バングラデシュの友人、シャーカーさんが「日本がアジアを目覚めさせた」(ハート出版)という本を上梓した。日本とインドの出会いは岡倉天心とタゴールの出会いから始まったというのがシャーカーさんのかねてからの持論で、タゴール、ベハリ・ボース、チャンドラ・ボース、パール判事と日本と強いかかわりを持ったインド人のほとんどがベンガル人であることからこの本が生まれた。

シャーカーさんはもちろんベンガル人の一人として日本に留学し、日本人と結婚。日本ベンガル協会を設立して日本とバングラデシュとの懸け橋となり日々努力している。

タゴールの時代、インドはひとつだった。日本が明治維新に成功して東洋の強国として台頭したが、インドはムガール王朝が崩壊し、全土は英国国王の統治下にはいって呻吟した。中国もやがて列強の支配下に入った。

タゴールは日本では詩人として有名であるが、音楽や舞踊、演劇など幅広い分野でインド国民を精神面から鼓舞した。そのタゴールを目覚めさせたのが岡倉天心だった。岡倉天心はインド滞在中、多くの思想家たちと交流を重ね、その思いを「東洋の理想」に書き綴った。岡倉天心もまた「東洋」に目覚めたのであった。

僕たちは経済面からばかり国の力を計り勝ちであるが、仏教を生み、儒教を育み、2000年以上にわたって東洋として独自の精神文化が維持されていることに再び注目する必要があるのではないかと思う。シャーカーさんの新書を読みながらそんなことを考えさせられた。

今年最後の夜学会はクリスマスの日ですが、みなさんと東洋という概念について今一度、議論したいと思います。