沖縄サミットにクリントン米大統領が欠席するかもしれないというニュースが先週11日朝早く日本に飛び込んだ。官邸も外務省も「あり得ない」と否定し、平静を装った。しかしオルブライト国務長官は中東和平のための会議に注力することを理由に同日からの宮崎で開かれた外相会合を欠席しており、アメリカの沖縄サミットへの期待感はみるからに低下していることがうかがえる。
もしこれが本当だったら、日本政府は思考能力を失うほどのショックに陥るはずだ。
●サミット日程になぜ中東和平会議を!
サミットは7月21日から沖縄で開かれるよう1年もかけて準備してきた。福岡の蔵相会合ではすでにサミットをお祭り化した日本に対して批判があがっている。主要国の首脳たちが年に一回会して意見交換する場をお祭り化する国民性をよしとはするわけではない。日本として大いに反省すべき点だ。
だからといってクリントン大統領がサミットを欠席したり遅刻が許される理由はない。サミットの日程は各国が十分対応できるよう事前に決まっていることである。その沖縄サミットの日程にあえて中東和平会議をぶつけた理由がまったく分からない。アメリカ大統領のいないサミットなど開くに値しないことは当のアメリカが一番知っていることである。
オルブライト国務長官の欠席ですら十二分に国際的信義に反する行為である。森さんが甘く見られたといってしまえばそれだけかもしれないが、あまりにも日本を侮辱した話だ。こうした行為によって日本国内に反米感情が醸し出されるのだとしたらその責任はすべてアメリカ側にあるといっていいであろう。
●沖縄サミットの原点は米軍兵士の少女暴行事件
筆者が故小渕首相を唯一、評価するのはサミットの沖縄誘致だった。小渕さんの意図はともかく普天間基地の移転問題からここ数年、沖縄は再び日本のホットイシューとなった。世界中のジャーナリストに、極東の安全保障を理由に浮沈空母化されたままの沖縄の現状をみてもらうことは決して無駄なことではない。
そして沖縄でのサミット開催の遠因が1995年のアメリカ軍兵士による少女暴行事件にあったことを、今回アメリカ軍兵士が起こした一連の事件と併せて世界に知ってもらっておく必要がある。というよりこの現実を世界はもっと知らなければならない。那覇空港に降り立つ際に基地の島が鳥瞰できるはずだ。
アメリカは1年以上も前からサミットの沖縄開催に対して反発を強めているということである。国防総省系のシンクタンクもある報告書の中でサミットの沖縄開催を「日本がアメリカ離れ」をしている兆候の一つに挙げている。それはそうだろう、海外にあるアメリカ軍の最大の軍事基地のすぐ隣でサミットを開催する発想は尋常でない。
イギリスの本拠を置く国際的NGOのJobilee2000が強く求めているアフリカなど重債務国への債権放棄も重要な問題だが、極東の小さな島が冷戦崩壊の後も引き続き要塞化されているという事実にも着目すべきだろう。
ところでアメリカでいまサミットといえば、中東和平の最後の詰めが期待されているキャンプデービッド会議のことを指すらしい。イスラエルのバラク首相とパレスチナのアラファト議長が11日から精力的に話し合いに応じているということだが、合意にいたるかどうかはいまだに不透明な情勢だ。
クリントン大統領がどうしても中東和平を重視するというなら、アメリカが主要国首脳による年一度の会合の意味を見出さなくなったということだろう。中東和平会議で示されたデッドラインは9月だということだから、時間はまだあるはずである。
アメリカがそういう考えならば、もはや官僚による作文大会として形骸化したサミットに対して日本が中止を宣告すればいい。ただそれだけのことである。
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