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チューリップで結ばれる日蘭友好の輪

2000年09月07日(木)
萬晩報通信員 佐藤 嘉晃

欧州にへ出張して、オランダでオランダ北海道人会という組織がユニークは活動をしていることを知った。会長の松本善之氏との会食の折、筆者が感銘を受けた事柄について伝えたい。

●日蘭交流400年

日本とオランダの交流は、西暦1600年4月(慶長5年3月)、オランダ交易船の「デ・リーフデ(慈愛)号」が日本に漂着した時から始まる。漂着場所は豊後、現在の大分県臼杵市であるといわれている。

その船の生存者の一人、イギリス人航海長のウィリアム・アダムス(三浦按針)が徳川家康に認められ、江戸幕府に仕え活躍した事は、歴史で学んだ通りである。その後、船長ヤコブ・クワッケルナックが、徳川家康の意向を東インド会社(1602年3月設立)が派遣した船隊に仲介し、日蘭交流が開始された。以来両国の長い交流が始まり、今年西暦2000年が、日蘭交流400周年の記念すべき年となった。

在蘭日本商工会議所はオランダに在る日本人会の最大・公式の組織で、在留邦人約6000名、企業約350社が登録している。もちろんこのような組織に属さない日本人もおり、また会員となった人の中でも数年間しか在住しない例もあることから、在オランダの日本人は約6000名前後で推移していると言ったところであろうか。

●オランダ北海道人会

オランダ北海道人会会長の松本氏は現在、Y&T MATSUMOTO INT'L代表として、輸出入コンサルタント会社を経営している。もともと、日本の総合商社のオランダ/ロッテルダム支店長として駐在。3年後に一度日本へ帰国したが、日本の歯科医療機器メーカーのヨーロッパ支店長として再度来蘭。8年後の1997年、支店閉鎖に伴い退職し、その後独立する。微力ながらも公私に亘り、日蘭の架け橋にならんとし、今に至る。

本会の設立は1997年10月。その月の28日、KLMオランダ航空の札幌−アムステルダム便が就航した事が契機となっている。この時、北海道とオランダが直接に繋がった。なお現会員数は、オランダ在住の日本人会員が約50名である。年間行事として、会員同志の親睦を計る種々の催し(北海道出身者らしく、ジンギスカンパーティーやスキーなど)を行っている。

まず、”古里の学校へチューリップの球根を送る企画”(※1 末尾の趣意書を参照のこと)がある。これは昨年からスタートし、会員の出身校を含めた40校へ寄贈した。寄贈されたチューリップの球根数は、6品種×10球 計60球を40校に送った。

送られたチューリップは、校庭の片隅に咲き誇る事となったが、学校によってはこれを機に、チューリップ庭園を校庭内の一部に新設した所もあり、約70%の学校から感謝状や開花した時の写真、教職員や生徒達が書いた作文など数多くのお礼が届けられた。これほどの反響は予想外であり、一同大変感激させられた。

また昨年9月、道新文化センター主催で150名に依る日蘭文化交流として、マーストリヒト市での通訳などのボランティア活動がある。また同じ月には江差町長以下17名が来蘭し、「開陽丸」によるドルドレヒト市との交流再開の協力活動も行なった。なお、今後の活動予定としては、今年の11月に、北海道交響楽団の60名によるアムステルダム公演が計画されており、そのための協力があげられる。

上記のように、年間を通じて北海道との関わりを重点に、精力的な活動をされている様子がわかる。 特に去年から始めた、チューリップの球根を送る企画については、昨今の若年層を中心とした忌まわしい事件を知るにつけ、日本にいる我々以上に心を痛め、日本の行く末について案じている彼等の想いの強さに感銘を受けると同時に、国や地方自治体に頼るばかりではなく、本人達の自由意志による、祖国への想いに突き動かされて行動するという、清々しい活動に拍手を贈りたい。

筆者も、北海道に住まいする道民の一人として誇りに思う。

●今年のチューリップ発送予定

今年は9月中旬を予定されているとのこと。現在事務局長と打ち合わせ、チューリップ栽培業者を訪ねて、品種・数量・価格等を協議中。発送先は、火山爆発のあった有珠山界隈の洞爺村・大滝村・虻田町・壮瞥町を最優先とし、少なくとも合計40校を計画中である。学校の選定は、昨年同様に道庁・北海道教育庁と相談の上決定される。

今回のチューリップの球根を送る活動の資金源は、会員のポケットマネーと札幌にある一部企業からの寄付に依るそうだが、今後とも末永い活動を続けるためには、彼等の善意にだけ頼るわけにはいかないだろう。

日本(北海道)から遠く離れた彼の地において、日本に暮らす我々以上に祖国への熱い想いを抱き続ける彼等に協力出来るすべはないものかと思案してみた。そこで、せめて募金という形で協力してはどうかと思い、会長へ打診してみたところ、額の多少ではなく、同じ想いを共有する友情の輪が広がれば・・・という事で快諾頂いた。

そこで、この企画に賛同する企業や個人の協力をお願いしたい。筆者も微力ながら協力させて頂く所存である。そして、出来れば土にまみれ、球根の植付けに汗を流してみたい。自分の母校の庭に、綺麗なチューリップが咲き誇る姿に想いをはせながら・・・。

なお、あくまでも”北海道内の古里の学校”へ限定する、という条件付きである事を申し沿えておきたい。

 古里の学校へチューリップの球根を送る企画趣意書
■「オランダ北海道人会」は1997年10月 KLMオランダ航空のアムステルダムー新千歳ー名古屋就航を契機として結成された。会員50余名。
■1600年4月19日オランダ船「デ・リーフデ(慈愛)号」が、日本の大分県臼杵湾へ漂着。以来両国の長い交流が始まり、西暦2000年が日蘭交流400周年に当る。
■この記念すべき年に、21世紀を担う子供達の夢を育む一環として、オランダの国花であるチューリップの球根を北海道内の古里の学校へ送る企画を始めるもの。
■送り先は、北海道総務部知事室国際課、北海道教育庁の協力を仰ぎながら、会員が卒業、在籍した小中学校、養護学校、僻地校等から40?50校を毎年選定する。
■この企画はオランダ北海道人会が存続する限り、毎年の恒例行事として継続される。
■北海道とオランダの友好がチューリップの輪で結ばれる日が実現することを期待し、本企画の強力なる推進を計るものである。
◆問い合わせ先 オランダ北海道人会会長 松本善之 ymatsu@xs4all.nl 


 佐藤さんにメールはysa@HomeResort.com
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