昨年から新聞などメディアに登場するキーワードの一つが「脱炭素」である。新型ウイルスがなければ、一番目立ったキーワードだったかと思う。EU諸国を中心に社会全体のうねりが脱炭素に向かっている。つまり脱石油とも換言できる。

日本でも菅内閣がようやく重い腰を挙げて2050年にむけて「脱炭素」をぶちあげた。EUで自然エネルギーと電気自動車への転換スピードが昨年から加速し始めている。ここでも日本はまた後塵を拝すころになりそうだ。

風力発電は別として、太陽光発電は一時期まで日本の独断場だったのに、国策が原子力に大きく傾いていたため、太陽光パネルの世界では、日本勢の影が薄くなっている。シャープは台湾企業に支配下に入り、三洋電機の電池部門を引き継いだパナソニックは最近、太陽光パネル製造から撤退することを決めた。残るのは京セラのみである。

携帯電機は日本電電公社が自動車電話として開発したことから普及したが、独自の規格にこだわって世界市場で乗り遅れた。半導体でも同じことが起き、光ファイバーもまた同じ轍を踏んだ。エネルギー分野でも日本は競争力を失った。

自動車ではどうだろうか。トヨタとホンダが世界に先駆けてハイブリッドシステムで世界をリードしたが、EUも中国もハイブリッドではなくEVに向けて走り始めている。ハイブリッドにこだわっているかぎり世界市場をリードできない状況になりつつある。(萬晩報主宰 伴武澄)