerely to see the world as a battleground between Good and Evil, St Michael's angels against the forces of Lucifer. We're gonna smoke out the Amalekites, send a posse after the Midianites, smite them all and let God deal with their souls. Minds doped up on this kind of cod theology have a hard time distinguishing between Saddam Hussein and Osama bin Laden. Some of Bush's faithful supporters even welcome war as the necessary prelude to the final showdown between Good and Evil: Armageddon followed by the Rapture. We must presume, or at least hope, that Bush himself is not quite of that bonkers persuasion. But he really does seem to believe he is wrestling, on God's behalf, against some sort of spirit of Evil. Tony Blair is, of course, far more intelligent and able than Bush. But his unshakable conviction that he is right and almost everybody else wrong does have a certain theological feel. He was indignant at Paxman's wickedly funny suggestion that he and Dubya pray together, but does he also believe in Evil?

Like sin and like terror (Bush's favourite target before the Iraq distraction) Evil is not an entity, not a spirit, not a force to be opposed and subdued. Evil is a miscellaneous collection of nasty things that nasty people do. There are nasty people in every country, stupid people, insane people, people who should never be allowed to get anywhere near power. Just killing nasty people doesn't help: they will be replaced. We must try to tailor our institutions, our constitutions, our electoral systems, so as to minimise the chance that such people will rise to the top. In the case of Saddam Hussein, we in the west must bear some guilt. The US, Britain and France have all, from time to time, done our bit to shore up Saddam, and even arm him. And we democracies might look to our own vaunted institutions. Are they well designed to ensure that we don't make disastrous mistakes when we choose our own leaders? Isn't it, indeed, just such a mistake that has led us to this terrible pass?

The population of the US is nearly 300 million, including many of the best educated, most talented, most resourceful, humane people on earth. By almost any measure of civilised attainment, from Nobel prize-counts on down, the US leads the world by miles. You would think that a country with such resources, and such a field of talent, would be able to elect a leader of the highest quality. Yet, what has happened? At the end of all the primaries and party caucuses, the speeches and the televised debates, after a year or more of non-stop electioneering bustle, who, out of that entire population of 300 million, emerges at the top of the heap? George Bush.

My American friends, you know I love your country, how have we come to this? Yes, yes, Bush isn't quite as stupid as he sounds, and heaven knows he can't be as stupid as he looks. I know most of you didn't vote for him anyway, but that is my point. Forgive my presumption, but could it just be that there is something a teeny bit wrong with that famous constitution of yours? Of course this particular election was unusual in being a dead heat. Elections don't usually need a tie-breaker, something equivalent to the toss of a coin. Al Gore's majority in the country, reinforcing his majority in the electoral college but for dead-heated Florida, would have led a just and unbiased supreme court to award him the tie-breaker. So yes, Bush came to power by a kind of coup d'etat. But it was a constitutional coup d'etat. The system has been asking for trouble for years.

Is it really a good idea that a single person's vote, buried deep within the margin of error for a whole state, can by itself swing a full 25 votes in the electoral college, one way or the other? And is it really sensible that money should translate itself so directly and proportionately into electoral success, so that a winning candidate must either be very rich or prepared to sell favours to those who are?

When a company seeks a new chief executive officer, or a university a new vice-chancellor, enormous trouble is taken to find the best person. Professional headhunting firms are engaged, written references are taken up, exhaustive rounds of interviews are conducted, psychological aptitude tests are administered, confidential positive vetting undertaken. Mistakes are still made, but it is not for want of strenuous efforts to avoid them. Maybe such methods would be undemocratic for choosing the most powerful person on earth, but just think about it. Would you do business with a company that devoted an entire year to little else than the process of choosing its new CEO, from the strongest field in the world, and ended up with Bush?

Saddam Hussein has been a catastrophe for Iraq, but he never posed a threat outside his immediate neighbourhood. George Bush is a catastrophe for the world. And a dream for Bin Laden.

Richard Dawkins FRS is the Charles Simonyi Professor at Oxford University. His latest book is A Devil's Chaplain (Weidenfeld & Nicholson).


 トップへ

(C) 1998-2003 HAB Research & Brothers and/or its suppliers.
All rights reserved.