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ガリレオが導くユーラシアの歩き方
2004年01月10日(土)
萬晩報通信員 園田 義明
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■動き始めたアジアハイウエー構想
国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)が主催するアジアハイウエー(AH)政府間協定(仮称)に関する政府間会合が2003年11月17、18の両日、タイのバンコクで開かれ、アジア地域を結ぶ55路線の経過地や標識、道路構造基準などを盛り込んだ協定文が採択される。アジアハイウエーは、アジア地域の32カ国、延長約14万キロメートルの路線を計画に位置付け、日本はこれまで専門家の派遣、調査の実施、技術協力等による支援を積極的に実施してきた。この会合ではアジアの一員としてAH計画に参加することが日本のプレゼンス向上に寄与するとの観点から、AH政府間協定に日本国内の路線を掲げることを表明、「東京?福岡」(?釜山)を路線「AH1(AH1号線)」として掲げることを提案し、会合において意見の一致を得ることになる。
この結果AH1号線の主要ルートは、東京−福岡−釜山−北京−ハノイ−バンコク−ニューデリー−カブール−テヘラン−イスタンブールとなり、通過国は、日本、韓国、北朝鮮、中国、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、バングラディシュ、インド、パキスタン、アフガニスタン、イラン、トルコの14カ国に及ぶ。道路には「AH1」という標識が付く予定となっており、東京・福岡間は東名や名神、中国縦貫道など既存の高速道路が指定され、「イスタンブールまで2万キロ」の標識が都心に立てられる可能性もある。
■国連主導のアジアハイウエーと
E・ロード ・ネットワークとユーラシア大陸横断鉄道
なお重要な点は、この国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)のAH計画は、国連欧州経済委員会 (UNECE)の進める「E・ロード ・ネットワーク」と連携しており、中央アジアとコーカサスで合流することになっている。従ってユーラシア全域に拡大する可能性を秘めている。この国連と古い欧州が主導するユーラシア道路網に米国の強い警戒心に繋がっている。
2003年6月14日、韓国と北朝鮮を半世紀ぶりに鉄路で結ぶ京義線と東海線の鉄道連結式が南北の軍事境界線で行われた。2000年6月の南北首脳会談三周年を記念する行事となったが、北朝鮮の核問題が国際的な懸念や金大中前政権の対北送金疑惑の影響により3年前の熱気は消え失せ、祝賀行事の参加者も報道関係者を含め南北各50人という小規模なものとなった。
この背景には、「太陽だけで乾燥した土地は耕せない」と太陽政策容認路線のクリントン政権を批判し、一転して北朝鮮を「悪の枢軸」と呼ぶ強硬路線に切り替えたブッシュ政権の地政戦略が大きく影響し、それと連動した諜報工作が北朝鮮周辺国一帯で進められているものと考えられる。そして、ブッシュ政権の様々な介入は南北鉄道連結の中止が決まるまで継続される可能性がある。
その理由は、朝鮮半島の鉄道網が中国やロシアの鉄道とつながることで、北東アジアと欧州間にまたがるユーラシア大陸横断鉄道が誕生するからである。そして、アジアハイウエー同様に日本がその発着地となる可能性も恐れているのである。
朝鮮半島からヨーロッパへ至る現実的な鉄道ルートには、次の経路が存在する。
- 中国東北経由、満州横断鉄道(TMR)
- 新義州-瀋陽-ハルビン-満洲里-シベリア鉄道(TSR)へ
- モンゴル経由、モンゴル横断鉄道(TMGR)
- 新義州-北京-ウランバートル-ウラン・ウデ-シベリア鉄道(TSR)へ
- シベリア横断鉄道(TSR)直行
- 清津-豆満江-ハサン-バラノフスキー(ウラジオストック北方)-シベリア鉄道(TSR)へ
- 中国西部・中央アジア経由、中国横断鉄道(TCR)
- 新義州-西安-ウルムチ-アルマトゥイ-シベリア鉄道(TSR)へ
(『朝鮮新報』高成鳳「ユーラシア大陸横断ルートと京義線」を参考)
実際に海上輸送とのコスト差、時間、手続き、治安等の問題から現状では夢物語のように見えるが、1995年から国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)もアジアとヨーロッパをつなぐ縦断鉄道建設を推進しており、アジアハイウエーとユーラシア大陸横断鉄道が連携させることで、ユーラシア一帯の有力な輸送手段の選択肢のひとつとなる可能性を秘めている。
■日韓海底トンネル構想と麻生太郎
国連ESCAPのアジアハイウエー協定文には日韓海底トンネル構想は触れられていない。しかし、自民党のHPに掲載されている「デイリー自民」の平成15年6月19日付け記事では、外交調査会がドーバー海峡トンネルの工事に携わった宇賀克夫氏と、民間で日韓海底トンネル実現に向けて調査などに取り組んでいる「日韓トンネル研究会」の高橋彦治・濱建介両氏からヒアリングを行った結果、日韓海底トンネルは「技術的には実現可能」との見解を示したことを掲載している。この構想について、自民党では麻生太郎総務大臣が議長を務める「夢実現21世紀会議」の「国づくりの夢実現検討委員会」が実現に向けた政策提言を発表している。
この麻生太郎総務大臣は九州を代表する麻生グループの御曹司であり、セメント事業を中核に健康・医療・福祉関連事業、教育人材関連事業、人材派遣関連事業など80社を超えるグループ企業を傘下に持っており、セメント事業では世界最大のセメントメーカーであるフランスのラファージュと資本提携し役員も受け入れている。ラファージュ本社のベルトラン・コロン会長は、取締役兼任によってBNPパリバやトタル、そしてフランス・テレコム、カルフール、ラザード・ブラザーズなどと密接に繋がるフランス株式会社の中核に位置している。九州とフランスを結び付ける日韓海底トンネルはこの麻生太郎にかかっているのかもしれない。またブッシュ政権にとっては要注意人物のひとりとなっている可能性が高い。
■ガリレオが導くユーラシアの歩き方
なお南北が連結に着手することになった京義線は、日露戦争開戦とともに前線への軍事物資輸送を目的として1906年に日本によって開通されたものであり、1911年には南満州鉄道との直通運転が開始され、日本の中国侵略の先兵となった満州鉄道の経営下に入った。その当時の日本の傀儡国家である満州国の奉天と釜山を結ぶ大陸連絡特急の名前は「のぞみ」と「ひかり」である。
2003年12月9日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は相次ぐ故障により日本初の惑星探査機「のぞみ」の火星探査を断念した。宇宙への「のぞみ」は人工の星屑となって太陽の周りを回り続けることになる。しっかりと地に足を着けて冷静に歴史を振り返り、したたかに「のぞみ」を「オリエント急行」に変更すれば、先人達の夢が実現するかもしれない。オリエント急行には古い欧州を代表する有力者が集っていることを認識しておくべきだろう。そして、ここにトヨタに繋がる強力な人脈が存在する。
20XX年、オリエント急行に併走するトヨタの燃料電池車には、欧州が計画する衛星利用測位システム「ガリレオ」と繋がったナビゲーションが組み込まれているはずだ。
園田さんにメール mailto:yoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp
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