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高橋尚子に配慮した日本陸連

2004年02月12日(木)
萬晩報通信員 成田 好三

 昨年11月の東京国際女子マラソン(以下東京)で終盤失速し、アテネ五輪代表の「当確」を得られなかった、シドニー五輪金メダリストの高橋尚子が2月4日、最後の五輪選考レースである名古屋国際女子マラソン(以下名古屋)への出場の見送りを発表した。選考レースに再挑戦しなくても、五輪代表に選出されると「確信」したからである。

 高橋の名古屋出場見送りと五輪代表選出の「確信」には、新聞・TVなど主要メディアが触れたがらない、ある理由がある。そのことを説明するためのキーワードは、レースを先頭で引っ張るペースメーカー(以下PM)である。

 五輪代表選考レースを主催し、代表選出の決定権をもつ日本陸連は昨年秋からPMを公認した。一部の主要メディアが報じる「導入」ではない。PMは以前から存在していた。陸連はただ、PMの存在を公式に認めただけである。

 不思議なことに高橋が出場した東京にPMは導入されなかった。ある陸上関係者はこう指摘する。

 絶好調で大会に臨んだ高橋サイドの意向が反映され、陸連がPM導入を見送ったのではないか。高橋は1人でペースをつくるのを好む選手であり、東京出場の目的は記録ではなく、勝って五輪代表の座を獲得することだった。高橋以外の有力選手は東京を回避した。生中継するTV局も映像的に邪魔な存在であるPM排除に異論はない。

 高橋本人も、小出義雄監督ら高橋サイドも、陸連も、TV局も、TV局の背後にいる大手広告代理店も、そして沿道やTVの前で高橋の走りを見守った多くのファンも、高橋の勝利を信じて疑わなかった。

 しかし、結果は暗転した。前半から先行した高橋は終盤に失速し2位に終わった。記録も2時間27分21秒と平凡なものだった。

 高橋サイドはもちろん、陸連、TV・新聞など主要メディア、広告代理店とも、どうしても高橋に五輪に出場してもらわなければならない。彼らにとって高橋は、巨大な利益をもたらす「資源」である。高橋が出場するか否かによって、極端に言えば彼らにとっての五輪の価値が変わる。

 陸連が動いた。PMを大阪国際女子マラソン(以下大阪)、名古屋に導入する可能性大としていた方針を180度転換し、大阪、名古屋へのPM導入を見送った。高橋が失速した東京直後の11月20日、陸連の桜井孝次専務理事は「PMをつける可能性がある」と明言していたが、大阪の出場選手を発表した12月17日には、大阪と名古屋にはPMをつけないとの陸連の決定を明らかにした。

 理由は「五輪選考レースなので公平性を保つため」と桜井氏は説明した。それならば、高橋が出場した東京の前に、東京、大阪、名古屋と続く国内選考レースにPMをつけるかつけないかを決定すべきである。大阪の直前での方針決定は不自然である。

 大阪はスローペースの展開になった。坂本直子、千葉真子、弘山晴美、渋井陽子らアテネを狙う有力選手が集中した。五輪代表の選考レースである。設定タイム通りレースを先導するPMはいない。これだけの条件がそろえば気象条件とは関係なくスローペースになる。有力選手は牽制し合う。「大阪は高速レースになる」と予想したメディアもあったが、とんだ見当違いである。

 坂本が優勝したが、タイムは2時間25分29秒にとどまった。2位の千葉真子のタイム、2時間27分38秒は東京での高橋のタイムを下回った。

 彼らの思惑は当たった。いや彼らの思惑通りになった。名古屋にもPMは導入されない。PMなしで2時間20分前後のタイムを出せる選手は日本にはいない。しかも最後の選考レースである。

 高橋の五輪代表選出は、陸連が配慮したPM導入見送りによってその道が敷かれた。そして、低速レースになった大阪の結果によってほぼ確定したといっていいだろう。

 日本陸連は方針を転換してPMを大阪、名古屋に導入しなったことにより、高橋の五輪出場に配慮し、大きくサポートした。そのことは、TV・新聞など主要メディアとその背後にいる大手広告代理店の意向に添うものだった。

 成田さんにメールは mailto:narita@mito.ne.jp
 スポーツコラム・オフサイド http://www.mito.ne.jp/~narita/


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