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世界のKameyamaと早くもささやかれる人手不足

2004年04月25日(日)
萬晩報主宰 伴 武澄

 21日、亀山市でシャープの液晶工場の竣工式が行われた。これといって特徴もない片田舎の町に外国人を含めて100人を超えるメディアが集まった。驚いたのは三重県であり、地元の亀山市である。このあたりは畿央といって首都機能の移転候補地のひとつとなった地点である。首都機能移転はもはや風前のともしびであるが、その畿央が「Kameyama」ブランドで世界の耳目をひいている。

 いま亀山が世界の注目を集めているのにはわけがある。亀山の地はすでに4月6日付ワシントンポスト紙で製造業ニッポン復活の象徴として紹介されていた。筆者のファイオーラ記者は「鈴鹿山麓に突如、白亜の巨大な製造拠点が出現した」とその驚きを記している。

 徳島県の名もない日亜化学の一研究員が青色ダイオードという世界的な発明をしたと報じたのは6年前のことである。はずかしながら日本のマスメディアはまたしてもアメリカのメディアに出し抜かれた格好となった。

 ファイオーラ記者は三重県に「クリスタル・バレー」という名称を冠して日本の製造業の復活が始まった地点であるかのように表現した。クリスタル・バレーは前北川知事が旗振り役となった三重県再生のスローガンである。首都機能移転が騒がれた際に名付けられた「畿央」という名称とともに全国的知名度を得る前に消滅するのかと思っていたら、あにはからんや。アメリカのメディアが世界に広めてくれた。

 この液晶工場は日本経済が長期低迷の、しかも中国ブームの最中に計画された。当時はだれもが日本の製造業の将来を危ぶみ、中国を語らないものは「時代遅れ」という風潮があった。シャープは1998年すでにブラウン管への決別を宣言し「オンリーワン」を目指す経営に乗り出していた。電機業界の中ではソニー、松下、日立、東芝をきらめくブランド名の下でほとんど三流メーカーの位置付けでしかなかった。

 グローバル・スタンダードの名の下でマイクロソフトとインテル互換の世界に走る日本の電機業界の中でシャープは液晶という独自技術にこだわり、さらに時代錯誤ともいえる国内での製造に固執した。そのこだわりが国内景気回復のトレンドに乗ったのだからシャープ首脳陣の笑いは止まらないだろう。
 シャープ亀山工場の稼働に伴い、少なくとも取引企業50社が周辺に進出している。請負や下請けを含めると企業数はその数倍に膨れ上がるだろう。いまや亀山は県外ナンバーの車が走り回る元気な町となった。

 ■早くもささやかれる人手不足

 その三重県は有効求人倍率が「1」を超えている数少ない自治体である。全国平均が0・77であることを考えると突出しているといってもいい。好調なホンダ鈴鹿工場に加えて、シャープの亀山、多気工場、さらには東芝の四日市工場でのフラッシュメモリー、富士通の多度工場での半導体など設備投資がめじろ押しであることはすでに萬晩報で書いてきた。
 景気のいい話ばかりなのだが、すでに人材で問題が浮上している。人手不足である。まず採用を募集しても人が集まらない。そしてせっかく採用しても定着率が悪い。フリーターなどという生き方がメディアでもてはやされた結果だろうか、交代制であるとか日祭日出勤といったシフト労働になじまないのか。あるいは根を詰めた作業がもはや日本人に耐えられなくなったのか。

 企業の採用方法にも問題がある。人材派遣会社を通じた採用が多いことに加え、正規社員であっても契約期間が「1年」であるといったように短期の採用が中心になっている。昨今のそうした採用方式では企業への忠誠心はおろか、日々の労働意欲にもかかわる。コンビニや外食産業の店頭での仕事ならともかく、不良品率が100万分の1さえ許されない精密な製造業の工程では問題が起こらないはずがない。

 三重県ではすでに「いずれまた外国人や日系人に頼らざるを得ない」といった議論さえ出て来ている。景気の長期低迷で一番問題となったのは地域の雇用であったはずだ。なのに景気回復が認められたとたん、一転して人手不足が問題となっているのは皮肉としかいいようがない。人手不足は三重から全国的に広がるのではないかと思っている。

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