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豪速球の投げ合いを続けてほしい衆院選
2003年10月28日(火)
萬晩報主宰 伴 武澄
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きょう 衆院選が公示され、各候補は約2週間の選挙戦に突入する。小選挙区比例代表制が導入された1996年から3回目の選挙となる。自民党の立候補者で目立つのは長老の引退と二世政治家の増加である。民主党はマニフェストを前面に押し出し本格的な政策論争を挑む形となる。
民主党がマニフェストで一番言いたいのは「官僚政治からの脱却」ということだろう。行政が政治と一体となってきたこれまでの自民党の一番の急所をついたテーゼだと思うが、これはなかなか難しい課題である。巨大な官僚組織がそっぽを向くと国家は機能マヒに陥る。田中康夫長野県知事は長野県の行政組織の意識変革のために二度の知事選を必要とした。小泉首相でさえたった一人の日本道路公団の総裁の首を切るのにほぼ1カ月の月日を要したのである。
一方の小泉・自民党が掲げるのは日本道路公団と郵便事業の民営化を柱とする「改革の継続」である。郵便貯金と簡保は国の第二の予算とされる財政投融資の最大の資金源であり、道路公団はその最も大きな使い手のひとつである。郵便事業が民営化されると世界最大として突出した「銀行」が生まれることになり、しかもその資金のほとんどが国債で運用されているという二つのやっかいな問題に突き当たる。
民主党のマニフェスト、小泉・自民党の公約は、どちらも直球勝負である。しかも実現すれば日本社会に一大変革をもたらす豪速球といえるかもしれない。そういう意味で今回の衆院選はめずらしく真面目でまっとうな政策がぶつかり合う選挙となる。
これまで多くの選挙で「ろくな政治家がいない」という不満が有権者にあった。「有権者におもねる公約ばかり」「ポスターやちらしは政党名と候補者の名前を外せばどこも同じ」という批判もあった。しかし今度ばかりは違う。二大政党の党首が、真面目にまっとうな政策を投げかけたのだから、今度、問われるべきは有権者の問題意識ということになる。
「この有権者にしてこの政治」ということがこれまで度々言われてきた。日本の政治家のレベルが低いのは、投票する人のレベルが低いからだと揶揄する向きもなくはなかった。だが今回問われるのは政治家のレベルではなく、実は有権者のレベルなのだ。
萬晩報を始めた1998年の4月に「5年前の興奮を思い起こしてわくわくしよう」というコラムを書いた。変わらない日本の政治に落胆せず、投票行動で自民党を野に下らせたあの日を思い出そうと読者を鼓舞しようとした。
2カ月後の6月にはそんな思いも挫折して「白票を投じて有権者の政治不信を意思表示しよう!」を書いた。7月に参院選が迫っていて、世の中あまりにも盛り上がりがないことに憤慨したからである。コラムには次のように結論付けた。
わくわくするには「白票」を投じることだろう。「白票党」が第一党にのし上がれば、選挙の勝者は自民党でも民主党でもない。有権者が勝者となる。マスコミも開票日翌日の一面トップに「無効票が○○%、選挙に不信任!」の横見だしを付けざるを得なくなる。街角で「オーレ、ジャポン」の歓声が上がるに違いない。
だが今回ばかりはどうも様相が違う。もはや白票ばかり投じてはいられない。二大政党が堂々と政策でぶつかりあっている。
小選挙区比例代表制がかつての中選挙区制と違うのは、選挙が個人の戦いから政党同士の戦いに変わった点である。民主党は公認候補全員に党のマニフェストに署名をさせたということだ。立候補者本人より民主党を前面に押し立てた選挙戦を戦うという意思表示である。その点、自民党は小泉・自民党と自民党とがあり、候補者すべてが公約に従うということにはなっていない。
筆者は小泉ファンではあるが、自民党ファンではない。小泉内閣を支持するが自民党政権がこれから3、4年続くことには苦痛感が伴う。それどころか民主党が敗れれば向こう10年政権交代は不可能となる。そんな感慨を持っている。社民党の土井たか子氏は今度の衆院選について「天下分け目の関が原だ」と評した。その通りだと思う。
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