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「風が吹けば桶屋が・・・」 21 世紀版

2008年12月21日(日)
公認会計士 田中 靖浩
 やはり恐れていたことが次々と起こり始めた。
 学生の内定取り消しだけでなく、従業員の解雇、そして企業の倒産。
 サブプライムローンに端を発する金融不安が世界中を揺るがしている。とうとう日経平均株価はバブル崩壊後の最安値を更新して6000円台まで下落した。

 もともと米国のサブプライム・ローンの焦げつきが事の始まりだった。この米国の不動産市場の問題が世界中に広がっている。

 かつて1990年代の後半、日本でも大手金融のいくつかが経営破綻するという金融不安の時期があった。しかし思い出してみると、あの時期の日本の金融不安はあくまで「日本の問題」であり、それが世界の経済・景気に悪い影響を与えるということはなかった。

 今回は様子が違う。米国の不動産・金融の問題が世界中に影響を及ぼしている。その背景には「世界の資本市場の国際化」という事情がある。

 現在の資本市場はIT(情報通信)技術の発展などによって高度にネットワーク化され、もはや「国際資本市場」と呼ぶべき状況だ。米国人の株主が日本の株を買い、また私たち日本人が中国やインドの株を買う……。こうした国境をまたいだ取引は当たり前のように行なわれている。投資の世界に国境はない。

 だからどこか1つの国で起こった金融不安が瞬く間に世界中に広がってしまう。米国で損をした投資家は、日本や他の国の株を売って穴埋めしようとするからだ。世界の資本市場が1つになったことで、確かに投資の世界では多くのメリットがあった。

 しかし、今回の事件では、資本市場が国際化されるデメリットが表に出てしまった感がある。いいことだけでなく、悪いことも世界中に広がってしまうということだ。

 それにしても、わが国を見渡す限り日経平均が最安値を更新したとは思えない平和な風景だ。人びとは当たり前のように生活し、夜はいつものように酒を飲んでいる。
 それでも少しずつ少しずつ世界の景気悪化の影響は出始めている。あのトヨタ自動車までも大幅な業績悪化が避けられない状況だ。

 業績悪化に加えて金融収縮、つまり世間にカネが回らない状況になり始めており、資金繰りがつかず経営破綻した会社のニュースが目立つようになった。特にここ最近、プチバブルと呼んでもいい好景気を謳歌してきた不動産会社の経営破綻が目立つ。

 内定取り消しをめぐる運と不運

 不動産会社に内定していたものの、会社が経営破綻して内定が御破算になったという学生さんと話をする機会があった。
 本人はかなり落ち込んでいたが、私は気にするに当たらないと思う。むしろ運がいいとさえいえるのではないか?

 そもそも「会社はつぶれない」などというのは思い込みにすぎない。人間の命に限りがあるように、会社にだって栄枯盛衰がつきものなのだ。会社だって運が悪いとつぶれる。

 そんな当たり前のことを身をもって学べたというのは、かなりの収穫だと思う。しかも会社に入る前というのが運がいい。会社に入って数年してから、本人の意に反して放り出されるのとはワケがちがう。

 この連載でもかつて「若いときにできるだけ失敗しておいたほうがいい」と書いたが、今回渦中の学生さんはまさに大いなる学びを体験できたわけだ。

 ただ、その失敗を将来の糧(かて)にするため、「どうしてその会社はつぶれたのか?」だけはきちんと自分なりに分析をしておいたほうがいいと思う。

 会社も人も同じく、見かけで判断をしてはいけない。派手な広告や本社ビルのきらびやかさに惑わされることなく、「本当の実力」を見分けるチカラを少しずつ鍛えないといけない。

 ――そんなことを内定取り消しの学生さんに話したが、あまり説得力はなかったようで本人はしょげていた。まあ「ここだ!」と思って決めた会社が破綻すれば落ち込むのもわからないではない。
 でも会社はそこだけじゃなし、ぜひ起死回生で頑張ってほしいものだ。
 いつの日かネタとして笑える日が絶対に来るから。

 メンターダイヤモンドから転載
 http://www.mentor-diamond.jp/ns/tanaka/guide14_1.shtml

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