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地方の工夫が国の財政を救う! Part1
〜長野県栄村現場レポート〜


2004年11月27日(土)
構想日本政策スタッフ 伊藤 伸
 ●「お金」はいるが「補助金」はいらない!?

 「三位一体改革」や「補助金3兆円の削減」という言葉がたびたびマスコミ等で取り上げられています。その多くは、国と地方との間の、お金の取り合いのような報道ぶりです。しかし問題の本質は、「補助金」の背後にある国のコントロールをいかに取り除くかです。

 これまで国は、補助金や交付税をえさにして、地方をコントロールし、そして、地方はこれに依存してきました。その結果、地方はどこも同じ"金太郎飴"になり、必要のない行政運営の積み重ねで、膨大な財政赤字が積み上がりました。

 しかし、その中で危機感を持って行政を運営し、お金がないからこそ工夫が生まれている村があります。この村の取り組みを2回に渡って紹介します。
 
 ●長野県栄村 〜現場は改革のアイデアの宝庫!〜

 長野県栄村の高橋彦芳村長は市町村合併をしないことを宣言し、以来、村が持続可能な行政運営を行えるように、行政コストを削減し、ユニークな政策を行っています。

 それらの政策の中で、補助金をもらわずに(国の関与なしに)行っている村独自の道路整備とは、どのような中身でどのくらいのコストで行っているのかを、栄村で現地調査しました。そして、補助事業との比較を試みました。

 ●村長の思い、村民の反応

<高橋彦芳村長>
「国は農山村でも都市並みの村づくりをやれと言ってきた。そのためのカネは交付税と過疎債。これは『本物』ではないと思いながら大バカになってやってきた。しかし、官のつくる公共事業のモノサシは栄村のような山村には全く合わない。暮らしの知恵を活かしながら、栄村らしく生きていくことが必要」

<広瀬房子さん(薬局経営)>
「(栄村独自の政策によって)視察が増え、村全体が引き締まって良いと思う。若い人が少なくなって村が続いていくのか不安だけど、今は私のような高齢者にとってはとても住みやすい」

 ●道直し

 国の補助を受けない村道や農道の改良事業。村の予算と受益者負担(用地費の3割、材料費の25%を集落で負担)で行い、村の臨時職員が施工します。

 村道が国庫補助の対象になるには道路を2車線以上にするなどの条件がありますが、集落内の生活道路は機械除雪が行える幅(3.5m)さえ確保できれば良く、国庫補助の対象に合わせた規格にするとかえって高くつくため補助事業では行っていません。

 具体的に見ると、栄村の道直しは整備距離1m当り約1万9000円。それに対し国の道路構造令・補助基準に従った場合は、建設会社へのヒアリングによると約11万1000万円かかります。簡易な道路整備であれば、栄村は通常の1/6のコストで行っていることになります。補助事業で行うと50%の国庫補助がつきますが、それでも栄村独自で道路整備を行う方が負担額は1/3になるのです。

 補助事業の場合、国が一律に決めることで「どんな地域、状況でも問題ない」よう基準が決められ、多くの場合過剰な仕様になり高くなってしまいます。栄村の道直しは、国が決めた基準(道路構造令)に従わなくて良いため、国や県への報告するための設計や測量にかかる費用が不要になったり、原材料費が安くすむことが大きな原因です。特に原材料費は、道路構造令や補助基準に従った場合に比べて、栄村の道直しの方が1/14にも削減されています。
 
 以上のことからも、車道や路肩の幅など、現場の必要性と判断、責任をもっと生かすべきだと言えます。全国でこのような工夫をすれば、税金の無駄使いが相当減るのではないでしょうか。

 ●「道直し」以外の栄村の創意工夫による主な事業

「田直し」:補助基準に満たない小さな田を拡大する事業。農家と村が10アール当り20万円ずつ負担し、その費用の中から機械、作業員(1名)の費用を賄う(1時間8500円)。

「下駄ばきヘルパー」:村が講座を開いて160名のヘルパー資格者を作り、集落ごとに班を作って介護サービスを提供。農山村部特有のコミュニティーを生かした手法。村の雇用拡大にも寄与。

「雪害対策」:冬期間、雪害対策救助員を15名雇い高齢世帯の屋根の雪降ろしを行う。申請に基づいて民生委員が審査、無料と有料に分け村長が決定。

 ●最後に

 栄村で行われている政策は、これまでマスコミ等で「国からのお金はなくても行政運営ができる」として取り上げられることが多くありました。しかし実状は補助金をもらうことのできない事業、あるいはもらうとむしろ高くつく事業を、いかにして低コストで行うかを追求して生まれたものであり、冒頭にも述べたように現行制度の中で「国のコントロール付きの補助金は無駄も多いし、要らないが、お金は必要」なのです。このことに留意し、今後このような努力している自治体が報われる仕組みを早急に作らなければなりません。

<栄村基礎情報>
【人口】2604人 【世帯数】905世帯 【面積】271.51平方キロメートル(内、山林原野が93%) 【H16年度当初予算】30億1700万円 【特徴】年間140日間は根雪があり、JR沿線での日本最高記録がある豪雪地帯。新潟と群馬の県境に位置する。

 本稿は構想日本のメルニュースから転送しました。

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