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増税なら定価制を廃止すべきたばこ論争

2002年12月04日(水)
萬晩報主宰 伴 武澄


 四国新聞論説委員の明石安哲氏がコラム「一日一言」で「たばこ税を上げ続ければ、たばこの密輸が増え、新たな暴力団の資金源になるかもしれない」ということ書いている。明石氏によると、たばこの税負担率が84・6%まで引き上げられたイギリスでは消費量の3分の1が密輸なのだそうだ。

 以前チェコを訪れた時に同じことを聞いたことを思い出した。ドイツとチェコとのたばこ税が大きく違うのでチェコで製造したマルボロが国境を越えて大量にドイツに流れていたのだった。陸地で国境を接していない日本では暴力団が手を染めてもいい商売になるかもしれない。一概に荒唐無稽と聞き流すわけにはいかないと思った。

 「12月から590億円得したたばこ屋さん」と題してたばこ増税に反対するコラムを書いたことがあるが、いただいた反響のメールのほとんどは「社会に害毒を撒き散らすものだからどんどん税金を上げればいい」というコラムの趣旨をはきちがえた非喫煙者と思える読者からの批判だった。

 http://www.yorozubp.com/9812/981209.htm

 今回は違う側面からたばこ問題を考えたい。ひとつはたばこ価格が財務省による認可価格であるということである。たばこ価格を値上げするにも値下げするにもいちいち財務省にお伺いをたてなければならない。その結果、財務省が認めた価格以外で売ってはいけないこととなり、小売り店がたばこを値引き販売すると法律に触れるのである。

 街角の自動販売機で買っても、銀座の高級バーやクラブにいってもマイルドセブンが250円であるのはそういうことが背景にあるからなのだ。

 大方の商品は「定価」を定めると「価格拘束」という名の独占禁止法に抵触することになるのに、たばこだけは財務省の管轄ということもあっていまだに旧制度が生き延びている。ほとんど旧社会主義国並みである。ちなみに書籍や新聞も独禁法の対象外となっていて「定価」をうたうことが許されている。

 この際、国家財政のためにどうしてもたばこ増税をしたいのだったら、たばこのこの「定価」という旧弊を廃止するべきである。財務省も譲るから国民にも我慢を、ということならば多少の増税はいたしかたない。

 というのもたばこの定価制が廃止されれば、たちどころにたばこの乱売合戦が始まることが期待できるからだ。増税分をまるまる国民が負担しなくていいとなれば、愛煙家の理解も得られるというものだ。

 定価がなくなる効果のもう一つの側面はコスト競争力のあるたばこ会社が売り上げを伸ばし、その逆も起こりうるということだ。日本では日本たばこ産業(JT)がダントツだが、フィリップモリス社の輸入たばこシェアは15・2%(このほかJTに委託生産するマルボロがある)。外資全体では26・6%シェアとなっていて、その比率は年々アップしている。

 それでなくとも高コストでシェアを落としているJTの未来はおぼつかない。

 現在、250円のマイルドセブンにかかるたばこ税は141円44銭、これに消費税11円90銭を上乗せして、税金は合計153円34銭である。価格に占める税金の割合は61・3%。小売り価格に占める税金の比率が50%を超えているのはたばことガソリンである。

 財務省のお役人も自民党税調のお偉方もよーく考えてたばこ増税を判断するべきだ。

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