HAB Research & Brothers


高速道路料金を100円均一に

1999年09月26日(日)
雨漏り実験室の"チャ"



毎日新聞のwebページに高速道路をタダにしたらどうかという討論のページがある。また、日本道路公団の経営改善委員会でもこの話が議論されているようである。このような議論はもっと盛んに行ったほうが良いと思う。私は、高速道路を無料化する(あるいは現在の通行料金を1/10以下にする)のに賛成である。ただ、現実問題として、今の高速を完全に無料にするのにはいろいろ難しい点もある。そこで、以下のようにある程度の距離まで100円均一の通行料を取るようにしたらよいのではないだろうか。

▼[参考] 米国の高速道路の状況
米国では、多くの高速道路は無料であるが、有料道路もある。有料道路は都市部の混雑するところかあるいは逆に交通量の少ない田舎の道路である。田舎にある有料道路は、観光を目的に作られたものもあるが、州と州を結ぶ幹線道路もある。これらは、一般のフリーウェイに比べると舗装がきれいで走りやすい。高速料金は都市部は区間ごとに50セントぐらい、田舎の高速道は、距離や場所によって異なるが、100kmあたり1ドル程度かかる。
■日本は100円の通行料に

日本の高速は、米国のフリーウェイより道路の舗装状態、道路表示、サービスエリア(トイレなど)の質が高く、田舎の有料の高速道に近い。この道路を利用する人が受ける利益分は、米国の有料道路のようにある程度お金を取ったほうが良いと思う。

たとえば、最初に高速への入る料金として小型車は100円、大型車はその倍を徴収し、その後長距離を走る場合高速の途中(100〜200km間隔)に料金所を設けてさらに100円(あるいは200円)づつ徴収するようにしたらどうだろうか。高速道路には特別なサービスは要らないから無料にしてほしいと言う意見が多数を占めるようになれば、道路公団を解体して高速を無料にしても良いのだが、私はさしあたってはきれいなトイレなどを使う料金として100円を払っても良いと思う。

100円玉なら、米国のようにコインを投げ込む自動徴収器があればかなり大きな料金所でも徴収する人は1人か2人ですむ。高速を出るときは首都高のように料金所を通過する必要はない。

東名・名神高速なら、東京-静岡間、静岡-名古屋間、名古屋-大阪間でそれぞれ100円を徴収する料金所を設けるとすると、東京-大阪間は400円。現在の通行料の1/20以下。

このようにしたら、最初はみな高速に押し寄せて大渋滞になるかも知れない。しかし、ある程度時間がたてば渋滞になるときは運転を控えるようになるだろう。高速の全体の交通量は増えても3割ぐらいではないだろうか。3割ぐらいでも高速道路の交通量が増えれば、市街地の交通量は確実に減る。それによる市街地の排ガス、騒音の低下(特に夜間)の効果が期待できる。市街地の環境が良くなるのであれば、多少高速が渋滞しても構わないのではないだろうか。

全体の高速の交通量は2〜3割ぐらいしか増えないかもしれないが、100円なら、あるインターから次のインターまでといった短距離利用がかなり(倍以上)増えると考えられる。また、サービスエリアの利用も増え、テナント料も増えるだろう。

現在、全国には7300万台の車があり高速・有料道路の通行料金収入は年間約2.1兆円とのことなので、平均すると1台あたり月2400円支払っていることになる。月1200円の区間を1回往復利用していることに相当する。もし、料金を上のようにした場合、1回あたりの平均の利用額を130円、月1.3回程度往復利用するとすると、7300万x2x1.3x130x12で約3000億円になる。 現在でも、有料道路の維持・運営に使われているお金は3000億円程度。道路公団は高速道路の維持・運営会社として十分採算が成り立つはずである。

観光地の有料道路はともかく、一般の高速は公共のために利用される道路であり、高速道の建設費や借り入れの返済は税金でなされるべきだと思う。高速料金が安くなって車の利用が増えれば車関係の税金も増え、高速道の建設費などを税金から支出することもできるのではないだろうか。

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★高速道路の無料化の議論について
毎日新聞のメールディベートのページでは、結構反対意見が多いようである。主要な反対意見は以下の2点である。

▼ただにすれば高速道路の建設費は税金から出すことになって車を持っていない人にとって不公平になる。

幹線高速道路は一般の道路と同じようにさまざまな目的に使われる公共の道路である。一般道路が税金で建設・維持・運営しているのなら、高速道路も同じようにすべきである。そのほうが道路がより有効に利用されるようになり、バスなどの交通費や運送費が安くなる、市街地の渋滞が少なくなり排ガスや騒音が低下する、など車を持っていない人にも利益になるはず。

また、車を持っている人は、持っていない人に比べて税金を多く払っている。自動車登録税、消費税、重量税、地方税、ガソリン税など。年間1万kmぐらい走る人なら年間10万円以上税金を払っていることになる。日本には自動車が7300万台あるという。1台あたり年間10万円としても、7.3兆円。この税金を、有効に使えば、道路の建設・維持・管理をできるのではないだろうか。

高速道路をタダにした場合、反対意見にもあるように車の数やガソリン消費が何割も増えるわけではないが、それぞれ1割ぐらいは増えるのではないだろうか。つまり、車関係の税金は1〜2兆円増えることになる。また、流通やレジャーなどの活性化による税収増も期待できる。高速道路の建設や借入金の返済の額は約1.8兆円であるから、それと同程度の税金が増える。これを使えば、高速道の建設や、借入金の支払いを行うことができる。

また、物流コストは確実に下がる。といっても実際の物流コストに占める高速料金は1〜2割ぐらいかも知れないが、それで物流量が数パーセント増えれば、運送の効率も上がり、運送費は確実に2割は下がる。さらに、レジャーに行く回数も1〜2割ぐらい増えるはずである。そうすれば、レジャー施設の料金も安くなり、さらにレジャーに行く回数が増える。

現在の料金収入分以上の経済的効果は必ずある。

▼エネルギー消費の増大にになる。渋滞がひどくなる。

一人の人間が車を運転する時間は高速道路が無料になったからといって倍とかに増えるわけではない。ガソリン代が日本の1/3以下でほとんどの高速が無料の米国でも車に乗る時間は日本とそれほど変わらない。(走行距離は倍以上だが渋滞などで止まる頻度が少ない)

高速道路の通行が増えれば、一般道の渋滞は減る。そうすると、車が止まったり発進したりする回数が減り、一般道を走る車の単位走行距離あたりの燃料消費率は下がる。排ガスも減る。人が暮らしている市街地の排ガス・騒音などの環境は良くなるはず。

一方、高速道は今より渋滞しやすくはなるだろう。でも、極端に渋滞が増えれば運転を控え、電車などを利用するだろう。また、高速の全体の交通量が増えれば、高速を走行する車の平均時速が少し低下する。車は100km/h以上で走る場合と90km/hで走る場合とでは、90km/hのほうが燃料消費率は少ないはずである。

つまり、単位走行距離あたりの平均燃料消費率は確実に下がる。車全体の総走行距離がたとえ2割増加(高速道路は数割増加)したとしても全体の燃料消費量は1割ぐらいしか増加しないだろう。ハイブリッド車や低燃費車が普及すれば、その分の増加は抑えることができ、将来は今より運輸のためのエネルギー消費量は減るはずである。

家族がレジャーにいく回数が増えてエネルギー消費が増えるからレジャーを控えろという意見もあるが、家の中にこもっていても最近はかなりのエネルギーを消費する。たとえば、真夏の休暇に自宅にこもってクーラーを2〜3部屋で使えば、風呂や料理に使うガスとかも電力で換算して合わせると一日40kWhぐらいは消費するのではないだろうか。

40kWhでは電気自動車なら200kmぐらいは走ることができる。何もしないで家にいるのと、200kmぐらい離れたところに1泊キャンプしに行くのとエネルギー消費は変わらない。家族が一週間ほど避暑地に出かけるほうがエネルギー消費が少ないかもしれない。そのほうが健康的でもある。

車は製造するのにも多くのエネルギーを要する。今のように高速料金が高くて車の運転を控えれば、せっかく作った車が有効に利用されない。これは、現在のほうが車の製造に要したエネルギーを無駄に消費しているということではないだろうか。

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高速道路の無料化は、流通やレジャー産業が活性化したり企業が地方に進出したりすることによって、地方が活性化するという多大な効果が期待できる。それが日本全体を活性化することになるのではないだろうか。

以上、まとめると、
 ◎高速道路を無料にしても高速道路建設の費用は主に車関係の税金の増加で賄うことができるため、車を持っていない人が不利益になることはない。

また、メリットとしては
 ◎運送費が低下する。
 ◎車を持っている人は、レジャーに出かける頻度を多くすることができ、それによってレジャー施設の料金の低下が期待できる。
 ◎地方が活性化する。
 ◎市街地の道路の渋滞、排ガス、騒音が減る。

デメリットとして、
 ◎都市部の高速道路での渋滞が少し悪化する。
 ◎燃料の消費が少し増加する。

これらのデメリットは渋滞しているところの道路の整備や、低燃費車の導入によって解決が可能なものである。とすると、高速道路の無料化(あるいは通行料を100円に下げること)はメリットのほうがはるかに多く、ぜひとも実施してほしい政策である。


雨漏り実験室の"チャ"
昭和3X年生まれ。性別:男。現住所は茨城県。所帯持ち。茨城県内の某国立研究所(独立行政法人化により統廃合される予定)に勤務する研究員。仕事は、実験装置を試作して実験を行うこと。
年1・2回海外に出張。趣味はいろいろあるが、最近は全く時間がとれない。

ホームページはhttp://member.nifty.ne.jp/shomenif/


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