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一日神領民として参加した遷宮のお木曳き

2006年06月03日(土)
萬晩報主宰 伴 武澄
 5月6日、一日神領民となって伊勢神宮でお木曳き行事に参加した。

 昨年6月、木曽山中で切り出した神木を伊勢神宮まで運び入れて以来、7年後の式年遷宮に使う神木が次々と伊勢市に集まっている。125の社と鳥居すべてを建て替えるのに全部で1万本のヒノキが必要とされるから膨大な量だ。

 かつてこのお木曳きは江戸時代には神宮周辺の神領民たちの役務だったが、いまや20年に一度の祭となっている。今年と来年の5、6月、町内会ごとに奉曳団を組織して、お木曳きを競い合う。神さまを祀る神聖な神木を神社内に曳き入れる行事は神領民たる伊勢市民の特権となったが、前々回の遷宮から市民以外でも参加できるようになった。一日神領民という。

 神宮には天照大神を祀る内宮と豊受大神を祀る外宮とがある。外宮のお木曳きは「陸曳き」(おかびき)といって、3本の太いヒノキをお木曳き車に乗せ、宮川の河川敷から約2キロの道を曳く。

 筆者が参加したのは、二俣町奉曳団のお木曳き。180メートルの長さ2本の綱に約300人の曳き手が集まった。お木曳き車の上には入れ代わり青年が立ち、声を張り上げて伝統の木遣り音頭をうたう。曳き手は音頭に併せて、「エンヤー、エンヤー」と掛け声をかける。曳き手の気が高まると、真っ白い綱がぐるぐると回り始め、2本の綱の曳き手が綱ごとぶつかり合う。これを「練り」という。

 お木曳き車は2キロの道のりを4時間もかけて曳くことになるから、歩みは遅い。理由は50メートルごとに練りが入るからだ。かなり危険を伴うが、どうやらこの練りがエネルギーの発散になるらしい。20年に一度しか体験できないから、曳き手の気合はそれこそ十分だ。

 最後、お木曳き車は「エンヤー曳き」といって外宮手前の交差点からカーブを曲がって一気に境内に引き入れられ、お木曳きは終わる。

 7月になると内宮の「川曳き」が始まる、五十鈴川の流れを遡って内宮に納められる。お木曳きは来年も行われる。自分が曳いた神木が遷宮造営に使われ、20年間、人々の信仰の対象になるのだと考えると気持ちが高まる。

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