5月20日に行われた台湾大統領就任式で国歌を熱唱した国民的人気歌手、張恵妹(アメイ)が、中国共産党からバッシングされている。コカコーラ社からの依頼で出ていたテレビCMは、一夜にして放送中止に。また、副大統領の呂秀蓮は、トップの陳水扁よりもむしろ矢面に立たされて、中国からひどい「文攻」(日本語では「口撃」とでも訳せば良いか)を受けている。しかし、この台湾の二人の女性は、外圧に負けず、意気軒昂なところをみせている。今輝いている台湾女性を紹介する。
●政治舞台で女性が袋叩きに
6月に台湾で開催された第5回全国女性会議で、呂秀蓮は「私が30年前に書いた『新女性主義』の本を、(意識の遅れた)中国に送ってやりましょう」とスピーチ、会場を沸かせた。また「陳大統領は英明な人物です。女性の私を中国に対する悪役にして、政治を進めている」と会場の笑いをとる余裕もみせた。
実は、当初、女性の副大統領候補はよろしくないと民進党内でも反対意見があったが、陳水扁が反対派を抑えて呂とのコンビを決めた経緯がある。台湾では「両性共治」が政治テーマのひとつになっている。外国から政治問題で女性がバッシングされるのは日本では例が思い出せない。それだけ台湾の女性が社会の表に出て活躍していることを最近の事件は示している。
呂秀蓮は「台湾と中国は遠い親戚で近くの隣人」「一つの中国が中華人民共和国のことならば、台湾人は当然、中国人ではない」と当たり前のことを正々堂々と発言している。このコラムは主に「中時晩報」の呂淑媛記者(女性)の記事をあらすじにしていることをお断りしておこう。
呂秀蓮によると、共産中国の言っていることは、一家の主人(男性)が「俺が死ねと言ったらお前は死ぬのだ」という時代遅れの家庭内暴力と同じ「君父思想」だという。「俺が一つの中国と言ったら、お前は認めるのだ。そうしたら何でも話し合ってやろう」はまさにそれだ。
同副大統領は、「新世紀、新アジア観念」を唱えており、それは「EU統合」の観念に沿っている。かつて争ったドイツとフランスが同じEUに入るような形での中国と台湾の統一を提唱している。
それにしても、蔡英文大陸委員会委員長(対大陸外交の最重要部署)といい、鍾琴行政院発言人(官房長官に相当か?)といい台湾では女性が大活躍している。いずれも論理が明快で世界の情勢に通じており、納得できる発言ばかりだ。
どこかの国の「ガンコに○○」「ダメなものはダメ」とか言って論理展開を無視、世界の趨勢から取り残されている政治家とは大きな違いがある。
ところが正しいことを言っているだけに、共産党の反撥も半端なものではない。怒り心頭という感じで、呂秀蓮は徹底的に叩かれている。
●客観的報道は禁止
香港のテレビが呂秀蓮インタビューを放映したら、共産党の駐香港代表機関の高官が「台湾の主張をニュースとして客観的に報道することのないように」(読売新聞の報道から引用)香港マスコミに警告。「『一国二制度』と言っても所詮、この程度」と世界に知らしめた。
張恵妹は、かつてテレサ・テンがそうであったように、大陸の音楽界で旋風を起こす天才歌手。「雪碧」は清涼飲料「スプライト」のことだが、そのCMで人気のあった張恵妹をテレビから抹殺、広告看板も取り外された。就任式典の前にコカコーラ社からこういう事態の恐れもあると事前に相談があったが、歌姫はそれを承知でステージに上がった。その心意気が小気味良いではないか!
昨年9月21日の大地震の時、公演先のシンガポールからポン、と送った10万米ドルの(彼女たったひとりの)義援金は、いろいろ勿体をつけて通知された大陸(13億人)からの第1回目の送金申し出額と同額だった。
孤独な祖国のために大らかに歌う天才はまだ26歳。少数民族出身であるハンデを跳ね返しての大活躍である。(船津レポート2000年07月04日)
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【萬晩報】きのうは森内閣の組閣。第二次だそうだ。小渕さんが倒れた後、野中、青木、村上、亀井の4人組の密室謀議で誕生した政権だったから、だれも第二次があるなどとは思っていなかっただろう。だがサミット前の総選挙に批判的だった4人組が森さんを担いだとたんに総選挙を決め、電光石火のごとく党内の主導権を握り「第二次」が奇しくも誕生してしまった。▼だが国民からみればこれほど歓迎されない政権もみたことがない。その森政権が掲げるスローガンはIT革命。森さんが口にすればするほど空虚な響きに映る。もっともITからほど遠い政治家たちが口をそろえる姿は風刺マンガ家にとっては格好の図柄になるのだろうが▼未明に初閣議後、新閣僚が自分の省庁で会見をしたが、どれも興味のわく話はなかった。というよりわれわれがほとんど報道しなかったからきっと誰が何をしゃべったか関係者以外は知らないはずだ。報道する側も力が入らない理由がある。閣僚の平均年齢が66歳で、70歳以上の人が6人もいるからだ▼ノルウエーで3月17日発足した労働党の新内閣(イェンス・ストルテンベルグ首相)は19人の閣僚中、8人が女性大臣で平均年齢は45.7歳だった。政治家は若ければいいというわけではないが、彼我の格差にあぜんとするではないか。きのうの一連の組閣報道で印象に残ったのは自民党の両院議員総会で河野太郎や石原伸晃らがヤジと怒号のなかで公然と執行部批判をした場面だけだった。(伴 武澄)
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