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【トビリシに来たニーナ9】モスクワから来たナターシャ

2005年07月18日(月)
ギターボーカリスト 兵頭ニーナ
 もうすぐグルジア正教会の復活祭がやって来る。日本の盆と正月を一緒にしたくらいの大事な行事で休みを利用してお里帰りをしたり親類、親兄弟と行き交ったりする。

 お店もだいぶ閉めるらしい。私も母と日本で住んでた頃は毎年の復活祭が我が家の最大行事だった。3、4日も前から大掃除を始め、ご馳走をつくり教会に持っていく卵に色をつけ特別のパンを幾つも焼いたものだ。母は料理が好きでお客を招くのが好きだったから、いつもたくさんの料理を用意し、そして復活祭が終わると残りものを家族が片ずけるのが常だった。まあ日本のお正月とさほど変わらない。

 ヴィクトリア家には一週間の滞在予定でモスクワからナターシャがやって来た。ジャーナリストだったフランス人のご主人は、残念ながら7カ月前に亡くなったそうだ。70歳と聞いてたけどそのスタイルの良さといい顔の若さといい、とてもとてもその齢には見えない。旅行先の空港でたびたび「貴方は年齢を偽っていませんか? なにかパスポート以外の証明書はありませんか?」と聞かれ年金証書を見せたら驚きながら納得したそうだ。

 超美人の上パリに長く住んでパリ仕込のセンスを身にまとうナターシャを女優と紹介されても誰も少しも疑わないだろう。「今どきはロシアの女優や歌手は整形手術はもう当たり前、でも私は幸せなことに自然のままよ。手足の長いのはお父さんからの贈り物」と自慢ばなしも嫌味にならない。

 同じ年齢のリューバ母さんはかなり刺激を受けていつになく小奇麗にしている。ジャーナリストの妻らしくフランス語はもとより英語もぺらぺらでロシア語も怪しい私とは英語交じりで会話する。ある日、私が練習でギターを弾いて唄ってるのを聞いてすっかり気に入ってくれたらしく「ねえニーナ、私のモスクワの電話番号知ってる? 今教えるから書いておいて。いつか必ず遊びにいらっしゃい!」と誘ってくれた。

 モスクワかーもう15年も行ってないなー「チャンスを作って、ぜひぜひ行きたいと思います。ナターシャ有難う!」

 若さの秘訣なのかナターシャは毎日決まった時間に起き、朝食はコーヒー一杯ととカッテージチーズにジャムを添えたのをほんの少し食べてそれで終わり。それから念入りにお化粧を始め、お洋服選びも大変だ。

 「これはイギリスへ行ったときに…これはイタリアで…パリで…」。と、とめどがない。そういえば1週間の為のトランクの大きい事! 着いた当日出した5足ぐらいの靴は全部ヒール付きだった。一度履いたら寝るまでそのままなので、疲れないのかなーと感心する。いろいろ話をしたら若い頃にやっぱり女優をめざし少し学校も行ったらしい。だから仕草ひとつも絵になってるのかな?煙草を持つ時のナターシャと、笑顔一杯で相手の顔から目を離さずお話する時のナターシャは最高に綺麗だ。

 今は実生活の中で女優を演じているのか? 絹のガウンに着替える時に洋服は勿論すべての下着を脱ぎ捨てる。そこではじめてこれも持参の上履きに履き替える。

 しばしみんなと談話して煙草を一服、それからいよいよベッドに入る時「ごめんなさい!私若いときからの習慣なので…」とガウンをも剥ぐ。

 わーお!一糸まとわずか…マリリン・モンローみたい!。

 別にかまわないんだけど…よく寒くないこと…私などまだまだ長袖のパジャマなのに…とただただ感心するばかり。

「ナターシャはとっても綺麗で素敵な女性だけど子供を持ったことも無かったし、ちょっと自分の年齢を忘れちゃったのかも知れないわね!」とヴィクトリアの鋭いご意見。



 ニーナにメール mailto:nina2173@v7.com

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