人間は何ともぜいたくであきっぽい生きものです。1度目は大きな驚きをもって迎え入れたイベントも、2度目、3度目となると、あきがきてしまいます。イベントの鮮度が次第に失われてしまうからです。
昨シーズンに続いて2度目の開催となったプロ野球の交流戦が6月20日、全日程を終了しました。パ・リーグのロッテが2シーズン連続で優勝しましたが、大きな盛り上がりはありませんでした。
新聞やTVなどメディアが注目したのは交流戦の試合そのものではなく、今シーズン限りでの引退を表明した新庄剛志(日本ハム)の球場でのパフォーマンスでした。今シーズンの交流戦は、ドイツW杯の陰にひっそりと咲いていた花がしぼむように、静かに終わってしまいました。
この時期、メディアの最大かつ唯一の関心事はW杯でした。いや、W杯ではなくオーストライアに逆転負けし、クロアチアとようやく引き分け、ブラジルに大敗して1次リーグで敗退したサッカー日本代表の試合と、代表メンバー、それにジーコ監督の動向でした。
今シーズンの交流戦はW杯と同時期の開催になったのだから、メディアの関心、つまりは国民の関心がW杯一色になっても仕方がない。プロ野球関係者はそう考えていたのでしょうか。
しかし、彼らが本当にそう考えていたとしたら、彼らは極めて重要な時期と場面で、重大な責任放棄をしたことになります。今シーズンの交流戦は、2シーズン目の工夫というものがまったくありませんでした。
冒頭で触れたように、人間は何ともぜいたくであきっぽい生きものです。1年目には興奮をもって迎えられた交流戦も、2年目には交流戦の開催自体が当たり前ものとして受け止められてしまいます。そこに、W杯という巨大イベントが重なれば、興味が薄れてしまうことは、当然のことだといえます。
今シーズンの交流戦を見ていて、ある種の違和感をおぼえました。ファンが交流戦を望んだのは、「交流戦だけを見たいから」ではなく、「交流戦も見たい」だったはずです。しかし、この時期、ファンは交流戦だけを見せられました。
1か月以上も交流戦だけを見せられると、あきてしまいます。同じリーグ同士のカードも見たくなります。しかし、そんな当たり前のファンの望みは、交流戦が終わるまでは、お預けになってしまいました。
プロ野球関係者の中には、交流戦をオールスター戦前後に「2分割」で開催すべきだと主張する人もいるようです。しかし、筆者はこの考えには組みしません。オールスター戦後に交流戦を開催したのでは、ペナントレースの本来の目的であるリーグの優勝争いがかすんでしまうからです。
そこで、今回はこのコラムで、筆者の交流戦改革プランを提案してみます。名づけて、交流戦「混ぜご飯」方式です。あまりよく混ぜない混ぜご飯は、白いご飯も調味料やだしで味付けたご飯も、それにさまざまな具の味も楽しめます。この方式を採用しますと、ペナントレースは3つの段階を踏むことになります。
第1段階。3月末か4月初めの開幕から5月の連休までは、セ・パ両リーグともリーグ内の球団とだけ試合をします。この段階では球団もファンもリーグ内の位置取りが確認できます。
第2段階。5月の連休あけからオールスター戦前までは、同一リーグでのカードと交流戦のカードを交互に開催します。この段階ではファンは交流戦だけではなく、交流戦も楽しむことができます。球団にとっても、昨シーズンの中日や今シーズンの読売のような、交流戦による極度の戦績の落ち込みを回避できる可能性が大きくなります。
第3段階。オールスター戦後は同一リーク内だけのカードに戻します。これによって、第3段階はリーグの優勝争いに焦点をより絞ることができます。第2段階で交流戦と同一リーグ内のカードが消化できないのであれば、オールスター戦の開催時期を遅らせればいいだけのことです。それによって第3段階は、より短期決戦型のリーグ優勝争いが展開されることになります。
スポンサーの意向や日程調整など難しいことはあるでしょうが、ファンが望んだのは「交流戦だけ」を見たいのではなく、「交流戦も」見たいということだったことは確かです。プロ野球関係者は交流戦のあり方について再考すべきです。(2006年6月23日記)
成田さんにメールは mailto:narinari_yoshi@yahoo.co.jp スポーツコラム・オフサイド http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside
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