【読者の声】5月18日号「12年間に建設業従業者が155万人も増えた日本という社会」1998年05月26日(火)萬晩報主宰 伴 武澄 | |
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5月18日付萬晩報「12年間に建設業従業者が155万人も増えた日本という社会」には賛否両論というか「ほかに雇用を維持する方法があるのか」という反響が多かったように思います。筆者は、雇用の維持まで否定したのではなく、雇用の維持を声高に叫んでいる間に建設業の就業人口までが増えている現状を強調したかったのです。参考までに寄せられたメールの一部を掲載します。タイトルは萬晩報編集部が付けました。 ●徳島で浮上する新たな巨大公共事業 拝啓。伴武澄様。MSR News & Journalで貴コラム「『穴掘り穴埋め国家』になりそうな日本」を拝見致しました。バブル崩壊後も建設業従事者が増え続けている事を知り驚いております。また、公共事業がそれを支えているのであろうとのご推察には同感致しました。 しかし、日本は「穴掘り穴埋め国家」に「なりそう」なのではなく、私はもう既に「なっている」と思います。私の郷里である四国の徳島では、吉野川と言う川にあの長良川河口堰より大きな可動堰を建設する計画があります。自然環境面だけでなく、必要性についても疑問の声が上げられているのですが、これなど私には「穴掘り穴埋め国家」が行う「工事のための工事」ではないかと思えるのです。 同じ徳島県内の巨大公共事業である「細川内ダム建設事業計画」は、批判的な報道が全国に流れた事もあり、昨年、一時休止になりました。しかし、一方では、全国的な知名度はまだ低いものの、その事業規模は細川内ダムに勝るとも劣らない計画が進められようとしています。 伴様は共同通信社経済部次長と言う事で、社内で公共事業や自然環境の問題を担当されている記者の方もご存知かと思います。もし宜しければ、そのような方にこの問題をお伝え頂ければ幸いです。ご意見と問い合わせはCZX07064@niftyserve.or.jpへ【兵庫県明石市 美野耕造】 ●公共事業が売り上げの95%以上である会社社長の意見 最近 建設業を取り巻く批判が特に強くなってきました。私は徳島県の過疎の町で建設業を営んでいます。いま私たちの置かれている状況は大変厳しいものがあります。まず工事の受注の不安定さ、若年労働者の減少 会社の高齢化 工事価格の価格破壊による 競争の激化等です。建設業者といえば 大変派手な生活を送っていると 都会の人は想像するでしょう、もちろん暴力団の資金源の一つになっている所もあると思います。しかし私たちの仕事はある意味底辺を支えていると思ってます。優秀な人ばかりではないのですよ。厳しい労働条件の中でみんながんっばってくれていると思います。他業種の人だけが、厳しい競争の中でがんっばている訳でなく,我々も苦しんでいます。 責めるなら建設業全般じゃなくて、公共事業を受注しても施工能力のないペーパーカンパニーの排除、人権団体への優先的な入札の廃止などいろいろあるのですがあまり書くと長くなるのでこの辺で切りたいと思います。 私は32歳で妻も子供もいます。将来も建設業で暮らしたいとおもっていますし、この仕事に誇りを持っています。将来に不安があるのは、私も同じ、でもこれから良くなる事を信じてがんばって生きたいと思います。【徳島県・建設業】 ●建設業者も増えている 経済学を生業としている者です。建設業の従事者が増えているという現象は、建設業者が増えているということと密接に関連しています。建設業者は現在日本で最も多いはずです。地方自治体は公共事業を地元の業者に優先して発注しているため、建設業を営めばそれなりに仕事が廻ってくるのです。その結果、丸投げ、上請けなどが発生しています。地元への利益誘導、いやですね。【九州工業大学情報工学部共通講座】 ●大変興味深いデータです 私は地方公務員で予算関係の仕事をしている者です。景気対策と雇用に関する記事を読ませて頂きました。大変興味深いデータですね。まさか、こんなに建設業関係の従事者が増えているなんて思いませんでした。 私は、景気対策が公共事業という形で実施される限りはこのような結果もやむを得ないのかなという気がしています。景気対策というのは当然雇用対策でもあるわけですから。臨時的に雇用を創出できる産業というのは建設業ぐらいなのでは? とはいいましたが、気になる点をいくつか挙げてみます。 1 景気対策が終わったときに建設業界が現在の雇用を維持できるのか?景気回復に伴い他の業種にスムーズに吸収されていくというのが理想なんでしょうけれど・・・ 2 景気対策のための政府支出は建設業に対するものしかないのか? これについては近年公共機関への情報機器の一括導入というような施策も散見されますが、支出の規模からするとごくわずかです。他分野では臨時的な大規模支出がしにくいというのが現状です。 3 公共事業が単なる「穴掘り&穴埋め」になっていないか?この点は非常に大きな問題です。実際に景気対策における建設予算の分野として最も大きいのは道路だと思います。すでに計画されている道路建設に予算を集中投下するという形が主なので急にいらないことをするというケースは少ないと思いますが、予算消化のために単なる「穴掘り」に近いことをせざるを得ない場合もあるかもしれません。この点は専門でないのでよくわかりませんが・・・ いずれにせよ公共投資というのは必要性の高い分野にすべきなのはもちろんです。最近いわれている「時のアセス」というような概念は非常に重要だと考えます。【地方公務員】 ●その建設業従事者数でさえ減り始めている 興味深く今回も拝見させていただきました。ただ、レポートの中に書かれてました公共事業投資を引き合いとされていた件ですが、政府開発援助は別としてもバブル以降業界には好調なアジアマーケットがあったわけです。ここ最近の落ち込みにて、まさに残されるは公共事業を当てにせざるを得ないという逆に危機的状況と見るべきではないでしょうか。 又、土木建築事業は業界外への波及効果が高い事業という特質も加味すべきではないでしょうか。比較的体力を持つところは赤字又はそれに近い決算にて次年度を向かえたところもあったようですが、スーパーゼネコンの中にもまだ処理もできず苦しい状況に立たされているところもあるようです。 確かに、「土建国家化」はバブル崩壊以降に一層進んでおります。日本の建設業者数は現在、56万業者とも言われています。確か数年前までは50万社程度だったはずです。 ところで、昨秋以降、その建設業従事者数でさえ減り始めたことにお気づきでしょうか。これぞ、緊縮財政の直接目に見える影響(効果)なのだと思います。そして、ご指摘通り、新たな経済対策によって、再び建設業従事者が増えるのは間違いありません。いまさら建設業を増やすことが、長期的な日本経済の構造改革に役立つ訳もなく、かえって非効率な産業を税金で延命させるだけの壮大な無駄遣いに終わる可能性が強いと思います。 この意味で、まさに「穴掘り穴埋め国家」といえるのではないでしょうか。 ただ、問題は地方経済を支える産業が育ってないことではないでしょうか。伴さんもお書きになっていたように、現実に土木が95%を占める山村があるわけです。伴さんは、住民にプライドを捨てさせて、生活保護の対象にした方が良いと言う趣旨のことをおっしゃってますが、私はそこまで大胆にはなれません。そのようなことが可能とも思えません。 こうした地域の雇用をどうやって維持していくべきか、私にはいいアイデアがありません。結局は、高齢化が進んでその地域が「自然死」するまでは、公共事業で食いつながざるを得ないような気もします。 拓銀の倒産で極端に経済が悪くなった北海道も当面は、公共事業頼りの経済にならざるを得ないのではないでしょうか。また、こうした時にこそ、財政出動があるというのも正論です。 無駄でも環境破壊でも、日々の暮らしがたち行かないことよりはましだと考えるのが、現実の人間でしょう。それを否定する権利はだれにもない気もします。族議員のごり押し的な予算分捕り合戦の醜悪さはよく知っておりますし、その財源が我々都市住民から流れていることにも最大限立腹しているのですが【読売新聞記者】 ●景気対策でゼネコンの不良債権穴埋めか? 「読者の判断を仰ぎたい」との事ですが私の意見は次の意見です。 1、国家が景気対策として大手ゼネコンの不良債権を穴埋めする絶好の機会である。(住専の時のようにメディアが騒がない)この事により政治家保有のゼネコン株の評価価格が現状より高くなり評価損が隠れる。 2、景気対策として、公共投資・特別減税しか本当に手段は無いのか?この論議がまったくされていない。バカの一つ覚えの様に公共投資・特別減税を声高らかに叫ぶ政治に魅力などあるはずもなく、市民は政治に対して冷え切っております。 3、政治改革する、行政改革する、実は表を少し変化させるだけ、こんな政治に誰がした。我々国民か?いいやそんなはずは無いと思ってもそれが現実である。なんとか政治が政治として本当に機能する国家は理想か?【古山 義晃】 ●これ以上の経済発展はいらない 事実はご指摘のとうりと思います。田舎(山の中)や沖縄では、公共事業が1番の産業だとも聞きました。しかし、そのような地方には、他に現金収入が見込める産業がありません。そのような地方には良い道路もできて、公共事業は良いことです。 公共事業で不況を脱出しようとするのは、ケインズ経済の考えでしょうが、今の不況は循環のせいではなく、とりたてて欲しいものがこれ以上はなくなったせいだと思いますので、ケインズでは、だめだと思います。 と言っても、私はこれ以上の経済発展は望みませんので、今の誤った政策を非難する者ではなく、むしろ、シメシメと思っています。【yamaosam】 ●どうせなら公立図書館をガンガン建設すべきだ 世界の科学技術文献専門の公立図書館をガンガン建設すべきだとおもいます。今までの大会社、大資本、トップダウン型産業全盛にあっては、社員であれば、世界の文献、雑誌にあたるのは容易だったでしょうが、ベンチャー時代には、そうもいきません。小人数で、貧乏だがやる気のある人たち(学生から退職した職人さんまで)でも世界の最新情報にアクセスできるようにする必要があるようにおもいます。日本の情報産業なども、いままでドメスティックな分野、規模でとどまっているのもその辺と関係があるように思います。つまり、図書館のビックバンです。どうせ箱物が出来てしまうのなら、頭脳へ投資するのが一番効果的なのではないでしょうか。【Yusuke】 トップへ 前のレポート 次のレポート |
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