神奈川新聞1988年10月14日

 日本と韓国に最も近い中国といえる山東半島が経済開放に向けて大きく動き出している。中国初の輸出加工区の建設が計画され、日本の対中円借款でも青島市経済技術開発区のインフラストラクチャー(社会基盤)の整備が対象となった。韓国との接近もクローズアップされるなど、経済開放に積極的に収り組んでいる山東半島をルポした。
 輸出加工区の建設
「機械は台湾製。材料のポリエステルとナイロンは韓国と台湾から輸入しています」―青島市経済技術開発区で昨年から稼働している協連繊帯有限公司は、衣料用リボンを製造する香港と中国との合弁企業だ。開放が進んだ中国南部だけでなく、山東半島でも韓国や台湾といった国交のない国や地域との経済協力が始まっている。
 山東半島第一の工業部市で青島市は1984年に経済開放都市に指定されて以来、経済技術開発区の建設に着手、外資導入を本格的に進めようとしている。
 青島市がそうした中で今、日木に協力を求めているのが、輸出加工区の建設。開発区開拓の一角保税地区を設けて外資導入の起爆剤にするのが狙いだ。「韓閥の馬山、台湾の高雄の輸出加工区をモデルにする」に(劉世光開発区管理委員会副主任)というだけに、日
本を中心とした韓国、台湾を中心とした外国企業の寒心も高い。
 訪中団が10団体も
 特に、山東半島の開放都市が期待を寄せているのが韓国。青島市政府によると山東半島を訪れた韓国経済界の訪中団はこの春からだけでも10団体を超える。「ソウル・オリンビック前の8月はどちらを向いても韓国人だらけだった」(青島氏のホテル関係者)というほどだ。
 合弁士業の成約などの具体的成果はまたほとんどない、韓国との貿易量の拡大に伴い、山東半島の青島と韓国の仁川を結ぶ定期貨物船(パナマ船籍)が8月から修交した。
 山東省から民間訪韓ミッション出ている。この9月の訪韓の際は、大韓貿易振興公社(KOTRA)との間で貿易事務所の相互設置とフェリー開設でボウイ、近く具体化の見通しだ。
 中国も韓国のラブコールにこたえ、「ソウルまで飛行機で飛べば30分。北京より近い」
といったエールまで飛び出している。この4月ひそかにソウルを訪問、中韓接近の地ならし役を果たした劉古徳中国国際商会青島商会長は「韓国の対中経済交流の意気込みは想像以上だった。われわれもこれにこたえなければならない」と熱りぽく語った。東西対立の両極端にそれぞれ立っていた中国と韓国が交流拡大を図る時代がやりてさている。
 技術の日本頼りに
 とはいっても山東省が本当に頼りにしているのは高度な技術を時つ日本ではないだろうか。事実「韓国の工業化の経験を学ぶことも重要だが、われわれは日本からより多くを学びたいと考えている」(賈森青島市対外貿易委員会副主任)といった声をよく聞いた。その証処に、日本からの投資導入を加速させるため、中国は竹下首相訪中時に調印した投資保護協定に内国民待遇を盛り込むまで譲歩を示した。だが、山東半島をみる限り、日木企業は進出にまだ二の足を踏んでいるのが実情だ。(2021年4月アップ)