TopPage
 Yorozubampo Since 1998
サイト内
ご意見 無料配信


ガイヤという名の故郷の祭り

2005年06月29日(水)
早大政経学部4年 藤田圭子
 日本全国、夏祭りの季節となった。祭り好きの私には、毎年楽しみにしている故郷の祭りがある。宇和島和霊大祭、宇和島牛鬼(うしおに)祭り。7月22日から24日までの3日間、宇和島を舞台に繰り広げられる祭りの名前だ。2つの名前を持つこの祭り。名前が分けられているのは、神社のお祭りと市民のお祭りの日程を同じ3日間に合わせたからと聞く。

 本来の祭りは宇和島伊達家家老の霊を慰めるための和霊大祭。また、海の祭りとしても古くから賑わってきた。私の両親が幼い頃の楽しみといえば、この和霊大祭だったと聞く。祭りになると、船に乗り合わせて宇和島湾へ行き、祭りの間は、丘に上がったり、船中で寝泊りして、楽しんだのだという。

 私が知る限りでは、そこまでの賑わいは失せてしまっていた。しかし、この数年で又、息を吹き返しつつある。特に高校生くらいの子どもたちが、この祭りを楽しみにするようになっている。私も宇和島の何を誇りに思うかと言われると、この祭りを挙げる。あれだけ多くの人の笑顔に出会えるのは、宇和島ではこの祭りが最高の機会だと思う。普段は閑散としてしまった宇和島に、熱気があるのが何よりも嬉しいのだ。

 この3日間を大まかに分けると、初日がガイヤ・オン・ザ・ロード、2日目が宇和島音頭、3日目が祭りのフィナーレを飾る走り込みだ。若い人たちの人気を集めているのは、この初日に行われるガイヤ・オン・ザ・ロードである。通称「ガイヤ」。ガイヤとは地元の言葉で、「スゴイ」というニュアンスを含んでいる。(しかし、この言葉の持つ意味はとても広く、私には標準語に置き換えることはできない。)

「ガイヤ」の曲は、宇崎竜童氏に作詞作曲をしていただき、振り付けはピンクレディーなどの振り付けで活躍されてきた土井甫氏によってしていただいたもの。土井氏は同市にある高校の出身者でもあるそうだ。完成したのが平成元年。歌詞の随所に方言が組み込まれている。今年で17回目を迎えているが、年々、賑わいを増している。

 普段は閑散としている商店街のアーケードに多くの人々が集まり、その真ん中を踊りながら進んでいく踊り手たちに熱い視線を注ぐ。ガイヤが始まる5時頃から少しずつ人が集まり始め、クライマックスを迎える11時頃には異常な熱気に包まれている。土井氏によって基本的な振り付けがなされているが、振り付けの変更は認められているし、衣装も自由であるために、参加チームによって全く別のダンスを見ることができるために観客は飽きない。私も高校1年のときに1度だけ踊ったことがある。多くの視線が心地良かったのを思い出す。

「ガイヤ」の歌詞には、“太鼓にうかれて”という部分があるが、ガイヤにはダンスだけでなく、太鼓もバックミュージックとして祭りに参加している。私もダンスを踊った翌年から2回は太鼓の叩き手として祭りに参加していた。小学生の頃から、休み休みではあっても続けていた竜王太鼓のメンバーとしての参加だった。太鼓はガイヤの始まりから終わりまでの6時間ほど、祭りに参加することができる。踊ることも好きだけれども、太鼓(オケ)を抱えて、バチを振り、リズムに乗ることが好きだった。6時間、休憩らしい休憩も取らず、バチを振り続けた。終わって気付けば、履いていた地下足袋はもう使い物にはならなかった。それくらい熱中できる祭りだった。

 ガイヤは若い人の注目を浴びるが、どの世代にも人気があるのは最終日の走り込みではないだろうか。場所は、ガイヤ、宇和島音頭と賑わった商店街のアーケード街から、祭りの本拠地、和霊神社へと移る。

 和霊神社の前を流れる須加川を舞台に、走り込みは行われる。川面には1本の御神竹が立てられ、その竹が見え易いところを求め、観客は暑い中早くから場所取りを行う。汗を掻きながら待ち続け、夜の闇が少し深まったところで、先ずは仕掛け花火が観客を楽しませてくれる。

 そんな仕掛け花火が終わる頃、川面に太鼓の音が轟く。そして3体の神輿が川下から上ってくる。この神輿は、お日様の高い時間に市内を回り、船に乗っていたもの。夕方になり丘に上がってきて、川下から和霊神社を目指す。その神輿を松明を持った人が先導する。その灯りが見えるのを私たちは心待ちにしているのだ。

 待ちに待った神輿が私たちの前を通り、男の人たちが御神竹の周りに集まり始める。そして、開戦。川面に立てられた御神竹の先端には、白いお札がつけられている。このお札目掛けて合戦が始まるのだ。長い竹によじ登り、火花を散らせる。その一つひとつの光景に観客がどよめく。そして、お札が一人の手に握られ、3日間続いた祭りは幕を下ろす。

 観客も参加者も来年の祭りを楽しみにして、最後の夜を過ごす。故郷の祭りが、年々賑わいを増すのは本当に嬉しいもの。この4年参加できていないが、次こそは・・・と願いつつ、今年の祭りもインターネットでの実況中継で楽しむことに決め込んでいる。

 藤田さんにメールは mailto:yusukko@cf7.so-net.ne.jp

TopPage

(C) 1998-2005 HAB Research & Brothers and/or its suppliers.
All rights reserved.