加工食品の「表示」が「製造年月日」から「賞味期限(消費期限)」に変わってから12年になる。よく聞かれる質問は「賞味期限って誰が決めるの?」というものである。
編集仲間との会話である。
「名古屋で単身赴任だったとき、よく自炊もしたんだけど、消費期限をすぎた牛乳はよく飲んだ。多少期限をすぎたところで問題ない。食あたりになったなんて聞いたことないもんね」
「そうなんだよ。先日も日曜日にかみさんがいなくて冷蔵庫をあけたら期限が2週間前の焼きそばがあって、子どもに相談したら食べちゃえということで、食ったけどどうもなかった」
「やばいのは豆腐かもしれない。俺腹こわしたことあるんだよね」
多分、津々浦々でこんな会話は日常的に行われているのだろうと思う。
消費期限なんてものはせいぜいスーパーの店舗での話で、いったん消費者が購入してしまえば、あとは「野となれ山となれ」。自己責任の世界なのだ。
実は食品衛生法にもJAS法にも「賞味期限の」規定はない。食品衛生法施行規則の「食品の表示」という項目に「表示しなければならない」項目のひ
とつとして、添加物や原産地などと並んでいるにすぎない。つまり“一定”の加工食品には「賞味期限を表示しなければならず、期限の短いものは消費期限とし
て表示する」ことになっている。
細かいことで申し訳ないが。賞味期限は製造者が決めることになっている。「この加工食品の味について表示している期限内なら我社は品質を保証する」といった程度の話なのである。スーパーやコンビニでぜひ食品の表示を見比べると非常におもしろい。
輸入品であるプリングルのポテトチップスなどは1年後の日時が刻字されてある。缶詰なら数年後ということもある。国産のお菓子類は1、2カ月と
いったところ。先差万別なのである。「白い恋人」も「赤福」も賞味期限を偽装したことでメディアの批判の対象になっているが、おもしろいことにまだ実害の
報告はないのである。
ここらへんをどう理解したらいいのか。判断がむつかしいところである。
そもそも食品衛生法が生まれたのは昭和22年。戦後の食うや食わずの時代、口に入ればなんでもよかった。衛生観念はゼロといってよかった時代。
「食品の安全性確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止・・・・・・すること
を目的とする」(第一条)ため、占領軍の指令で施行された。当時は「賞味期限」などという概念すらなかったのである。
食品衛生法
食品衛生法施行規則
農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律施行規則
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