竹島海洋調査をめぐる日韓協議はきょう、日本側が海洋調査を中止し、韓国側も国際会議で韓国地名を提案しないという双方の譲歩で合意しました。本当によかったという印象です。日韓間がこれほど緊張したのはかつてなかったことだと思います。
かつてマレーシアのマハティール首相は「ルック・イースト政策」を打ち出しました。工業化に成功した日本と韓国に学べと国民を励ましました。アジアのその模範生同士がなぜ、対立し憎しみ合うのか。そんな思いがマハティール前首相の胸中にもあるでしょう。
日本はアジアの国々に先だって工業化に励みそれなりに豊かな社会を築きました。韓国もまた続いて先進国の仲間入りをしました。アジア・アフリカの国々でOECD入りを果たしたのは日本と韓国だけです。
日韓の間には歴史を含めて解決しなければならない問題が数多く残ります。その多くはいずれ解決しなければならない問題です。放置しておいていいということではありません。
ただ2006年という今日、問題の一つひとつを蔵の中から白日の下にさらして、あえて国と国の問題とすることで多くの火種を抱える必然性があるのでしょうか。
アジアの二つの大国が巨大なエネルギーをぶつかり合わせる予兆がここ数年台頭していました。われわれがここでお互いがぶつかり合って、エネルギーを消耗させるにはあまりにも大きな損失とはならないでしょうか。
日韓にいま、必要なのは対立ではありません。
日韓にいま、必要なのは憎しみでもありません。
日韓に暴力を持ち込むことなどは考えられないことです。
われわれに必要なのは先祖伝来から伝えられた叡智であります。
われわれは仏教を通じて慈悲という言葉も共有しています。
キリスト教徒が多い韓国では愛という概念も受容されていると思います。
世界には貧困や政情不安に悩む国々が多く残されています。
国家形成の途上の国々も少なくありません。
多くの民族を国境の中に抱え言語の意思疎通を欠くことはそんなに珍しいことではありません。
われわれに求められているのはお互いに叡智を出し合って、そうした国々の国づくりに少しでも役立つことです。国家のエネルギーを対立の場で消耗するのはあまりにもったいないことです。日韓のエネルギーは、他の国の利益となる協力の場で燃焼尽くされなければなりません。
日韓の対立がいますぐになくなるとは考えられません。
日韓のわだかまりが明日なくなるわけでもないでしょう。
しかし、日本の多くの人々が韓国を嫌っているわけではありません。
韓国の多くの人々もまた日本との関係をあえて悪くしたいと考えているとも思えません。
そう20世紀末まで、世界で一番高い建物だったクアラルンプールのペトロナス・タワーは日本と韓国の建設会社が一つずつ建設しました。ペトロナスの日本のタワーは空中廊下で仲良く手をつなぎあっています。
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