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麻薬的な財政・金融政策をもたらした連立政権(1)

2000年06月05日(月)
萬晩報主宰 伴 武澄  
萬晩報は6月3日から25日まで総選挙特集態勢求む投稿

 総選挙を控えて株価がまた不安定な動きをしている。日経ダウはインターネット関連をはやして2月には2万円を超えたが、3カ月間で元のもくあみに戻った。1万3000−4000円台であえいでいた98年後半から去年1月ごろから比べればまだ余裕があるとはいうものの市場には連立政権に対する信任は存在しない。

 日本の株価下落はアメリカの株価調整に連動しているとも見方がないわけではないが、日本の株式市場を押し上げてきた原動力はアメリカとはまったく異質といわざるを得ない。

 ●景気対策と公的資金と無担保信用枠

 まずこの2年、日本経済を支えてきた主力エンジンが約60兆円の景気対策エンジンだったことは忘れてはならない。金目でいえば60兆円枠の銀行向け公的資金も同様である。すべてが支出されたわけではないが破たんにおびえた都銀経営を底から支え続けた。

 30兆円の中小企業向け無担保の信用保証枠の効果も大きかった。どこへどう消えたか分からないが、とにかく国が連帯保証人になってつぶれるべき中小企業がつぶれずに済んだ。これらが三つの要素が日本の株式市場の底割れを未然に防いできたのであって、景気が回復したからではない。

 その証拠に企業の2000年3月単独決算は経常利益では15%増えたが、最終利益では記録的な低水準だった前の年をさらに33%下回ったのである。税効果会計という合法的に利益を水増しできる手法が取り入れられたにもかかわらずである。日本の株価は足下を見ずに期待だけを買っていたことになる。

 ●国内自動車産業に匹敵する景気対策

 第1番目の景気対策は本来は民間需要の呼び水的役割をはたすのが目的だが、これだけの金額を長期的に投入して、経済全体に麻薬的効果を与えないはずがない。宮沢蔵相は98年12月、99年度の予算編成時に「もう追加的措置は必要ない」と断言したが、春を過ぎると当然のように「秋の景気対策」が話題になり、11月には18兆円規模の対策が打たれた。

 99年12月の2000年度の予算編成時にも宮沢蔵相はその1年前と同じように「追加措置は必要ない」と公言したが、政府部内ではすでに今秋の景気対策の準備に入っているのだ。

 2年間で60兆円という追加措置がどれくらいの金額かを知るのは容易でない。世界に冠たる日本の自動車業界の年間売上高が20兆円台とすれば、並大抵な金額でないことを分かってもらえると思う。繰り返すが年間予算とは別に追加された金額である。

 しかも年平均30兆円は、500兆円規模の日本のGDPからすれば6%に当たる。そんな成長率がただちに民間から生まれると考える方に無理がある。故小渕首相の財政政策のおかげで日本経済が当面、景気対策抜きには立ち行かない体質となってしまったのはまぎれもない事実なのだ。

 大蔵省すら日本経済がプラス成長を維持するためには当分の間、年間30兆円の国債を発行し続けざるをえないことを認めている。

 ●東京相和銀行と酷似する公的資金の循環

 さらに将来問題となるのは大規模な失業者予備軍をつくったことだろう。土木・建設を生業とする人口がここ7、8年で100万人以上増えてしまっているのだ。これは過去の景気対策が生み出した後遺症として後世の大きな負担になるはずだ。

 銀行への公的資金は別の意味で問題が大きい。国が無償で贈与したものなら一過性の問題で終わるが、いつかは返済が必要なお金である。また毎年その巨額の資金に対して金利・配当負担が生じるということである。都銀などに投じられた7兆円は約束通り中小企業への融資に回っているのではなく、その多くが国債で運用されているのが現状である。

 昨年来のゼロ金利政策は景気対策による国債増発によって長期金利が上昇したのを防ぐためにスタートした。うがった見方をすれば、国が銀行救済のためにお金を貸して、そのお金で国の借金を肩代わりさせている。しかも国が銀行に貸したお金は預金保険機構が債券を発行して銀行から調達したのだから、なにがなんだか分からない。

 もともと銀行の金だが、いったん国のフィルターを通すと格付けが上がるとでもいうのだろうか。公的資金の資金の循環は、融資した金で資本を増強したという東京相和銀行とどこか手法が似ていやしないだろうか。

 日本経済が表向き「回復基調にある」(政府発表)ことは間違いない。これだけ劇薬を投与してたった0.6%のプラス成長が達成できるかどうかの水準でしかないことを考えると日本経済の病理は相当に深刻だと考えざるを得ない。(続)


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