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【読者の声】職務に忠実なアメリカの高校カウンセラー

1998年03月07日(土)
共同通信社経済部 伴武澄

 02月27日(金) 「職務に忠実なアメリカの高校カウンセラー」に多くの反響いただきました。すべては掲載できませんでしたが、読者の声として紹介します。偏った見方だという考え方も少なくありませんでしたが、特に海外からたくさん反響をいただいたのには驚きました。インターネットの世界のすごさを見せつけられました。

 ●息子の名前と年齢を確認しただけで即入学
 17年前 英国はマンチェスターに赴任した時のことを想い出しました。一足先に赴任した私は3ヶ月後にやって来る小学校2年生息子のために学校を見つけておく必要がありました。隣人に近くの小学校を紹介されました。変な国だなと思いながら、電話で校長にアポイントを取り出かけました。女性の校長であることにまず驚かされましたが、「今後、数年間はこちらで生活することになるので息子を転校させる必要があるが、英語はまったく出来ない。 どうすればいいか」と尋ねました。
 難しい条件がつけられたりいろんな手続きの説明があるものと思っていたところ、息子の名前と年齢を確認しただけで即座に「当校で受入れよう」との返事がとびだしたのにはびっくり。日本では到底考えられないことだけに「懐が深い国なのだ」と感心したものでした。ただ 校長曰く「当校で日本人を受入れるのは何しろ初めてのことなのでどういう方法がいいのか、すぐには思いつかない。暫く考えさせてほしい」とのことでした。何日かして校長から連絡があり「宏樹(息子の名前)が来たら彼の面倒を見る友人をひとりつけることにしよう。近所に同い年の男の子がいるのでその子と同じクラスにいれることにする」とのなんとも親切な申し出でした。
 結局役所のようなところへは一度も足を運ばず、ちゃんとした書類すら提出もせずその後は息子を連れて学校へ行き「よろしくお願いします」と言うだけで、全ての手続きが終了してしまいました。アルファベットも知らなかった息子が大きな問題もなくイギリスでの学校生活をエンジョイし、英語の方もマンキュニアン・イングリシュ(マンチェスター訛りの英語)と言われるほど上達した。日本では到底有り得ない正に貴兄の言われる ”異なるもの”を受入れる度量 のお陰と同じ島国でありながらかくも懐の深い英国と英国人に対し改めて感謝の念が沸き上がってきました。【17年前マンチェスターに駐在】

 ●お尻をたたいた先生に感謝する親
   全くもって同感です。私は、現在、ドイツに研究留学中の身です。6才になる娘が、現地の小学校に通っています。ここデュッセルドルフには、日本人小学校もあります。いわゆる日本人村と称される地域もあって、日本人が生活するには、恵まれた環境でしょう。ここの教育システムもよくできています。私の娘は、全くドイツ語を話せませんでしたので、ドイツ語の補習クラスがある小学校に入学になりました。 電車(市電)で10分ぐらいのところにあります。授業料は無料。電車の定期も支給されます。私の娘だけではなく、何人か、同様の境遇の子供がいました。入学後もうすぐ半年になりますが、娘は、既に日常会話ぐらいのドイツ語を理解できるようです。日本が、外国人を受け入れるための体制作りをすることは、大切だと思います。
 しかし、教育だけの問題ではないように思います。 もっと大きく敷延して、社会そのものの閉鎖性について、論議しなければならない ような印象を私は持っています。教育だけのことをいうならば、教師の資質の向上を考えないといけないと思います。一例をあげましょう。ここドイツの教師は優秀ですし、しつけに関して、学校の先生への信頼感があります。私の娘は、外国人であることもあってよくいじめられていましたが、そのことを、担任に話したところ、対応は非常に敏速でした。現場をとらえて、相手を注意し、お尻をたたいていたそうです。これに対して、相手の親も担任の教師に感謝していたそうです。日本なら「自分の子は悪くない」と親がどなりこんできそうなものです。自分の子供可愛さに、子供をかばうことだけではなくて、何が正しいことなのか・・・ということをきちんと判断できているように感じます。私自身も、回りへの遠慮ばかりだけではなくて、きちんと主張することを日本に帰っても続けたいと思っています。 自分のためだけではなく、社会全体のためにも。【デュッセルドルフ在住】

●税金は、ほとんど、特に日本人のケアーにまわされている
 私は今アメリカの大学にいっていますが、確かに外国人生徒に対するケアーはしっかりしています。しかし一方で、アメリカ人の、それに対する反論もよく聞きます。記事にあったように、確かに彼女は厚いケアーを受けたのかもしれませんが、それにお金が支払われていないわけではありません。それらは全て、州民の税金から出されています。自分達の払っている税金は、ほとんど、特に日本人のケアーにまわされている、そう思っている州民も少なくありません。州によっては、日本人生徒を嫌う傾向にあるところもあるそうです。日本人は国へ帰れ、と。この記事は、そういうところへの配慮がないように思いますが。  個人的にいえば、完璧ではないにしろ、それなりに日本の教育制度もしっかりしているのではないかと思っています。随分一方的にアメリカの教育制度を判断しているように見受けられます。読者は、簡単に記事に書かれている事をうのみにします。もう少し多面的なものの見方をして記事を書かなければとても危険だと思います。

 ●日本の国際化は内なる度量の、懐の広さからうまれる
 私は中西部のアメリカらしい地方都市Indianapolis近郊に住むものです。日本の国際化は内なる度量の、懐の広さからうまれると信じています。日本のイジメ問題も、単に超ドメスティックな問題にとどまらず、国際化を阻害している象徴的な現象だと思えてなりません。教育の現場ではこれらの解決策は一朝一夕には見出されないと考えられていると推測しますが、無責任な物の言い方をさせてもらえば、いじめも、教育の国際化も、個々人の特性を尊重する、もっと単純に言えば、人と違っていることが自然だ、と考える基本さえ保持できれば、解決するのだと思います。そういう風土、環境が整えば無理に人と違えるための上っ面の突っ張りもその存在意義を失うでしょう。
 国家の発展を、国主導で押し進めようとした時代には、均一化されたおしなべて質の良い国民が最大の武器になったと思います。しかし、国家が経済の発展を主導できなくなりつつある現在、民間企業、大学、大学院の天才的な商品開発、基礎研究分野での大発見を抜きにして底硬い、力強い発展はありえません。人と違う考え方は自然だ、という概念が長い目で見れば個人の閉塞感を打破し、度量を広げ、ひいては国が真に豊かになり、異文化を受け入れる素地になると信じて疑いません。
 さまざまな問題を抱えつつも、不明瞭な部分が存在しつつも、日本に比べれば大人は正義を重んじ、フェアに生きていると感じさせるアメリカに住み始めてみて、日本の病んだ安易な官僚達の価値観が暗い影を子供たちにも落としていると感じ、取り止めの無い反応をしてしまいました【インディアナポリス在住】

 ●「人権」の尊重からスタート
 在米10年になろうとしている駐在員です。日本の教育制度は制度として集団で同一化した形で推し進めていくやり方でここの枠から外れるのを学校、先生方は嫌います。十人いれば十色、個性を尊重し能力にった教育が教室でされる様成れば中高生の間で起こっている大きな社会的問題もかなり解決されるのではありませんか。教育の中で知識を学ぶと同時に人格形成の為の対応が、家庭生活を通じて為されるべきと感じております。今の大きな中高生の社会的問題の責任は、彼らにあるのではなく私たち親の年代に責任があると反省しております。すべての根底には「人権」の尊重からスタートしていると思います。日本の教育制度は米国に学ぶべき点が多いと思います。【在米10年】

 ●日本で働きたい、日本で学びたいという夢を与えたい
 わたくしも3年前に3人の子供を連れてカリフォルニア州に転勤してまいりました。教育についてのご意見にはまったく同感です。こどもたちの学校だけではなくコミュニティのボランティアの方々が中心となり,近くの学校で夜間英会話の教室を開き、社会人を対象に能力に応じて3ヶ月20ドルくらいの参加費で外国人に英会話を教えてくれています。日本人だけでなくアジア、ヨーロッパ、中近東といったそれこそ世界中からきた人々がおり、教える側も授業を通じてそれぞれの国の文化を教わるわけで,これこそが真の国際化だと痛感致しました。 日本においては最近はだいぶ改善されてきましたが帰国子女教育はまだまだ問題点が多く残されています。
 「海外で働く」ことが国際人のごとくもてはやされていますが,その海外で働いた国際人が帰国後待ち受けているのは,その子供たちの教育の問題です。大学受験を教育の目的とする日本の教育制度のなかでは子供たちがせっかく外国で身につけた経験を活かす場がとくに公立学校のなかではほとんど見当たらないのが現状です。アメリカでは記事にもありましたようにどの学年でも受け入れてくれますが日本では帰国子女として高校入試を受ける以外は2年,3年での中途編入はできません。日本が国際化された国になるためにはより多くの外国人に日本で働きたい、日本で学びたいという夢と希望を与えることではないでしょうか。【会社員】

 ●クラスにフィリピンからきた子がいます
 まったく同感です。真の国際化とは”内なる国際化”すなわち我々日本人の島国根性打破にあると思います。アメリカのすごいところは”外国人”の定義が無いところだと思います。日本もやがてすべての人を受け入れるボーダレス社会になってゆくと思います。それでこそこれからの大競争時代に勝ち残ってゆく唯一の道であると思います。【サラリーマン】
 私は36才の男性で移民として米国の会社で働いています。日本人は私だけです。貴方の書かれた通りの事を日々痛感しており、自分でホームページなど作って掲載しようかと思い悩んでいた事柄をストレートに言っていただいて、読みながらとてもとても心地よい気持ちにさせられました。
 とてもよい記事でした。私は小学校の教員です。私のクラス(5年生)にもフィリピンからきた子がいます。この人は3年前にきましたが、当時はフィリピン人フィリピン人と悪い言い方をする子がいました。八木さんが体育のウエアー代そか払っていないというのもいいですね。日本の学校はお金がかかりすぎます。【小学校教員】

 ●外見的にも違う人間がそばにいても全く違和感を感じないNY
 日本は、鎖国政策の影響なのか、外部からの進入者を十把ひとからげにして遠くにおいておこうとする部分があるように感じます。海外とのコミュニケーションの歴史が浅い事が、その受容の自在性に歯止めをかけているような気がします。アメリカは、もともとが海外から、しかもさまざまな国からきた人間によって形成されてきた国なので、自分と外見的にも違う人間がそばにいても全く違和感を感じないのではないでしょうか。特に、ここNYではそれを感じます。留学生にとって観れば、特別待遇が少ない=アメリカ人と同じ土壌での内容を求められるわけですから、楽ではありません。しかし、裏を返せばそれはアメリカ人と同等の教育がなんどきでも受けられるという事。この国の懐の深さを感じている毎日です。【ニューヨーク佐藤】

 ●外国人の犯罪が増える背景を実は私たち日本人が作り出している
 私はボランティアの日本語教師としてNY州の大学に来ています。コネチカットのような外国人に対する特別な教育システムはありません。住んでいる人のほとんどが白人で、黒人、ヒスパニック系やオリエンタルは肩身の狭い思いをしています。この大学へは留学生も少なく、オリエンタルは7人。日本人は3人。地域での受け入れ態勢もまだ出来ていません。  アメリカ人と結婚してここに昨年引っ越してきたばかりの日本人女性がいます。御主人は牧師として教会で働いていますが、日本人の妻とその子供がいることで、ひどい差別を受けています。多くの人が教会を去って行ってしまいました。日本人を妻に持つ牧師をどうしても受け入れられないのです。  考えてみると、日本も同じですよね。アパートも「外国人お断り」のところがたくさんあります。実際に私が日本で勤めていた不動産の会社もそうでした。私のフランス人の友人が日本で仕事を探したいといっていますが、果してそれが彼女にとって幸せかどうか。もし仕事が本当に見付かったらどうなるでしょう。どこに行っても今私が経験しているのと同じように、奇異の目で見られるでしょう。東京ならまだしも、小さな地方都市にでも行けばなおさらです。彼女がそれをどう彼女の中で消化していくか。日本も早く本当の意味で国際化が進むといいと思います。
 実はここに来るまで、私自身は国際化に反対だったのです。外国人による犯罪が増加していますよね、とくに関東エリアで。ですから、どうしてもいい気持ちで外国人を迎えることが出来なかったのです。しかし、考えてみると外国人の犯罪が増える背景を、実は私たち日本人が作り出しているのかもしれません。【ニューヨーク日本語女性教師】

 ●アファーマティブ・アクションは逆差別
 アメリカの教育システムは大きな問題を抱えています。アファーマティブ・アクションはかなり大きな問題になっていると思います。カリフォルニアやテキサスでは廃止されました。逆差別であるという理由からです。本来マイノリティの教育機会を増やすことが目的でだったのに、アファーマティブ・アクションで大学に入った黒人学生は、授業についていけずに落第する人が多いという事です。アジア系の学生はだいたい黒人、白人よりも成績がいいのですが、アファーマティブ・アクションによってアジア系の学生の枠が決められているために、成績が良くても大学に入れないということがおきています。これでもアメリカのアファーマティブ・アクションは良いといえるでしょうか。
 アメリカのアイビーリーグには、「レジェンド」という制度があり、アイビーリーグ出身で、出身校に多額の寄付をしている親の子どもは他の学生よりも楽に大学に入れるのです。その数はアイビーリーグの学生の五分の一にも及び、それによってその大学に入れなくなる「成績のいい学生」の数はアファーマティブ・アクションによって入れなくなる学生の数よりも格段に多いのです。しかもこのレジェンドというシステムは、「親のアメリカン・サクセスストーリー」として公に認められているのです。このように、自分の利益になるレジェンドは認め、不利益になるアファーマティブ・アクションは認めないというアメリカ社会(白人社会)の教育システムは、日本より進んでいるとは全くいえないと思います。どちらも多くの問題点を抱えているでしょう。
 また、アメリカの教育システムでもう一つの問題は公立学校の質です。アメリカの公立学校(小中高)はその地域のプロパティ・タックスで運営されているため、地域の貧富の格差が学校の質の格差となって現れてきます。現在、ニューヨーク州のポツダムという小さな町の大学に留学しています。この町に住んでいる人はたいがい、貧しい人たちです。ここはニューヨーク州の中で最も貧しい地域です。たいがい日本人は裕福な地域に住んでいるため、質の高い学校に通っていたのではないでしょうか。もし記事の日本人がポツダムの学校に通っていたら、どうなっていたかわかりません。【ポツダムの留学生】

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