香港を代表する週刊誌である「Far Eastern Ecconmic Review」の新年号(Jan/8)は韓国新大統領に就任する金大中氏の特集「Now,Rule」を組んだ。経済欄ではピーター・ランダース記者が「Same Old Story-Japan flip-flops on measures to rescue economy」で、金融破綻をめぐる日本政府の矛盾を鋭く突いている。
「Same Old Story-Japan」というタイトルは、78歳の宮沢元首相が経営難に陥った金融機関への救済策で再び登板、10兆円の金融支援策を打ち出したことを皮肉ったものだ。NTT株など政府保有株を担保にしたこの政策は宮沢氏が蔵相だった1987年に打ち出した「NTT株式を活用した公共事業」とそっくりなので筆者も笑った経緯がある。以下は記事の要約である。
「1992年、首相だった時、10兆円(当時は800億ドル)の財政支出の投入を明らかにし、これで景気は大丈夫と強い自信を示した。しかし日本経済はいまだに回復していない。回復どころか7年前のバブル経済以降、最悪期に入っている。だが宮沢首相はギブアップしていない。その宮沢元首相が自民党の緊急金融対策部会に呼ばれ、金融破綻の防止のための"金融改革凍結策"を打ち出した」
「クリスマスイブに発表された自民党の金融支援策は13兆円(1000億ドル)で経営難の金融機関を救済するもので、大蔵省は自民党の圧力でバランスシートをドレスアップする新たな決算対策(アカウンティング・トリックス)を導入。地方銀行には4月1日からの早期是正措置の1年延期を決めた」
「宮沢氏が首尾一貫しているとすれば、それは痛みが来るのをなるだけ遅くさせようとする考え方だけだ。5年前、雇用を守ることが至上命令だった。今回は不良金融機関の自己資本をかさ上げするためにお金が使われる。問題は新たなプランが橋本竜太郎首相のビッグバンに矛盾することだ。その矛盾が証券市場を混乱に陥れ、それでなくとも暗い1998年の経済展望をさらに暗くしている」
「経済的停滞には確固たる政治的主導力が求められるのに、不幸にも橋本政権は二つの政策の間でまた割き状態にある。橋本首相のビッグバンは、まさに山一証券の倒産で結実したように財務内容の悪い金融機関を破綻させることだった。しかし、宮沢氏は弱い金融機関をつぶれないように支援しようとしている。ビッグバンはそもそも「官僚の裁量権」を取り上げることだったが、宮沢構想では預金者保護の名のもとに、17兆円の使途を再び大蔵行政の手に委ねることになる」
次の表は日本政府が現在、陥っているまた割き状態を如実に示している。
ON one hand | On the other hand |
弱い金融機関を破綻させる (橋本首相のビッグバン) |
13兆円の金融機関救済策 (宮沢構想) |
2兆円減税 (12月17日の橋本演説) |
緊縮財政 (12月25日閣議決定) |
経営内容の悪い銀行は破綻させるべきだ (12月26日梶山静六発言) |
金融機関はもうつぶさない (榊原英介大蔵省財務官) |
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