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新しき村づくりに住民票移転という発想

2004年03月10日(水)
萬晩報主宰 伴 武澄

 一年ほど前に地域振興の究極策として思い付いたアイデアがあった。その後、田中康夫長野県知事に先を超されて地団駄を踏んだ。過疎の村や町に住民票を移し、町村民税をその町村に捧げる運動である。

 1000人内外の小さな自治体にとって地方税はなきに等しい。そこへ数百人単位で“納税者”が増えることになれば、億単位の税収となる。国や県への依存が大きく後退するかもしれない。それは新しき村づくりを可能にする窮余の手段でもある。ふるさとのない都会の人々にとれば、“田舎”ができる。一挙両得になると考えた。

 発想のきっかけは沖縄のある島で金持ちが町長とけんかをして隣の島に引っ越したという記事を読んだことである。とたんに税収が激減して町長は頭を抱えたというのだ。

 民主主義は一人一票を原則として代議制を行うことだと習った。政治的には確かにそうだが、財政からみるといささか趣きを異にする。金持ちがいたり、大企業が存在することによって国家や自治体は潤う。逆に所得の少ない人ばかりが住む国家や自治体は経費ばかりがかさむ。それだけでない。収入がなければ十分な住民サービスさえできない。

 話は飛ぶが、1960年代から70年代にかけて世界の若者の人気を集めたビートルズがイギリス出身だということは誰もが知っているが、まもなく彼らはアメリカ人になった。理由は単純である。70年代のイギリスは税金が高すぎたからである。エリザベス国王はビートルズにナイトの称号まで授け、外貨収入増への貢献をたたえたが、彼らはいとも簡単に国籍を捨てたのである。人は税金で国を選ぶこともできるのだから、国内で住民票をおくところぐらい自由にすればいい。

 徳島県阿南市は青色発光ダイオードを発明した中村修二博士を失っただけでない。特許訴訟で日亜化学工業から勝ち取った巨額の収入にかかる税収も失ったのである。きっとほくそ笑んでいるのはカリフォルニア州サクラメント市であろう。

 自治体は企業誘致ばかりせず、金持ち誘致にもっと力を入れるべきなのである。武者小路実篤は精神論から「新しい村」づくりを実践したが、田園や山間に住みたいと考えている金持ちのために例えば村営空港を自前でつくって毎日朝晩に、東京の調布飛行場に村営の定期便を飛ばすことだって可能なのである。道路建設の予算から比べれば小型ジェット機やヘリコプターの1機や2機の維持費は安いものである。

 田中知事の場合、昨年、南信州の泰阜村に住民票を移してからというもの、主たる住居が長野市にあるため、長野市側が転出を認めずマスコミの話題となっている。三重県に転勤してから多くの単身赴任者は主たる居住地に住民票を移さずに赴任地において無料で幾多の行政サービスを受けていることに気付いた。

 すなわち多くの全国地方の自治体は数十万人分の地方税を取りそびれていることになる。都会のサラリーマンは収入水準も高い上、源泉徴収で徴税が容易であるにもかかわらずである。ということは例えば、三重県に住みながら田中知事と同じように信州の泰阜村に住民票だけを移すことも可能ということになる。筆者の場合は、家族は東京都に住んでいるから二重の意味で無料の住民サービスを受けることになる。

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