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オランダ/デンマークでは昔、風力が動力源だった

1998年02月01日(日)
共同通信社経済部 伴武澄
 風力発電のコストが高いというのはうそである。いま日本に風力発電を普及させようと努力している人たちの話を紹介しようと思う。素人計算で電卓をたたくと、風力発電はけっこうコスト的にも合う発電設備なのでないかと思えるようになってきた。

風力発電の普及を狙う小島剛さん
 「1村1万キロワット運動を起こしたい。今年は20基が目標」。風力発電の建設を手掛けて4年余り。すでに国内に16基をつくった。

 風力発電との出会いは1991年、コンサルティング業の仕事で出張したデンマークの産業博覧会。農家が畑の中に建て、電気を売って収入も得ているという。当時で,3000本近い実績があった。「日本でもビジネスになる。そんな、においがした」半年後、風力発電機を輸入する会社「エコロジー・コーポレーション」を設立。が、「日本は強風地が少ない。研究用か観光用がせいぜい」と国内の反応は冷たかった。
 1号機の納入は2年後。石川県松任市が、海浜公園のシンボルにする目的で発注した。納入に時間がかかったのは、当時、規制の壁が厚かったためでもある。中部通産局は「外国製品を使った風力発電は、国内には前例がない」と膨大な資料の提出を求めてきた。「デンマークから技術者も呼んだ。ファックスのやりとりを数百回はしただろうか」。 その後は地方自治体やゴルフ場、学校に納入が進む。1基の建設費はざっと1億5000万円。約130戸の家庭の電気をまかなえる発電能力がある。
 15歳の時、石油危機のあおりで父親が経営する会社が倒産、一家が離散した苦い経験がある。「エネルギー危機への不安は人一倍ある」。電力会社は原発など大型発電所の建設に力を注いでいる。一方、風力発電所についてはきわめて小規模で、「コストが高いなど課題が多い」と普及には及び腰だ。「これからは、環境を汚さない風力発電機を複数集めた発電所をつくるべきだ。発電コストは、電力会社の試算の半分くらいでできるだろう。(1997年1月9日付朝日新聞「ひと」山本晴美)

 ●デンマークに風力発電所の研修施設をつくったケンジ・スズキさん
 かすかな風を切る音とともに、直径10メートルの羽が回る。その下で羊たちがのんびりと草をはむ。デンマークの風景の一部になっている風力発電をもっと日本に広めようとデンマーク国籍を持つケンジ・スズキさん(52)が近く「風の学校」を開校する。風力発電の導入を考えている自治体や企業関係者に風車のノウハウを学んでもらうための研修施設で「風力発電だけでなく、福祉や環境の綿で教科書のないところから教科書をつくってきたデンマークの勇気とオリジナリティーも学んでほしい」と意欲をみせる。

 コペンハーゲンから飛行機と車を乗り継いで2時間ほど。スズキさんは3月にユトランド半島の西北部の6ヘクタールの土地と建物を買った。人も車もめったに通らない畑の中で、6月の開校を目指す。「日本でもここ数年、風力発電に関心が高まっているが、背景を知らずに視察だけで帰る人が多い。デンマークの環境やエネルギーについても知ってもらう必要がある」と動機を語る。

 デンマークの風力発電施設は4300基。昨年の発電量は約14億キロワット時で、同国全体の発電量の5%を占めるまでになった。日本は現在76基、1基当たりの出力が小さいため、1995年の発電量は100万キロワットだった。  岩手県東山町出身のスズキさんは1967年、コペンハーゲン大に留学した。卒業後、日本大使館勤務や農場経営を経て1990年に環境関連のコンサルタント会社を設立した。デンマーク人と結婚して国籍を取得した。

 デンマークに風力発電が広がったきっかけは、二度の石油危機からだった。ほかのエネルギーへの転換に迫られた時、デンマークは放射性廃棄物などの問題から原子力発電を選ばなかった。国会は1985年、「原発を導入しない」と決議した。デンマークは世界の風車の60%を製造する最大の生産地で、農産物、医薬品に次ぐ輸出製品でもある。日本にある風車の3分の1もデンマーク製だ。

 風力部門の責任者、ペアーダナマン・アナスンさんは「風力にシフトしたために絶えず改良が進められ、発電コストも石炭や石油と並ぶようになった。2030年にはいまの半額になるだろう」と予測する。(1997年4月14日付朝日新聞夕刊、石井徹記者)

 ●町営風力発電会社での経営で公共事業依存から脱却?
 小島さんの話では風力発電の建設コストは、400キロワットの発電機が1億5000万円だ。100万キロワットの能力に直すと2500基必要だから建設コストは3750億円だ。同規模の火力発電所の建設費は分からないが、原子力だと数千億円。風力は初期コストは高いが燃料代がただだという点にこそメリットがあるはずだ。

 ここから先の計算は専門家にまかせるとして、現在の価格でも決して火力発電には負けていないはずだ。しかも町内で消費する限りにおいては送電コストがかからない(電力会社の説明では遠隔地からの送電コストは発電コストと同等)。それなのに電力会社はなぜ「コストが高い」というのか分からない。通産省の「手続き面でも嫌がらせ」も含めて、発電業への新規参入を阻もうとしているとしか考えられない。

 風力発電を観光の名所としている山形県小国町では町費で風力発電システムを購入したため、コストは運用のための管理費だけである。つまり町民はほとんどただで電力を使用できる考えである。そうなると、電力を販売したらどうなるのか発想が広がる。計算はこうだ。400キロワットの風力発電所を24時間、365日フル運転すると発電量は約340万キロワット時。かけ算である。一昨年から始まった卸電力の販売価格は1キロワット時当たり8円前後とされるから年間2700万円の収入となる。

 過疎の市町村では公共事業が実質的に「地場産業」になっている。ちょっとした町村でも年間数十億円の事業費を支出している。100基の風車を備えた町営風力発電会社を経営すれば、年収27億円である。初期経費は150億円かかる計算だが、10年計画で実施すれば公共事業依存の体質から逃れられる。風車の需要が増えれば、価格は必ず半値になる。

 通産省の外郭団体であるNEDOでは1991年から、発電単価の低減と土地有効利用を図るため大型風力発電システムの開発を行っている。500kW大型風力発電システムの開発(青森県竜飛崎)、集合型風力発電システムの制御技術の開発(沖縄県宮古島=250kW×2基、400/100kW×3基)等を行っている。1997年度はたった4.6億円の予算である。

 トーメンがこのほど、米国オレゴン州ユージン市の公営電力会社から受注した風力発電プラント(69基)は1基当たり出力600キロワットで総事業費が約70億円である。大量発注ですでに3分の2の水準までコストが下がっている。米国では公営企業が本格的プラントの導入に乗り出しているのである。

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