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ピリカとマリモ

1995年06月27日
四国新聞論説委員 明石安哲

ご意見はこちらへ 円はため息。ドルはじり貧。世界経済は一衣帯水でポンドもフランもマルクも不景気な話ばかり。欧州連合(EU)の新統一通貨エキュの受難も必然だ。ところでうわさの新通貨ピリカはご存じだろうか。

エキュは欧州の統一を目指すEUが採用を予定している新通貨の単位名。1997年実施の計画だったが、参加国の財政状況にばらつきがあり過ぎて、EU蔵相理事会は先週、計画断念を発表した。まるで船出前の座礁だが、バランスが悪いと船出しても転覆する。大海原に出るのは安定してからという慎重意見だが待ち過ぎてタイミングを失うという懸念もある。そこへいくと通貨ピリカは元気がいい。

ピリカは「美しい」という意味のアイヌ語。実は「まぼろしの北海道独立計画」の中で語られた通貨名がピリカだ。友人の記者が、中央の若手官僚と飲んだ揚げ句の放談を雑誌に掲載したのだが、これがなかなか面白い。道州制を提唱しても規制緩和もできない日本政府に期待できる訳がない-「いっそ国を作ろう」と話は始まった。「独立するならば北海道」。土地が広い。道路などインフラも良好、そのうえ4000メートル滑走路の空港がいい。為替レートは1ドル=500ピリカで1人当たりのGDP5000ドルなら国際競争力は抜群。お先真っ暗の乳製品、紙パルプ、炭鉱も生き返る。大統領制で札幌は経済の中心、首都は旭川、最高裁は帯広、議会は函館で三権分立。一極集中はない。

国語は日本語だが国旗はアイヌの神様のふくろう。国家はもちろんトワ・エ・モアの「虹と雪のバラード」。「補助通貨の単位はマリモだ」というあたりで酔いが回った。こんな話が冗談でなく国会議員の勉強会でも議論されているという。日本はそろそろ転換期だ。






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