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読者の声「移民受け入れで活性化を提唱した経済審議会」

1999年05月30日(日)
萬晩報主宰 伴 武澄



 04月14日付萬晩報「移民受け入れで活性化を提唱した経済審議会」には厳しい意見が多かった。どこの国でも観光目的以外の外国人の受け入れには保守的なものだが、萬晩報を読んで下さっている読者の中にもやはり、外国人の導入にはハードルが高いということなのだろうか。

 でもよく考えていただきたいのは、スポーツの世界では、もはや外国人なしには試合が成り立たないのが実情。大相撲でさえそうだということを先の夏場所は教えてくれたのではないだろうか。

 武蔵丸が横綱に昇進したことで、小錦が初優勝したときのことを思い出した。ドライでヤンキー気質かと思われた小錦が優勝杯をもらいながら涙をしたのである。長い間の精進を積み重ねるうちに、日本人としての気質まで吸収していたのかと少々感動した。

 外国人受け入れの議論では必ず、単純労働者が問題にされるのだが、単純労働者であってもやがて熟練し、いつかは指導的な立場に立つはずであるし、お金を貯めてベンチャー企業を打ち立てる可能性だってないわけではない。その子どもたちにいたってはますますその可能性が大きいのかもしれない。

 萬晩報は、人間を単純に知的労働と肉体労働に分けて考える立場には立ちたくありません。いまの日本ほど異質なものとの出会いを必要としている時はないと思います。


 ●移民受け入れは先進国としての責務
 いつも萬晩報を読ませていただいています。移民の受け入れは正規に受け入れる時期に来ていることに同感である。我が国の国民が日本が先進国であると自覚するのであれば、特にアジアからの移民を仲間として受け入れることは戦後50年たっても根強い日本に対する意識を改善するためにも有効だと思う。

 萬晩報が述べているように、日本国内で日本人と共に生活し、日本語を話し、日本文化を直に受け入れる人たちが増えればきっと長い目で見ればアジアの国々に今の日本に対する理解が浸透していってくれる要因になってくれると思う。

 さらに、今国内にすむ不法滞在者を含め移民が正規に労働すれば、納税し、年金を納めてくれるようになるはずだから、21世紀の年金政策に大きく影響するはずである。(移民が年金を受給するのは20年以上先でしょうから)(大越雅也)

 ●受け入れるべくは知識労働者
 発展途上国から労働者を受け入れるということは先進国の責務だとは思いますが、特殊技能や知識を持った労働者と、低賃金の単純労働をする人とは分けて考えるべきです。私は、低賃金の労働力を確保するために外国人を受け入れるということには賛成できません。

 低賃金の労働者を受け入れると、差別意識などが高まってしまうように思います。また、低賃金の労働者が増えても税金や年金など福祉の負担を担う人が増えるとは思えません。

 受け入れる必要があるのは、発展途上国のなかでもトップクラスの知識や技術を持った人々です。そのような外国人が大学の先生、会社経営者、医者、高給サラリーマンなどの高額所得の労働者として日本の国内に入り込めば、その人たちが福祉の負担を担ってくれると思います。

 発展途上国から来た大学生などに日本や米国で接する機会がありますが、選ばれてきただけあって一般的に日本や米国の学生に比べて優秀でやる気があります。彼らの中には大学や大学院を卒業して日本で働きたいと希望する人が多くいます。

 今の日本の制度では一部の人の受け入れは可能ですが、外国人が就くことのできるポジションは3年毎に更新しなければならいといった制限があって不安定です。また働くことのできるポジションが少ないために優秀な学生が日本に来たがらないという問題もあります。

 技術や知識を持った人々は低賃金の単純労働者に比べて日本人と接する機会もはるかに多く、異文化との交流が促進されるはずです。また、日本の平均的な人よりも優秀な人々との交流なら、外国人に対する差別意識なども少なくなるでしょう。(今は国の推薦を受けた人でさえアパートの入居を拒否されるという差別を受けます)

 また、トップクラスの知識や技術を持った人々が本国に戻れば、その国に対する貢献度も低賃金労働者よりははるかに大です。たとえば、米国では、韓国、中国、台湾、インドなどからトップクラスの人材を受け入れてきました。彼らは、米国内で活躍し、米国の経済や財政に多大な貢献をしているだけでなく、一部の人は本国に戻って本国の経済発展にも大きな影響を及ぼしています。

 これに対して、米国ではメキシコなど南米から低賃金労働者を受け入れてきましたが、低賃金労働者が本国の発展に及ぼした影響は韓国・中国などの場合に比べてはるかに小さいのではないでしょうか。

 中小企業の労働力不足の問題は、外国人受け入れと切り離して考えるべきです。中小企業などで低賃金のだれにでもできるような単純労働力が不足しているならアルバイトを雇えば良いのではないでしょうか。そのようなところでアルバイトがしやすい環境を作るべきです。たとえば失業者や退職者がそこでアルバイトする場合政府が補助するとか。(そう簡単には行かないかもしれませんが)

 また、熟練労働者や3Kなど皆が嫌がる仕事の人材が足りないならその給料を上げてそれらをプロフェッショナルの仕事とするべきです。その給料が日本人の平均以上になればそこに外国人を受け入れても良いと思います。

 このようにすると、結果としてプロ(熟練労働者)とアマ(単純労働者)の賃金格差は広がりますが、企業が支払う全体の賃金はそれほど変わらないと思います。

 私事ですが、中国から米国にやってきた友人夫妻が米国の市民権(国籍)を獲得したということで、明日、その祝いのパーティーに出席します。最近は、市民権を得るということが非常に難しくなっており、彼らが十数年の苦労の末に市民権を獲得したということが地方紙で写真付きで大きく取り上げられたそうです。

 また、今、別の中国から来た人の米国の永住権を取るための推薦書を書いています。今までは、それほど有名でないコックとか米国で博士号を取得し何度か学会に論文を出した人でも永住権がとれていましたが、今後は世界的な著名人や専門家団体の中でも抜きん出た才能の持ち主しか申請ができなくなるようです。

 外国からの人の受け入れに寛容と思われている米国でも、外国人が永住権や市民権を得るのは非常に困難な時代になってきました。(米国の南部の町より「雨漏り実験室」のチャ)

 ●なぜマイナス面についても指摘しないのか
 外国人労働者の積極的移民政策には反対です。ドイツの例を書いていますが、ドイツではトルコ系住民に対し帰国資金を援助してまでも帰そうとしていたはずです。それほど問題が大きく生じていたはずです。詳細なことは調べればすぐ分かるはずです。なぜマイナス面についても指摘しないのですか。

 知らないとすれば勉強不足です。故意に隠していたとすればこれも問題です。先進諸国も移民政策を積極的に受け入れているから日本も従うのがよい、という議論にはあきれました。国によって社会的背景、歴史、利害関係すべて違うのです。スイスではどのようにして外国人労働者をあつかっているか、調べてみてください。

 アジアのマレーシア(シンガポール?)も外国人労働者をどのように扱っているか調べてみてください。人権問題に発展するような事をしているのですよ。それほど自国を守っているのです。きれいごとだけでこの問題を書かないでもらいたい。(Eiyu Yshiki)

 ●日本人どんどん国外に出ていく方が世界の為には良い
 御無沙汰しております。毎回いろんな方面の記事を頂き楽しく拝見させて頂いております。今回の話に関して、私には非常に引っ掛かることがあります。

 御指摘のように日本は世界にも類を見ない単一民族国家だと思います。そのせいか外交が非常に不得手な民族でもあります。異文化に接したり異民族に接したりすることにより、日本人の精神レベルがより高次に成長する事は間違いありません。しかし、移民受け入れがそのまま世界の為になるかと考えると、違うような気がします。

 その根拠は、日本の中に見ることが出来ると思います。東北地方の人の出稼ぎが、東北地方の為になったのでしょうか。労働力を借りるとか移すという事は、それを持っていかれるところに対して補償をしていかなければならないのです。

 今の日本人が国境の壁を乗り越えて、そこまでの指導力を発揮できるのか。(私はそういう事が出来るかと聞かれると、自信がありません)

 単に日本の労働力不足の解消の為だけに、近隣諸国から搾取するだけでは、やはり将来日本が孤立してしまう原因になると思います。

 ここは、逆に日本人や日本の企業がどんどん国外に出ていくことの方が世界の為には良いのではと思います。これは、現在のような一時的な海外進出ではなく、その土地に自分の子孫を残すといる断固たる決意による海外進出です。それが本当の国際化だと思います。

 日本にいてアラブの人と親交があったからと言って、アラブ人の考え方が理解できるかというと、不可能だと思います。それは現地の気候・風土に触れて初めて分るものだと思うからです。

 うまく言葉に表すことも例を示すこともできませんが、短絡的な労働力受け入れは間違っていると思います。(Tiger)

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