●成長とはいえない0.6%程度のプラス
霞ヶ関や永田町では9日発表される予定の1999年度のGDP成長率が、政府見通しである0.6%を達成できるかどうかが当面最大の関心事だ。プラス成長を総選挙の追い風に利用しようという自民党の魂胆は前々からいわれていた。
2年連続マイナス成長だったから、プラスに転じるのは喜ばしいことなのかもしれない。だが、よく考えてみれば、0.6%などという数値は成長という概念に値しないし、たった0.6%程度のプラスで恩に着せられても有権者として「はい、そうですか」とは言えない。
1994年度 | 1995年度 | 1996年度 | 1997年度 | 1998年度 |
0.6% | 3.0% | 4.4% | -0.1% | -1.9% |
上の数値をみても分かる通り、景況感なき成長といわれた95年度や96年度でさえ3、4%の成長があり、政府としても数年前までは、3%成長を巡航スピードとみていたのだ。
昨年来の「ゼロ金利政策」のゼロに惑わされて、エコノミストや経済記者たちがコンマ1だとかコンマ2の動きに一喜一憂するようになったのだから嘆かわしい。
さらに憂うべきことは経済企画庁が99年10−12月期の成長率(確報値)を積算する際、データを一部、都合のいいように解釈して成長率のマイナス幅を0.2%少なく発表していたということだ。たった0.2ポイントとはけちな話ではないか。そんなけちな話でさえ、ニューヨークタイムズが24日付朝刊で「政治的理由で故意に操作した」と書かなければ日本の国民は分からなかったのだから日本のマスコミが批判されてもおかしくない。
●興奮剤と鎮静剤を同時に打ち続ける結末
今回の総選挙で争点となるべきなのは「財政再建路線への復帰」と「ゼロ金利の早期解除」である。前者は「金利上昇を伴う興奮剤」で後者は「その金利上昇を押さえつける鎮静剤」である。
日本経済に景気対策の効き目がなくなって久しい。萬晩報は、日本経済がそうした錯乱状態に陥っているのは「興奮剤」と「鎮静剤」を同時に打ち付け続けているからだと主張し続けてきた。これは医学的にも絶対にやってはいけないことなのだ
80年代のレーガン政権は大胆な減税でその後の景気回復の礎を築いたが、おかげでアメリカは長い間、高金利に悩まされ、30年物国債の金利が10%を超える時代もあった。アメリカの当時の高金利はドル高政策の一環としても必要だったが、国民は長期間にわたり莫大な国債の漬けを金利負担で背負わされたのだ。
公共事業にせよ、減税にせよ、財政出動による景気対策という劇薬には苦痛が伴うことを知らなければならない。「景気か」「財政か」の択一選択を迫るのは間違いではないが、大規模な景気対策を行った上、市場金利までもねじ曲げれば近い将来なにが起きるか分からないはずはない。日本の円という通貨に対する国際的信頼の失墜であり、その後に訪れるはずのハイパーインフレである。そのマグマが爆発したら、その全責任は自民党を中心とした連立与党にあることはまぎれもない。
今回の総選挙で一番求めたかったことは、首相経験者全員の引退である。中曽根さん、宮沢さん、海部さん、羽田さん、橋本さん。いまからでも遅くない。21世紀の日本のために潔さをみせてほしい。
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