『今なぜタゴールか』〜タゴール生誕150年記念行事を振り返る〜 2012年5月1日  
 

Asato ma Sadgamaya
Tomaso ma Jotirgamaya
Mrityoruma Mritangamaya Ohm Santi

「虚偽より真実へ、暗黒より光明へ 我を導け」

タゴールが好んだウパニシャッド哲学の言葉です。この言葉には今の日本、世界の絶望的な現状を足元から見直し、自分たちの足で過去を見つめ、自然との共生を願うメッセージがあると思います。タゴールが初めて日本を訪れた1916年(大正5年)、横浜の三渓園で下村観山の「弱法師(よろぼうし)」(能の演目で、盲目の俊徳丸が梅花の下で見えないはずの落日の気配を描く)を見てタゴールは当時の植民地暗黒インドの現状とウパニシャッド哲学の世界を感じ、感動しました。タゴールはその絵を所望しましたが、原画でもあったのでそれを模写をすることになり、その絵を模写したのが私の祖父荒井寛方でそれがきっかけでタゴールから日本画教師として招聘されます。

今年2012年5月7日、151回目のタゴールの生誕日を迎えました。タゴール生誕150年記念会は予定の行事全てを無事終了することができました。ひとえにインド大使館、日印協会を初め大学、各団体、またご寄付は個人の皆様から貴重なご浄財をいただきましたお陰と感謝しております。何とか一年間活動を全うすることができました。皆様に厚く御礼申し上げます。

振り返ってみますと、疾風怒濤の1年でした。一昨年秋に三渓園でタゴール生誕150年を祝う集いをインド商工会が主催、日本在住のベンガル出身の皆様によるタゴールの音楽が催されました。それがきっかけで、何人かが集まり翌年の2012年にタゴール生誕150年の記念行事を行おうと集まったのですが、肝心な資金の支援団体が見つからず翌年つまり2011年昨年初めになっても定まりませんでした。そんな状況の中で我々の会も3.11の東日本大震災の直撃を受け、タゴール生誕の会を発足するかどうするか議論になりました。個人からの寄付は難しいだろう、生まれたばかりの資金なしの任意団体で何ができるのかと。

皆手持ち弁当のボランティアで始めましたが、こんな状況だからこそ必要と運営委員の皆の総意で始まりました。お金は無いが、勢いがある任意団体が生まれました。









それからは寄付のお願い、銀行口座の設定、何の行事をするか、段取り、係りの分担、皆必至でした。皆自分の仕事を持ちながらのボランティアですからアフターファイブ、土日をフルに使い、行事のために仕事を休んだこともありました。タゴールの力でしょう。
タゴール生誕150年記念会の過去一年間を振り返り、行事毎に簡単にまとめてみました。改めて秋頃に記念誌を発行したいと思っております。
2011年
6月28日
インド大使館にて「タゴール生誕150年記念式典」
インド大使、比良ICCJ理事長、Swami Medhasanandaらのお話の後タゴールの歌、朗読、踊り、合唱し震災で遅れていたタゴール生誕の式典を行う。式典には大使ご夫妻、各国大使、谷垣自民党総裁、セット元大使、日本女子大学、慶応義塾大学、武蔵野大学、日印友好に活躍されている各界の方々総勢200人ほど参加。当日はNHK BS放送ほっとアットアジアの取材があり、7月25日に放映。
7月10日 神戸、賀川記念館にて「タゴールの目指した美の出現」
講演:「タゴール哲学の現代的意義」精神のグローバリゼイションを求めて
    野呂元良 元コルカタ総領事 
    タゴール詩の朗読と光の舞:光の舞 板倉リサ・詩の朗読 大場多美子
7月23日 横浜、横浜印度商協会にて
講演:「岡倉天心とタゴールが求めた『東洋の理想』とは?
    岡倉登志 大東文化大学教授、岡倉天心曾孫 
シタール演奏:辰野基康、ベンガル人によるタゴールの歌
9月23日 渋谷、たばこと塩の博物館にて
  〜故我妻和男先生を偲んで〜 「故我妻和男とタゴール」我妻絅子
講演:「タゴールと荒井寛方、そして日本画「弱法師」(よろぼうし)とのつながり」
    河合力 タゴール生誕150年記念会代表 
    「インド近代画壇の形成とタゴール一族」
    小西正捷 立教大学名誉教授
タゴールの詩と音楽の世界
10月15日 横浜山下公園、ディワリ・イン・ヨコハマ
写真展示 「タゴールが生きた地、ベンガル」 
10月22日 三田、慶應義塾大学にて 
シンポジューム:「慶応義塾とタゴール」
清家篤慶応塾長の後セット元大使、臼田雅之、丹羽京子、外川昌彦らのナショナリズム、野口米次郎、岡倉天心等のお話、そしてアジャンタ・グプタ、リタ・カールらによるタゴール詩の朗読と歌。
約120人が参集
10月22日 横浜大倉山、大倉山記念館にて
10月22日から毎月1回、5回にわたるタゴールの詩の朗読講座、
幼稚園生、小学生、お母さんと一緒にタゴールの世界を体験
11月13日 栃木県さくら市ミュージアム荒井寛方記念館にて
「タゴール生誕150年記念展 『インドを描いた作家たち』」
日本在住のベンガルの人たち26人と同館にてタゴール歌曲と踊りを披露、文化交流を行う
インド大使館からクリシュナ参事官夫妻出席
*インターネットラジオ“ラジオニュームンバイ”とコラボしてタゴールの詩を朗読
http://radio-new-mumbai.com/
2012年
3月19日
国際文化会館にて
「タゴールから日本と世界へのメッセージ」〜タゴールの作品(詩・文学・絵画・音楽・舞踊)
を通じて〜
  国際交流基金から助成金、国際文化会館の共催を受け、タゴール国際大学(Visva Bharati)からニランジャン・バネルジー、ショスティカ・ボットパッタエ、アラップ・ミトラ、ナナック・ガングリの歌、踊りの教授、タゴールについての評論家等4人を招聘しシンポジュームを開催、奈良毅東京外語大名誉教授の総合司会の下、セット元大使、小倉和夫、岡倉登志、五月女智恵、康米那、神戸朋子、高良留美子、近藤正規、佐藤志乃、高山博子、コウシク・チョードリーらの錚々たるメンバーによりタゴールの詩、音楽、踊り、絵画の世界を披露。
4月13日 栃木県さくら市ミュージアム荒井寛方記念館にて
「タゴール 日本との出会い」写真展、インド大使館からパンダ公使ご夫妻出席
4月21日 目白、日本女子大学にて
「タゴールと日本女子大学」
蟻川芳子日本女子大学学長の後、臼杵陽、後藤祥子、内山真理子、鈴木千歳、高良留美子のお話、奥田由佳の歌、辰野元康のシタール演奏、そして日本女子大学付属高校ならではのタゴールゼミ生徒の発表。同時にタゴールの直筆の絵画・書、レコード、手紙等今回初めてのお宝を展示。
この行事を始める前にはタゴールって誰?と日本の同年輩以下の方々に忘れられた存在と感じていましたが、最後の場となった日本女子大学では多くの卒業生がタゴールを深く心に刻んでおられることに感激しました。この一年間を通じて色々の方々との出会いを感謝しております。タゴールはまだ日本で忘れられていないと、タゴールのメッセージ、自然との共生、東西の融和、そして平和(戦争の無いという意味と、心の平安、シャンティ)は日本、世界に今こそ必要でこれからもタゴールに学んでいきたいと思っております。

改めてこの1年間のご支援ありがとうございました。皆様のご健康を念じてご挨拶とさせていただきます。

タゴール生誕150年記念会 代表 河合力



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