ワシントンにある民主党系のシンクタンク、Center for American Progressで開催された”The history and future of nuclear weapons”というセミナーに出席した。講演者のジョセフ・シリンシオン氏の構想は、イランの核問題に関し現状分析を超えた将来へのシナリオが明確に示されている意味において、新鮮な視点を感じ取ることができた。この構想からイラン問題への解決に向けたヒントが読み取れるので、セミナーの概要を踏まえイラン情勢を考察したく思う。
ブッシュ政権の支持率は30%、そして残す任期20ヶ月で、どのような有効な米国の外交政策の選択肢があるのであろうか。イランの核問題に関する米国の外交政策として、次の5つのシナリオが考えられる。現状維持、軍事関与なしで政権を変える、イランの核施設への軍事攻撃、大局的交渉(grand
bargain)、封じ込め建設的関与戦略(contain and engagement strategy)である。
第四、大局的交渉(grand bargain) 大局的交渉は、New American Foundation(ワシントンのリベラルなシンクタンク)のフュリン・レベット氏により提唱されている。核問題に関する外交的解決のためには、ワシントンとテヘランの効果的な和解を前提とする米国・イラン関係の再構築が重要である。具体的には、米国によるイランへの安全保障の保証を前提にイランが核開発を放棄するとの交渉である。
第五、封じ込め建設的関与戦略(contain and engage) 膠着状態を打開するためには、強制だけではだめで、また刺激策だけではイランの行動に決定的な影響を及ぼすことはできない。大局的交渉と比較し、封じ込め建設的関与政策は、国際社会との協調による効果的な封じ込め政策と、経済、政治、安全保障の刺激策としての建設的関与を交錯させた交渉を進めることにある。