郵政関連法案をめぐって自民党と小泉純一郎首相との間であつれきが生じ、政治が断然おもしろくなってきた。「抵抗すれば自民党をぶっつぶす」とまで公言した小泉首相に人気があったのは、就任以来、自民党と対決姿勢を続けてきたことにあったが、昨年末からは「自民党が自分の政策に擦り寄ってきた」とばかりに慢心が目立っていた。
国会議員の秘書をめぐるスキャンダル問題を不問にすることはできないが、年明け以降の国会で政策論議はなく、田中真紀子前外相の問題をきっかけに小泉首相の存在がどんどん霞んでいき、政治が面白味を失っていた。
郵政関連法案は民間の参入によって郵便事業に競争原理を持ち込むのが目的。昨年末、法案の大枠がまとまった段階で、民間業者などから「参入ハードルが高すぎる」「郵政族に迎合した」などと批判されるほど内容的に民間業者に厳しい内容となっていた。
そうした内容であっても、総務省は自民党の郵政族に遠慮してなかなか法案を国会に提出しなかった。これに業を煮やした小泉首相が先ごろ片山総務相に直接、法案提出を命じ、ようやく郵政問題が政治の舞台に再登場したという経緯があった。これに対して自民党は法案提出は認めたものの、法案の中身については「容認したものでない」と開き直った。
郵政事業改革は小泉氏の積年の政策課題である。橋本竜太郎氏と争った1996年の総裁選でも昨年の総裁選でも公約の重点項目のひとつとしてきた。
日本の構造問題は数多くあるのだが、なかなか手が付けられなかったのが第二の予算といわれる財政投融資計画だった。郵便貯金や郵便局の簡易保険などの資金を政府の資金運用部というところに集めて、高速道路建設や地方の工業団地建設など特殊法人の費用に充ててきた。税金で使う一般会計予算と違って、国民の痛みを伴わないことから80年代以降の景気対策では巨大なバラマキシステムとして機能してきた、
こうした財投事業の多くはすでに破たん状況にあるといわれ、赤字事業への補給金の増大が一般会計を蝕む元凶となっている。ところがこのシステムのうまみは、自民党によるバラマキシステムをして機能してきただけでなく、官僚の安易な天下り先として存在し、二万件を超す特定郵便局は自民党の強力な集票システムの役割を果たしてきた。
郵便事業こそは自民党と霞ヶ関官僚を結び付けるヒト、カネ、モノの本丸であり、ここにメスを入れることこそが旧来の自民党的政治からの脱却を目指す小泉首相の最大の課題なのである。
小泉首相が23日、記者団に語った「自民党が小泉内閣をつぶすのか、小泉内閣が自民党をつぶすのか」という言葉の意味合いはそこらへんにある。
ここで自民党と小泉内閣が全面対決すれば、国民の支持は確実に小泉首相に回り、結果的に小泉内閣の支持率が再び向上することになる。鮮明にマスコミはこのところ小泉内閣の限界論を論じるようになってきているが、おっとどっこい立ち直るチャンスはある。郵便事業への民間参入問題で中央突破を図る考えなら、萬晩報は小泉純一郎を断固支持する。
国会議員の秘書をめぐるスキャンダルに国民はうんざりしている。国会の場で、与野党が相手側の不祥事を罵り合う場面を見たいわけではない。自民党の巨大な抵抗勢力に敢然と立ち向かう小泉純一郎を見たいのである。
郵便事業への民間参入は郵政改革の一里塚でしかすぎない。もっと大きな郵便貯金の民営化という課題が控えているということを忘れてもらっては困る。