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目覚めよ! ユーラシア時代の両生類
2003年12月10日(水)
萬晩報通信員 園田 義明

「東欧を制するものはハートランドを制し、ハートランドを制するものは世界島を制し、世界島を制するものは世界を制す」・・・ハルフォード・マッキンダー(英、1861−1947)
(注:ハートランド=ユーラシア大陸内部、世界島=ヨーロッパ・アジア・アフリカ)

「リムランドを制するものはユーラシアを制し、ユーラシアを制するものは世界の運命を制す」・・・ニコラス・スパイクマン(オランダ系米国人 1893−1943)
(注:リムランド=ランド・パワー(大陸勢力)とシー・パワー(海洋勢力)が接触している地域)

 マッキンダーは、世界島の中央部でシー・パワーの力が及ばないユーラシア北部を「ハートランド」と名付け、鉄道や道路などの陸上交通や通信技術が発展すれば、ランド・パワーが沿岸地域に及んでいるシー・パワーを駆逐し、圧倒することになると主張した。マッキンダーとスパイクマンの唱えた理論は、二つの世界大戦を経て、米国の伝統的なモンロー主義を転換させ、東西冷戦時代における米国の「ソ連封じ込め政策」に大きな影響を与えることになる。

 その後「リムランド理論」は、ニューヨーク市立大学のソール・コーエンらによって、より柔軟なモデルへの修正も試されるが、今なおマッキンダーやスパイクマンの主張は米国の外交戦略に強い影響を及ぼしている。そして、冷戦終結後の今、かつてのソ連に代わって、21世紀のユーラシアを制し、世界の運命を制すことになる存在が姿を現し、米国を根底から揺さぶり始めている。

 2002年1月、外交問題評議会(CFR)は外交政策と経済政策間のギャップを埋めるためにレスリー・H・ゲルブ(CFR名誉会長)、モーリス・R・グリーンバーグ(CFR名誉副理事長/米最大手保険会社のAIGグループ)、デビッド・ロックフェラー(CFR名誉理事長)、ピーター・G・ピーターソン(CFR理事長/ニクソン政権商務長官)らが中心となって「モーリス・R・グリーンバーグ地経学研究センター」を設立する。ポール・ボルカーも2002年7月までこの「モーリス・R・グリーンバーグ地経学研究センター」のシニア・フェローを務めており、アドバイザリー・ボード会長にはグリーンバーグ、そして同メンバーにはロックフェラー、ピーターソン、カーラ・H・ヒルズ(CFR副理事長/ブッシュ父政権通商代表部代表)、ロバート・E・ルービン(CFR副理事長/クリントン政権財務長官)、リチャード・N・ハース(CFR会長/ブッシュ政権国務省政策企画局長)、ブレント・スコウクロフト(フォード、ブッシュ父政権国家安全保障問題担当大統領補佐官)やウィンストン・ロード(クリントン政権国務次官補)など20世紀の米国を支えてきた超党派のエスタブリッシュメントがずらりと顔を揃えている。

 外交問題評議会の地経学研究部門の新設は、かつての軍事大国ソ連の経済的崩壊により、20世紀の国際政治を動かしてきた地政学の経済的要因にウェイトを置いた地経学への関心の高さを示すものとして注目される。21世紀を地政学から地経学への移行として語られることも多いが、これまでの地政学も経済的要因を包括しており、地経学の関心の高まりは、地政学の再評価に繋がることになりそうだ。

 ブッシュ政権の政策には地政学と地経学の影響が明確に表れている。そして、ソ連の崩壊を自国の姿と重ね合わせているかのような「焦り」もあるのかもしれない。ここに対イラク戦に踏み込まざるを得なかった原因が隠されている。


 ■「悪の枢軸」と「新旧欧州分断作戦」

 ブッシュ大統領の2002年1月の一般教書演説でイラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢軸」と定義したが、単に「テロ封じ込め」を意味するのではなく、「リムランド理論」の延長上に位置付けられていた可能性がある。従って、この「悪の枢軸」発言は、ロシア、中国、そして拡大するEUに対して発せられた「ユーラシア封じ込め」的な警告と捉えることもできる。世界の運命を制するユーラシア連合の出現は、これまでの米国覇権を揺るがしかねない。米国の中長期的な攻撃目標を「悪の枢軸」発言によって明らかにし、時には先制攻撃も辞さずとするブッシュ・ドクトリンによって強い決意を示し、そして実行に移されたのが対イラク戦争であった。

 イラン・イラクはマネーを生み出す石油・天然ガスの宝庫である中東地域をEU、ロシア、中国から奪回することを目指し、北朝鮮では、連携を強めるロシア、中国、日本、韓国間の緊張を生みだすのと同時に、EUの中国、韓国、そして日本への更なる東方拡大を防ぐ目的が考えられる。特に北朝鮮は、米国の北東アジア戦略の根幹に関わるため、より長期的な緊張こそが米国の狙いであろう。従って、ブッシュ政権が主導権を握る限り、北朝鮮問題の解決はあり得ない。つまり、日本が拉致問題を含めた北朝鮮問題を解決するためには、米国の戦略を認識した上で、交渉の場に国連やEUを引き込む努力が求められる。この点で小泉政権の戦略には重大な欠陥がある。

 EU(欧州連合)は来年5月、中・東欧諸国などを加えた25カ国体制により、総人口約4億5000万人の大欧州に生まれ変わる。ラムズフェルド国防長官が、再三にわたってフランス・ドイツ・ベルギーなどを「古い欧州」と決めつけ、対イラク戦でアメリカ支持にまわった中東欧諸国を「新しい欧州」として味方に引き入れる発言は、大欧州の分断戦略に他ならない。つまり、ブッシュ政権が2002年9月に発表した新国家安全保障戦略(ブッシュ・ドクトリン)における「米国の力を凌駕しようとする潜在的な敵国は思いとどまらせる」対象に、拡大する欧州も含まれていたのである。

地図
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/map.html

 EU加盟国と地図

 ●現加盟国 15か国:ベルギー、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、スペイン、フランス、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、オーストリア、ポルトガル、フィンランド、スウェーデン、英国

 ●2004年第五次拡大 キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトヴィア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロヴァキア、ス ロヴェニア

 ●ユーロ参加国(12カ国) ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、アイルランド、オーストリア、フィンランド、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、ギリシャ


 ■対イラク戦は、ネオコン vs 古い欧州 + 国連

 2003年2月21日、モーリス・ストロング国連北朝鮮問題担当特別顧問(トヨタ・インターナショナル・アドバイザリー・ボード・メンバー)は安倍晋三官房副長官(当時)と会談し、国連が北朝鮮に対し食糧支援を行う方針を伝え、協力を打診するが、安倍副長官は日本人拉致問題をめぐる日本側の立場を説明した上で、食糧支援には拉致被害者5人の家族の早期帰国が最低限のハードルだとの否定的見解を示す。 また、日本政府が過去に計約120万トンのコメ支援を行ったことを強調したうえで、「実際に一般国民に行き渡ったかどうか疑わしい」と世界食糧計画(WFP)のモニタリングのあり方にも疑問を呈したようだ。

 しかし、安倍晋三官房副長官の姿勢は、これまでの日本のコメ支援が武器としての戦略性を欠いたことを認めるものであり、WFPへの疑問などは米ネオコンの主張と変わりがなく、日本のネオコンと呼ばれても仕方がない。むしろ国連流の「武器としての食料戦略」をモーリス・ストロングに聞いてみる方が得策だったのかもしれない。その実施例は古くは米国によって日本の戦後食料戦略に適用されたが、最近では国連のイラクへのオイル・フォー・フード計画(石油食料交換計画)などが参考になるだろう。ここに、対イラク戦を回避できなかった理由がある。

 ネオコンに乗っ取られつつある米ウォールストリート・ジャーナル紙で、クローディア・ロゼットはコラム「コフィー・アナンダーセン」を掲載する(2002年9月25日付)。コフィー・アナン国連事務総長とエンロン・スキャンダルで責任を問われた米名門会計事務所アンダーセンを組み合わせたものだが、オイル・フォー・フード計画には国連本部の120名以外にも、900人の国際職員と3000人のイラク人が従事しており、まるで国連による雇用創設計画のようだと皮肉り、フセインは得た資金で政権基盤を維持し、ミサイル技術や軍事物資を購入しているとして、資金の使い方にも不透明感があると指摘する。そしてオイル・フォー・フード計画はエンロン・スタイルだと批判した。確かに国連の資料を見る限り不透明感があるのも事実だが、ネオコンの国連嫌いを象徴する内容となっている。

 国連のオイル・フォー・フード計画が開始されたのは1996年12月、湾岸戦争で経済制裁を科されたイラクに対し、人道目的に限って制裁を部分解除した。国連管理下で石油を輸出し、得られた資金で食料・医薬品などの人道物資をイラク国民に配給する制度である。計画名から食料だけを想像しがちだが、食料以外に医薬品、そして電力、上下水道、教育関連施設などのインフラ整備に関連するものが加えられていく。

 国連の資料によると、1996年12月から2003年3月までイラクが輸出した石油は約34億バレルで約650億ドルに相当している。この内72%が人道援助に割り当てられ、25%がクウェイトへの戦時賠償金、2.2%が国連経費、0.8%が国連の武器査察に割り当てたとしている。

 共同通信によれば、開戦前に国連要員が撤収したことから業務が中断し、さらにフセイン政権崩壊で石油管理者が不在となったため、計画実施の遅れが顕著となっており、イラクへの輸送を待つ物資は100億ドル規模に上るとしている。また、実施期限である2003年6月3日までに輸送される見通しが固まった物資は約5億5000万ドル相当にとどまっており、「国連が管理する口座」には使途が決まっていない資金32億ドルが保管されている上、70億ドル相当の石油売買契約が既に認可されているとしている。ここで問題となるのは「国連が管理する口座」である。

 ■国連と古い欧州のユーロ・ドミノ化戦略

 国連発表の資料によれば、やはり「国連が管理する口座」とは、パリ国立銀行(BNP)ニューヨーク支店であった。パリ国立銀行、つまり2000年5月にパリ国立銀行とパリバが合併して誕生したフランスを代表する大手銀行BNPパリバが管理しているのでる。しかも実際はドルではなく、一部はユーロで管理されているはずだ。

 2000年10月、フセインは原油代金を「敵国通貨」のドルではなくユーロで受け取ると迫り、認めなければ原油輸出を止めると脅したため、 国連安保理のイラク制裁委員会はこれを承認することになる。背景にはフランスなど欧州主要国の働きかけがあったとの説が根強く、ユーロ相場をテコ入れしたい欧州勢と、欧州を後ろ盾に米国をけん制しようとするフセインの思惑が一致して実現したようだ。

 それまで原油取引はドル建てが既定事実となっており、フセインはそれまでの「ドル一極体制」に風穴をあけたのである。フセインが風穴をあけたユーロ決済は、その後サウジアラビア、インドネシアやマレーシアなどへも波及することになる。国連の管理銀行がBNPパリバであったことを考えれば、国連と欧州勢は協調しながら「ドル・ユーロ二極体制」実現に向けて、環境戦略と並ぶ通貨戦略としてフセインの石油を利用した可能性が高い。

 BNPパリバの2002年度版アニュアル・レポートによれば、BNPパリバとフランスを代表する石油メジャー・トタルは、二人の人物が両方の会社の取締役を努めており、二件の取締役兼任で結合している。つまり情報を共有できる関係にある。そして両社ともフランス株式会社の中核企業である。

 こうした背景から、対イラク戦は、フランス勢率いる「古い欧州」と国連が主導する中東地域での「ユーロ・ドミノ化」を阻止するために、米国が力ずくで行使したと見ることもできるのである。そして国連と「古い欧州」を敵と見なしたのは、明らかにネオコンと古き良き時代に浸る攻撃的ビジネス・リアリストの一部に存在するネオコン同調者であろう。

 ■古い欧州の21世紀ソフト・パワー戦略

 EUも軍事・防衛分野では北大西洋条約機構(NATO)に依存せざるを得ず、国連を大幅に改革しない限り米国の代わりを務めることはできない。20世紀同様、世界の警察官として米国を巧みに操りながら、経済に特化した戦略を組み立てているようだ。ただし、長期的には国連を軸とした軍事産業の再編、民間軍事会社の積極的活用によって国連の軍事力強化に向けた取組が始まる可能性は無視できない。

 ミスター・ソフト・パワーことジョゼフ・S・ナイ・ハーバード大学ケネディ・スクール(行政大学院)院長は、一貫してブッシュ政権のユニラテラリズムを批判してきたが、彼の唱えた文化、イデオロギー、制度的魅力に根差したソフト・パワーによる世界戦略は、皮肉にもEUに受け継がれることになりそうだ。そもそも、たった200年そこそこの歴史しかない米国は、若さをパワーに変えて成長を遂げてきたのであり、ソフト・パワーとは相容れない側面もある。むしろ、映画、音楽、そしてマクドナルドに象徴されるように、20世紀中にソフト・パワーを使い果たしたようにも見える。その歴史的弱点を補うがごとく、軍事力というハード・パワーに依存せざるを得なかった。そして、今後も軍産複合体制維持という制度的しがらみからは解放されそうにない。国連の軍事力強化は米国にとっても、しがらみから脱却できる機会とも成り得るが、その時に受け入れるだけの余力が残されているかどうかが問題となるだろう。

 現実的に考えれば、今後じっくり時間をかけて、EUはNATOとの関連から米国との協調関係を維持しつつ、ユーロ・環境を武器に金融、経済面でリーダーシップの確立を目指すことになる。そしてハード・パワーの米国とソフト・パワーのEUとの相互依存による共同覇権体制を確立し、中国を軸とするアジア圏と向き合うことになる。現在のネオコン主導の混乱は、米・欧による共同覇権体制の確立への最後の抵抗であり、むしろ加速させる結果になるだろう。

 日本の古都の名を冠した京都議定書に象徴されているように、二つの勢力のなわばり争いは当初から日本にも向けられている。そして、ユーロ・環境に続く第三波(ガリレオという名のスペース・パワー)、第四波(ユーラシア内巨大鉄道・道路網)もすでに用意されているのである。

 ■ブレジンスキーの警告

 2001年9月11日の同時多発テロを契機に始まったアフガニスタンからイラクへと続く戦争、そしてリムランドの重要地域であるイラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだ背景には、米国の拡大を続けるEU、特にユーロ圏拡大に対する地政学的な「封じ込め政策」がある。今後、ブレジンスキー元大統領補佐官が名付けた「ユーラシア・バルカン(カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、アルメニア、グルジア、アフガニスタン、そして、トルコ、イラン)」一帯の緊張も、より一層高まることになるだろう。2003年11月のグルジアで起きた無血政変で大統領の座を追われたシェワルナゼ前大統領は、十五年来の友人であるベーカー元国務長官の裏切りを口にする。米・欧の狭間でしたたかに泳ぎ回るロシア、そして中国の思惑も絡みながら、リムランド一帯の不安定な状況が続くことになる。そして、新たな「悪の枢軸」が追加される可能性も高い。

 対イラク戦によって圧倒的な軍事力を見せつけることで、米国率いるシー・パワー連合国である英国、日本、スペイン、オーストラリア、そしてEU内部のポーランドを中心とする「新しい欧州」との結束を強める狙いがあったが、戦争の大義が問われ、早期終結するはずの戦争も泥沼化している。結果としてシー・パワー連合国内部でも米国への信頼を揺るがしかねない状況になっている。おそらく英国のユーロ参加問題も再浮上し、より現実味を帯びてくるだろう。

 このことは、対イラク戦を主導したネオコンの目算が狂ったのか?−それともEU拡大の加速こそが彼らの真の狙いであったのか?−おそらくこの回答は歴史の裏側に葬り去られることになるだろう。しかし、ネオコンの人脈をたどれば、加速こそが彼らの真の狙いであった可能性が無いとは言い切れない。だとすれば、対イラク戦がネオコンによって主導された米国による米国の自爆テロということになる。

 ブレジンスキー元大統領補佐官が2003年11月に外交問題評議会で行われたインタビューで次のように発言している(一部抜粋)。

「アフガニスタン、イラクでの勝利を経て、世界規模での軍事展開能力を持つ唯一の国がアメリカであることが実証された。軍事力を信頼できる形でグローバルに展開できる国は他にはない。しかし、世論調査、諸外国政府の反応、アメリカ人ジャーナリストの外国からの報道など、いかなる指標をもってしても、今日のアメリカは国際的な信頼を失っている。世界におけるアメリカの政治的な立場はこれまでになく低下している。イラクが大量破壊兵器(WMD)を保有していると詳細に説明し、(これまでのところWMDが発見されていないために)、世界の他の諸国がアメリカに寄せていた信頼が失われてしまった。これはアメリカの世界での役割を大きく損なう深刻な事態である。 」

「こうした不幸な状況を是正していくための措置は数多くある。大枠で、穏健さと超党派合意を旨とする外交政策へと立ち返ることが先決だ。現在のアメリカの外交政策は共和党内の極端な見解、つまりは、キリスト教原理主義といわゆるネオコンの戦略観に支配されている。」

「私が最近世論の場で発言をしたのは、アメリカの世界における役割について純粋に心配しているからだ。現政権の最近の政策路線、政策の実行の仕方、政策を説明する際に使用されるボキャブラリー、テロという特定の問題にばかりこだわる姿勢は、アメリカが本来世界で果たすべき役割を大きく損なってしまっていると考えている。これは危険な兆候だ。・・・ 」

 ■結論

 現在、ブレジンスキー元大統領補佐官の発言に見られるように、米国内で様々な分野からネオコンやキリスト教原理主義の分析が進められている。特にアカデミック・リアリストの大物達が超党派で反ネオコン組織を続々と立ち上げ、ネオコンの暴走に歯止めをかけようとしている。

 それにも関わらず、小泉首相や石破防衛庁長官が語るイラクの民主化そして人道主義には、キリスト教原理主義とネオコンの戦略観に支配されているとしか思えない。このふたりのネオコン教信者こそが、日本の国益を踏みにじる存在になる可能性がある。冷戦が終わったことさえ気付いていない日本の政治家や識者の多くは、今まさに世界中で高まる日本の文化・歴史・古神道的宗教観・自然観への期待を踏みにじるばかりか、時代遅れのハード・パワー国家を主導するのだろうか。

 緩やかな「ドル・ユーロ二極体制」と「米・欧共同覇権体制」への移行は、米欧グローバル・ビジネス・リアリスト、国連、国際金融界ではある程度の合意を得ている。本当に怒らせてはいけない相手は、最短4年最長8年に過ぎないブッシュ政権ではなく、移行を推進する米欧にまたがる一握りの集団であることは、もはや常識の範疇である。

 イラクへの自衛隊派遣を巡って国際協調を訴えるのであれば、派遣する前に小泉首相や石破防衛庁長官の二人が自らブリュッセルに出向き、生きた情報を入手すべきだ。貴重な命を預かるものとして当然のことだろう。米国との関係を重視しつつ、大欧州に向き合う時が来た。時代が大きく動こうとしている今こそ、慎重に対処すべきであろう。我々日本人に刻まれた両生類的遺伝子が生かされる絶好の機会を見逃すべきではない。

■引用
アメリカは国際社会の信頼を失っている
Brzezinski: America Lacks International Credibility
http://www.foreignaffairsj.co.jp/source/CFR-Interview/brzezinski.htm

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