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12年間に建設業従業者が155万人も増えた日本という社会

1998年04月18日(月)
萬晩報主宰 伴 武澄

 総務庁が毎月、発表している「労働力調査」を取り寄せてながめているうちに、ハハーンと気が付いた。公共事業国家・日本はこの十数年にわたり、労働力の構成すら歪めてきたのではないか、そんな思いがムラムラと湧いてきた。下の表は「労働力調査」の「主な産業別就業者数・雇用者数並びに非農林業の常雇・臨時・日雇・企業の従業者階級別雇用者数」という長い名前の統計から抜き出した。

年月総就業者数農林業建設業製造業運輸通信業卸・小売り
・飲食業
サービス業
1985  5807  464  530 1453   343  1318  1173
1990  6249  411  588 1505   375  1415  1394
1995  6457  340  663 1456   402  1449  1566
1997  6468  324  685 1442   412  1475  1648
増減  11.7%-30.2% 29.2%  0.8%  20.1%  11.9%  40.5%

 ●過去12年に増え続けた雇用は661万人
 1998年3月の完全失業者数は、前月から43万人も増えて277万人と史上最高を記録した。失業率は0.3ポイント上昇して3.9%になった。とはいうものの、この12年間で終業者は661万人も増えている。100万人単位で増加したのが1988年(100万人)、89年(117万人)、90年(121万人)の3年。その後も91年(80万)、92年(67万人)と増え続け、93年からは6400万人台で伸び悩んでいる。

 この数字をみて、まず考えたのが「史上最高の失業率といっても実は働く場所が661万人分増えた上での277万人の失業」ではないかということである。日本の場合、失業率2.0%で実質的な失業者がいない「完全雇用」と言ってきた。自発的な転職や結婚退社などを加味すればという意味である。

 だから本当の失業者は、1.9%の約135万人でしかないということである。100万人を超える人が失業状態というのは決して無視できる数字ではないが、バブルのころの二年分の「余剰雇用」分と考えれば大したことではない。

 ●農業従事者が減り、そして建設業従事者が増加した
 それより、建設業の項目を見てほしい。1985年から12年で155万人、伸び率にしてなんと29.2%、毎年十数万人の雇用が増え続けてきたのである。単にバブル時代の建築ラッシュの結果とはいえない。バブルが崩壊してからも増加率は止まっていない。それどころかアップしてきたのである。90年代の60兆円規模の追加景気対策こそが建設労働者増加の主因といえないだろうか。

 面白いことに、左側の農林業の就業者の推移をみると、農林業の減少数・率ともに建設業の増加数・率とほぼ符合するのである。もちろん、増加した人数でいえば卸・小売り・飲食業やサービス業の方が圧倒的に多い。しかし、こちらはコンビニや外食産業の急増、ニュービジネスの台頭などによるものであって、確かな根拠がある。

 どうも地方で離農した人たちがそのまま、建設業に従事しているという構図が見えてきそうだ。日本の農業は、ウルグアイ・ラウンドで意気消沈し、農業従事者がたまたま遭遇した急増する公共事業に乗り換えているのではないかという推測はまんざら間違いではないのではないかという気がしてくるのである。

 日本の公共事業については02月10日付萬晩報「 公共事業/国会議員-土建屋-農村雇用-自然破壊の連鎖」で書いた。今年はまた史上最大の16兆円の追加景気対策を実施する。そうなると今年はさらに3、40万人の建設業従事者が増えるのは確実。この分でいくとあと10年もすると建設業は日本最大の雇用者を抱える産業になるのは確実だ。

 日本という国家は「穴掘り穴埋め国家」なるのかもしれない。この点について読者の判断を仰ぎたい。

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