私は現在中華人民共和国 広東省 東莞市で工場勤務を今年の9月からはじめました。業種は製造業ですが何を作っているのか説明すれば、狭い業界ですので一気に会社名までわかってしまうので、それは秘密にさせてください。基本的な業務は生産管理ですが、購買・在庫管理・計画・出荷・物流・コンピューターシステム等など立ち上げということもあり、仕事は多岐にわたってあります。
製造業の海外流出が叫ばれていますが、現実の製造業界では流出というよりは日本の国の底が中国に向けて破れた感じであって、流れ落ちるような勢いで中国へ移転が始まっています。すべては中国で量産を実施するのが、基本的に見積書を提出する前提であって、それで無ければ試作も受注できませんし、見積書を提出する事すら断られる感じです。
この動きは2年前ほどから始まり、逆に2002年には終結する感じすらあります。この終結とは、中国国内でも 日系、香港系、台湾系、地元中国系、韓国系、シンガポール系、欧米系と 3つ巴、4つ巴の価格競争が現在恐ろしい勢いで進行中です。日本で価格競争力がなくなったからといって、中国で安い人件費をあてにしようなどという単純な発想では中国でも生き残りを図れないでしょう。
10年前は巨大な企業がその豊富な資金力をバックに空恐ろしい規模での進出がメインでしたが、現状では日本での人員規模が200〜300人規模の中企業が進出しているのが特徴です。今まで日本という国を底支えしてきた企業群がそっくり進出し、なおかつ日本の本社がリストラという名前の元に縮小に次ぐ縮小をしています。
これはインドネシアやマレーシアに向かって日本企業が進出していたころよりも大規模な日本の空洞化が進行しているもっとも大きな表れであり、日本での単純労働者は製造業に限って言えば消失するか、給与が二分の一になってしまうかどちらかと思います。
中国現地で工場の立ち上げを実施してみて感じているのは、マレーシアでもそうでしたが、現地労働者の予想を越えるレベルの高さであり、熱心に技術を習得しようという姿勢です。確かに熟練労働者の企業への定着率は低いですが、これはどちらかといえば日本の社会が特殊であって 企業間の労働力流動化を極力阻止している社会構造上の問題であり、日本の失業率を下げるためにも労働者の流動性を高めなければならないといっている人間が 同じ口で海外は労働者の定着率が悪いからだめだと言っているのが現状です。
広東省では台湾系が中心となり、大規模な工場群が立ち並ぶ工業地帯が広がっています。ほとんどが「来料委託加工」という形をとっています。来料委託加工とは、香港に仮の本社を持ちその香港企業が中国工場を運営する形をとる物であり、設備・材料は基本的に輸入関税が免除されて中国へ輸入することが可能であるが、完成品は全量海外へ出荷が義務付けられる形態を指します。
ここまで書くと簡単そうですが、この委託加工形態をとって生産を実施するには、工場地域を管理統括している税関と委託加工契約を締結する必要があります。税関といえば基本的に定型フォーマットに必要事項を記載して申請を行えば受理されると日本人は考えがちですが、これは税関が主催している事業への参画希望業者の受注に近いイメージがあり、申請というよりも受注活動のような税関への説得資料などを作成して、活動を行うことが必要になります。
受注を得るための営業活動ですの定型フォーマットは基本的に存在する物の いかにして税関担当者への説得力のある資料と内容がそろえられる事が重要であり、どんな資料が必要という面で作業を煩雑なものにしています。
中国の華南地方は基本的にそんなに人口の大きい場所で無く、かつては草魚の養殖池が広がるのどかな田園風景が広がる地域で、2000人程度の村が点在していました。そこに香港企業、台湾企業、日本企業を含めて工場が多量に進出した結果、村の人口が二万人以上に膨れ上がる結果になりました。村のほとんどの人間は外から出稼ぎにきた人間であり、現在も続々と増え続けています。
その人口流入があるために単純労働者給料が高騰せずに済んでいる面も否定できません。しかし 技術系・管理系のスタッフの給与は激しく高騰しており、一般ワーカーとの給与価格差は10倍以上になることは珍しくありません。
人口が流入しつづけているために各工場では寮が併設され、その寮には食堂も付き、労働者は本当に着の身着のままで雇用される状態にあります。しかし 誰もがハングリーで少しの機会も捕らえて勉強しようという意識は誰しもが持っています。何せ単純労働者として雇用されても機会を捕らえてスタッフの補助職として配置換えされてコンピューターの勉強をさせてもらえば転職したときにパソコンが使えるとアピールでき、給料は倍になるのですから。
いろいろと書いてみましたが、これから中国進出を考えていらっしゃる製造業の方々にお勧めの手順を書いて終わりにしたいと思います。
1.大手取引先や銀行などから説明を受けておおよその立地を決める。
2.とにかく現地に飛んで 現地に半年住んで設立準備室を作る。
3.日本から 金(経理系人材) 人(人事系人材) 時間・物(プロジェクト管理企画屋)管理の3名は落ち着いたら呼び寄せる。
4.半年経ったら 何で勝負するのか業務内容を決める
5.お金と係数と時間を入れて事業計画書を作って見る(3年間がお勧め)
6.村長や地元有力者を訪ねて(半年の間にコネを作るのが大切) 1000人位の会社を作りたいけど誰か設立準備を手伝ってくれる人を紹介してもらう
7.先行している大手大企業や銀行、知り合いから通訳を紹介してもらう
8.日本から営業と工事屋と物流担当を呼んで仕事を取り工場を確保し、設備・材料の手配をはじめる
9.日本から製造と品質管理と生産技術を呼んで設備の受け入れと備品の準備と製造、出荷検査を行い製品を出荷する
以上です。どの会社も1〜6を日本で実施したがりますが、あくまでも現地実施がお勧めです。本当は7〜9に時間をかけるよりも1〜6に時間をかける事が良い結果を生みます。特に3日から5日の視察や出張では何もわからないとはっきり言えます。
山崎さんにメールは editor@yorozubp.com
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