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チェコの大統領から学んだ地球環境問題
2007年03月29日(木)
Nakano Associates シンクタンカー 中野 有
アル・ゴア元副大統領が、キャピタルヒルの上院、下院の両方で地球環境問題に関する証言を行なった。公聴会の会場は、長蛇の行列と異常な熱気に包まれ、「キョウト」という地球環境のキーワードが頻繁に発せられたと聞いた。ゴア氏の人気は、オスカー賞を受賞した「不都合な真実」の影響のみならず、7年前の大統領選でブッシュ大統領に負けた後の地球益を求める行動への尊敬と次期大統領選への期待にあるように考えられる。
地球環境のために、具体的にどんな活動が可能だろうかと考えていた時に、チェコの大統領の講演から実に大切な地球環境のための身近なヒントを得ることができた。
これはチェコのクラウス大統領がワシントンのシンクタンク(CATO)で講演された時のひとコマである。
日本は森林と澄みきった湧き水に恵まれた実に美しい国であると、来日された時の感想を述べられた。たぶん日本人が一人もいない会場で、安倍総理が喜ばれるフレーズだろうと思いながら、またワシントンでわざわざ遠い日本のことを話されるとは、相当、日本をお気に召されたのだろうと耳を傾けていた。
続いて、九州で温泉に入って感動された話をされ、その後、フランス産のミネラルウォーターが出てきたのには驚いたと。こんなに水資源に恵まれている日本人がはるばるフランスから輸送されてきたミネラルウォーターを飲んでいることが、輸送費、エネルギーの消費を考えると、これこそ環境破壊だという話であった 。会場は、この話に湧いた。
単純に物流を考えただけでも、フランスから、ヨーロッパ大陸、大西洋、喜望峰、インド洋、太平洋とはるばる日本に入ってくるミネラルウォーターの付加価値は非常に高くなる。生産、販売を加えると、如何に無駄なコストとエネルギーを費やしているのであろうか。世界で最も水資源に恵まれた日本の新鮮な水を飲 まずに、フランスのブランドに惹かれ新鮮とは言えない水を飲み、それを地球環境問題と意識しなかったことに問題があるように思う。
地球環境問題のキーワードは、地球温暖化、砂漠化、酸性雨、オゾン層の破壊、熱帯雨林の破壊、生物多様性の減少などが浮かぶ。そして、地球環境問題の解決には、化石燃料から太陽熱、風力、エタノールなど代替エネルギーへの転換、ハイブレッドなど技術革新、クールビズなど服装の改革、国家や企業の二酸化炭 素削減の努力、個人による電気の節約などが考えられる。
チェコ大統領のミネラルウォーターの指摘は、意外と地球環境問題を考慮する上の死角になっていたように思う。身近にあるものを有効に活用する。これこそ地球に優しい活動だろうと思う。
地球環境問題を複雑に考えるより、実にシンプルに日本の新鮮な水を飲み、地元の畑や山でできた旬の野菜や果物を食べ、田んぼでできたお米を食べ、川や海で獲れた新鮮な魚を食べる。この先人が行なってきたことを忠実に守ることが、地球環境問題にとって最も賢明な生活習慣だと考えられる。
京都議定書の「キョウト」という英語は、ワシントンで頻繁に語られている。キョウト、イコール、地球環境問題にも繋がる。1月にスイスで開催されたダボス会議でも地球環境問題が大いに語られた。アル・ゴア氏もオスカー賞を獲得した。加えて、ノーベル平和賞への期待も高まっている。ドイツで開催される今年の先進国首脳サミットは、地球環境問題が重要議題である。このような流れの中で、来年のサミットは日本の番である。国際舞台で 難しいことを語るより、今、日本が地球に伝えるべきメッセージは、先人が教えてくれた地元で出来た季節のものを自然の恵みとして感謝して頂くということだろう。
なかの たもつ (ワシントンと京都を拠点とするシンクタンカー、専門は北東アジア研究、国連職員、米国立イースト・ウエスト・センター、ブルッキングス研究所などに勤務)
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