独立北海道では大統領や知事は3選禁止1998年04月30日(木)萬晩報主宰 伴 武澄 | |
4月12日投票の京都府知事選で無所属の森川氏に投票した。あえて共産党系と分かって投票した。結果は惨敗だった。投票した理由はただひとつ。保守系の荒巻現職知事が3選目の選挙だったからである。3選されると12年の在職期間が保証される。これはいかにも長いと考えたからだ。
四国新聞・論説副委員長の明石さんが、太田知事に会ったというから印象を聞いたことがある。 直接選挙で選ばれる知事の地位はすぐれて独立色が強く権限が集中している。そんな知事職が長期政権化する弊害は首相の比ではない。
●首相をもしのぐ知事の権限集中 荒巻京都府知事は3期目を目指して立候補していた。知事や市長といった住民の直接選挙で選ばれる首長はアメリカ大統領と同じで絶大な権限を持つ。もちろん制度的には議会が行政のチェック機構として機能する仕組みにはなっているが、国と違って地方行政には強力な官僚軍団もない。 そんな首長が、10年も20年もトップの座につけば自治体行政は半ば"独裁化"する。高邁な理念と行動力を持っていればなおさら求心力が強まる。「求心力」と言えば肯定的で、「独裁」だと否定的な表現となるが、政治力学的にいえば「求心力」も「独裁」もあまり違わない。 そんな制度に組み込まれた権限集中とは別に、日本の地方の場合、政令指定都市がある都道府県を除いて、「自治体」が最大の事業主である場合が多い。売上高規模でも(予算と言い直してもいい)、従業員数規模でも他を圧倒している。いわばガリバーである。金融機関、土木会社といった経済界から教育界、警察、はては場末の飲み屋まで県を頂点としたピラミッドに組み込まれているのが現実だ。
●長期政権は知らないの間にイエスマンを取り巻きに残す 名社長として10年間資生堂の舵取りをした福原義春氏から、かつてインタビュー後で打ち明けられたことがある。「会社のがんはこの階なんですよ。意味が分かりますか」。エレベーターまで筆者を送ってくれ、役員室のあるフロアを差して、役員質でのインタビューでは本音を語れなかったというような意味の言葉を耳元でささやいた。安売りの河内屋が資生堂を独禁法違反で訴えていたときのことである。 福原さんはそんな束縛から逃れるため、昼食と称して銀座の役員室から姿をくらましたことがある。秘書連中は「困ったもんだ」と嘆いていたが、福原さんからすれば「そうでもしないと世間のことが分からなくなる」のである。 長期政権は知らず知らずの間にイエスマンだけを取り巻きに残すことになる。自治体の首長だけの話ではない。
●首長の任期として短くない2期8年 次に、経済や社会の変化は意外に速いものであることを首長は身をもって知るべきであろう。今年の8年前は1990年だ。日本経済はバブルの頂点で、最大の債権国として日本の閣僚はサミット(主要国首脳会議)やG7(先進7カ国蔵相中央銀行総裁会議)など国際会議で肩で風を切っていた。地方ではリゾート法による開発が盛んだった。第三セクター方式が多く、そのほとんどが自治体の不良債権化している。日米経済も8年間で立場が180度逆転した。「たった8年間の間に」と考えるのか「8年もたてば」と考えるのか。もちろん後者の考え方が常識である。 バブルをつくった人がバブル崩壊の後始末をするというのもおかしな話だ。業績悪化や社内不祥事を追及された時の企業トップの常套句があった。「いま私に課せられた責任は経営の建て直しである」。就任直後ならいざしらず、業績悪化の責任者はただちに新しい人に道を譲るべきである。王様だって20年もすれば後進に譲るのが常道だ。まして市井の人間が行政をそんなに長く牛耳るわけにはいかない。 |
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