寝室の窓は南向きのようだ。開けるといきなり車の騒音が激しくなる。ここは裏通りだけど三車線の一方通行を走り行く車がとても多い。マルシュートカと呼ばれる乗合マイクロバスもよく通る。両側の歩道のプラタナスはどれもひと抱えもふた抱えもありそうに立派でかつ4階の窓からでも首を曲げて見上げるほどに高くそびえている。
窓を開けて目に飛び込むのは半分がプラタナスの葉っぱの緑ってとこだ。
それから向かいのアパートの窓、窓、窓が左右に広がる。少し身を乗り出すとやっと車や人が見える。そうだ、パンを買いに行かなくちゃと思い立った。下に降りて外に出るといつもの花屋が左手の角いっぱいに店を広げている。というか歩道の半分以上も陣取ってバケツや筒に花をさして売っている。
チューリップ、薔薇、すみれ、ヒヤシンス、柳、クリスマスローズ、カラー、ガーベラ、杉の葉等など種類は多くないけど温室育ちには見えずすくすくとたくましくと育った感がある。一束2〜5ラリ(120円〜300円)と安い。
今日は花は眺めるだけにして角を曲がって50メートルほど先、半地下にあるパン屋にむかう。鉄格子を横に2本張った小窓からちょっと身をかがめて「プリ パジャールスタ」と言って50テトゥリ(30円)出すと焼きたて熱々のプリをそのまま渡してくる。紙の一枚も無いのには最初驚いたが、もう慣れたもので過剰包装よりマシかもと思うようになった。何も言わず指を1本か2本立ててお金を渡してもOKだ。だって「プリ」しか焼いてないんだから。
ところでこの「プリ」始めて見た時、あっ!これってインドのナンそっくり!(2年程前、行徳のインドカレーにすっかりはまりよく食べたものだ)長さ50cmぐらいありそうで変形のひし形をしてる。この周りは食品を並べた小さな店がやたらに多く、たいてい幾種類かのパンもあるけど焼きたてはここだけだ。正しくはショーティプリと言うらしい。
何度か買いに行くうち中をよくよくのぞいたら左手前に大きなタンドール(土釜戸)があるのが見えた。(タンドールというかどうかわからない)やっぱりプリはナンだなー、シルクロードだなーふむふむと一人うなずいた。
トビリシに来て1週間、変圧器が手に入らずノートPCがまだ使えない。
頼りにしていたイサトがフランスに行ってるのでPCの分かる人が誰もいない。
日本出発にあたって色々助けてくれた皆さんに一報入れたいのだが電話代がかなり高いらしいので遠慮している。
まあ慌てることもないので彼が帰るのを待とう。今や電話するのもどこかへ出かけるのも日本と同じという訳にはいかないのだ。
むろん近所のマガジン(店)にはよく行くのだが食品一般がとても安いのでうれしくなる。昼過ぎ、突然運転手のエムザリと変圧器を買いに行く事になった。
車で20分程、にわかに人と車が混ぜんとした広い場所につきクラクションがビイビイバアバアとうるさい。4、5人のポリスマンが流れを調整してるようだがもはやどうでも良いらしくだれている。こんな所だけど大丈夫? 僕だけ行こうか? とエムザリが気を使ってくれたが、冗談じゃない! こんな面白そうな所、好奇心いっぱいの私が行かいでかと車を降りる。
御徒町かアメ横みたいな雰囲気だが電気街らしく小さな店が迷路のように続く。危ないことが多いからと聞いていたので細心の注意を払いながら5、6軒聞いてまわったがどうも変圧器は無いらしい。表の露店は更に小さくテーブルひとつに新品から錆びたのまで種々雑多なもの(釘、ネジ、はりがねetc)を並べてる。首から画板みたいなのを吊り下げライターやボールペンだけ売る人もいる。蚤の市みたいだ。
「ニーナさん、僕朝から何も食べてないんだ。。おごるから何か食べよう」と売店を覗き込むエムザリ。ピロシキが売り切れてたので揚げ立て熱々のチェブレキにした。10センチ四方ぐらいの平ぺったいパンの中に挽肉が入っていてとてもおいしかった。お腹がポッコリ出たエムザリは私の3倍ぐらいのチーズ入りのハチャプリをあっという間に平らげコーラを飲んだ。うーむ、コーラはどうもねえ。お茶かコーヒーでも欲しいところだが揚げるのが間に合わないほど次から次と売れてるのを見るとお茶など作ってられないのだろう。
そういえば自動販売機など見かけないなあとふと思った。
少し走って別の電気店にも行ってくれたが駄目だった。残念!
今日は約束のてんぷらパ−ティがあるので隣のマーケットに入りうちの近所で見かけなかったかぼちゃとクラピーワの葉(大葉そっくりだけど匂いはない)を買って帰った。
初めてのクラピーワのてんぷらは思ったよりおいしくてみんな喜んだ。グルジアではどんな料理にするのかと聞いたら、意外にもスープだと。今度はリューバ母さんスープを作ってくれるそうだ。どんな味か楽しみだな。
ニーナにメール mailto:nina2173@v7.com
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