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王滝村が突きつける直接民主主義の挑戦

2005年06月25日(土)
萬晩報主宰 伴 武澄
 長野県南相木村の色平さんから「長野県木曽郡で直接民主主義実現へ」という刺激的なメールをもらった。23日の王滝村の村議会で「議員定数削減」と「村民総会設置」の二つの条例案が提出されたという。

 市町村合併で100人を超える議員を抱えるようになった自治体がいくつも出現した。そんな矛盾に真っ向から問題提起した王滝村の人々の勇気に拍手を送りたい。

 以前の萬晩報に書いたこともあると思うが、日本のマスコミの限界はこうした小さくもきらりと光るニュースが県境を越えないところにある。

 総会設置条例案は、町村議会を置かずに、有権者の『総会』を設けることができるとした地方自治法94条の規定に基づく。信濃毎日新聞によると「条例案は、村民総会は18歳以上の全村民を構成員とし、定例会を年1回開催、半数以上を定足数とし、報酬は支給しない」。

 まず日本の地方自治法にそんな規定があったことに新鮮な驚きがあった。六法全書を取り出して地方自治法を読んでみるとあるある。「町村は議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる」のだ。

 過去に住民総会を設けた村はあるそうだが、もちろん現在はない。そもそも小さく貧しい村で「生業としての議員」が必要なのか疑問だ。人件費だけの問題ではない。選挙にだってお金がかかる。小さな共同体で行政と議会という二つの機能が不可欠とは思えない。

 王滝村は平成の市町村合併で近隣町村と合併できず、村営スキー場関連の多額債務を抱えて財政再建団体への転落も予想される状況なのだそうだ。村議会の今回の提案は、「定数を削減せず、チェック機能も果たしていない」として、住民グループが村議会解散を請求していることに対する危機感の表れでもある。

 民主主義における議会はもともと、イングランド王へのチェック機能からスタートした。その後、法律や条令を提案する機能を付加された。議会が本来の機能を果たしていないという住民の不満はなにも日本だけのものではないと思う。

 平成十三年十一月二十七日の衆院総務委員会でおもしろいやりとりがあった。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/
009415320011127012.htm

 社会民主党の重野安正氏が市町村合併に関して直接民主主義と間接民主主義の問題に対して片山虎之助総務大臣に質問しているので参考にしてほしい。

 どうやら「住民総会」は明治憲法下で多くあったため、戦後の地方自治体にも残さざるを得なかった制度だったらしい。

 この総務委員会のやりとりの最後に片山大臣はおもしろいことを言っている。「ITがずっと進みまして、インターネット、オンライン時代になるんですよ。そういうことになるときに、市町村の住民の意思を直接聞いてみよう、そういう制度ができれば、町村総会は形を変えて生まれ変わってくる、私はこう思います」。

 戦後、日本は間接民主主義を旨としてきたが、本来、民主主義は直接住民の意思を問うところからスタートした。平成の市町村合併では多くの自治体が「レファレンダム(住民投票)」を行った。これはまさしく住民総会の「変形」いな「原型」なのである。

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