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ブルッキングスにワラジを脱ぐ中野有君へ
2002年09月01日(日)
システム・コンサルタント 大塚寿昭
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萬晩報の常任執筆者である中野有君の壮行会に出席した。彼はワシントンのブルッキングス研究所へ9月から客員研究員として赴任するという。世界のフリーターを名乗る彼が、また一つ職歴を増やすことになる。北東アジアを学び、和を唱える彼が何を吸収し、何を置き土産にしてくるか、それが楽しみである。
ただのTexan boy(テキサス小僧)だった「若」がブッシュ組2代目の跡目を継いだが、その内部では武闘派と穏健派の対立が鮮明になりつつある。ブルッキングス研究所は、その外交政策に大きな影響力を持つ米国有数のシンクタンクである。米国の外交政策の決定過程で何がどう議論され、そして表の政策として発表・運営されていくか、体感できる距離に居て知ることができるのは幸せなことだと思う。
中野君の出発直前になって小泉訪朝決定が発表された。発表直前に来日したアーミテージ国務副長官の慌てぶりから見ても(小泉首相との会談は極秘にされた)、この小泉・金正日会談は日朝双方のイニシアチブで始まったもので、決して米国主導ではなかったのだろう。中野君は着任早々に研究所内外からの質問攻め、議論責めに遭うのではないだろうか。
萬晩報2002年7月12日号で中野君は「アメリカのシンクタンクが万能薬を持っているとは考えられないが、日本の優れた分野と欧米や世界各国の優れた分野を融合させるという発想も重要だ。日韓共催のワールドカップで、日本のサポーターのおおらかな態度が世界に高く評価された。恐らく世界で稀なる日本の優れたところは、闘争心より「柔能く剛を制す」というおおらかさである」と語っている。
この精神を植え付けるチャンスが着任早々にやってきたとは大変幸運なことだと思う。まず最初に相手に強い楔を打ち込むことができれば、その後の研究活動も余程違ったものになり、今までの日本からの研究者を大きく凌ぐ成果を得られるのではないだろうか。
日本の官僚機構は「政策立案」機能を果たしているという点で、シンクタンクの役割を果たしている部分もあるが、政策執行機関(行政)としての強力な機能を持っており、そこに利害関係が生まれる以上、本来的なシンクタンクたりえないものである。
中野君の言う「日本に世界に通用するシンクタンクを創る」という夢が、今回の彼の米国での研究活動で、実現に向けた具体的な歩みを始めるこ仄聞するに、ホワイトハウス内での会話は相当に品性下劣なもののようである。まさにテキサス小僧の面目躍如といったところだが、そんなところにワラジを脱ぐ中野君の身柄を心配しながら、より逞しくなって戻ってきてほしいと思っている。
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