HAB Reserch & Brothers


学校の教室から消え始めたごみ箱

1998年03月10日(火)
共同通信社経済部 伴武澄

 ●ごみ=ダイオキシン=ごみ箱なしの短絡的思考
 今年1月、京都で学校の教室からごみ箱が消え始めた。きっかけは焼却炉から発生する猛毒ダイオキシンだ。京都市の京都教育大付属中学では「先生のごみは業者が回収、生徒のごみは持ち帰る」ことになった。だから「ごみ箱なし」。あまりに短絡的な思考に驚いた。この動きはすでに全国に広がり、埼玉県羽生市でも4月から「ごみ持ち帰り運動」が始まるという。

 どちらも「環境教育の一環」と説明されている。これが教育なら、ねらいは「厄介モノはとにかく排除」という発想なのだ。何を隠そう。京都教育大付属は筆者の子供が通っている学校である。気が付いたときには遅かった。もう教室からごみ箱が消えていた。子供の話では公立でもなくなるらしい。

 いつも話題作りに頭を痛めている四国新聞(高松市)の論説委員に話したら、さっそく3月7日付朝刊の「一日一言」で取り上げてくれた。この友人によると「香川の学校にはまだごみ箱がある」らしい。逆に「分別収集の習慣を身に付けさせようとごみ箱の種類を増やした学校がある」との話だ。

 短絡的発想が全国的に広がっているのではないかと心配したが、まだ大丈夫のようだ。筆者はここらの問題には詳しくないので以下、「一日一言」の説明を引用させてもらう。

 ●一緒に分別に取り組む先生に教育を任せたい
 「『学校の焼却炉が危ない』と関西の消費者グループが指摘したのは二年前だ。その毒が強い催奇性、発がん性で知られるダイオキシンだったからパニックになった。子供と史上最悪の毒では確かにショックな取り合わせだ。焼却炉廃止の声はまたたく間に広がった。文部省も慌てて調査に乗り出し、昨年夏、学校でのごみ焼却の抑制・廃止を通達。反応が鈍いため、再度10月に各県教委、大学も含めて全廃方針を伝えた。ここから妙な話になる」

 「日本最初のごみ"箱撤去通知"を京都から取り寄せた。『文部省通達で焼却炉廃止』『生徒のごみは持ち帰り』の原則が書いてある。しかし子供の健康への心配や学校としての環境問題への取り組み、そしてごみ箱撤去の話は一切なかった」

 「しかしごみ箱は消えた。いま日本中の学校は二極分化しつつある。ごみ箱の消える学校と増える学校。できるなら、ごみ袋をさげて登下校させる先生より、一緒に分別に取り組む先生に教育を任せたい。今、全国で文部省通達に真っ向反対するのは久留米市長ら二人だという」

 ●切れがいい「一日一言」
 「一日一言」はなかなか切れがいい。「萬晩報」と同じで四国新聞一面下のコラムをほとんど一人で書き続けている。違うのは「萬晩報」がまだ2カ月であるのに対して5年にわたって続いていることだ。昨年「一日一言」が一冊の本になった。香川県だけで売っているのだが、7000部が数ヶ月で売れた。人口105万人の県であるから1億2000万人の日本全国で売っていれば80万部の実力であろう。

 香川県の人はあまり四国新聞を評価しない。しかし「一日一言」は別のようだ。一地方から日本を考え、世界を見るのがこの論説委員の口癖だ。紹介が遅れた。この論説委員は明石安哲氏という。ここのもうひとりの都村長生という客員論説委員については日をあらためて紹介したい。この人も香川から日本を変えようと考えている。

 トップへ 前のレポート 次のレポート


© 1998 HAB Reserch & Brothers. All rights reserved.