寒村から40年で人口が1300万人に達した深圳市。ハイテクを中心に世界の最先端都市として注目度ナンバーワンだ。その新興都市で進むのが乗り物の電動化。1万6000台のバスは100%、2万台を超えるタクシーもほぼ100%がすでに電気自動車(EV)となっている。充電基地は広東省内に5万5000カ所もあり、アメリカ全体の数に匹敵する。ちなみに日本全国のガソリンスタンド数は約3万カ所にすぎない。電化の牽引役は地元に本社を持つBYD社だ。

中国のEVシフトは2009年に始まった。政府は国家を上げて、「十城千輌」政策を3年間で推進した。毎年10の都市の公共交通に対して1000台分の補助金を出した。エンジンと比較してモーターのエネルギー効率は4倍以上。マイカーの普及で燃料供給に問題が出ると考えた政府がエネルギー政策を大転換させた。その後は、北京、上海、杭州など各都市が独自でEVシフト施策を打ち出し、公共交通のEVシフトが進んでいる。現在では全国の充電スタンドは60万カ所を超えている。

BYD(比亜迪)はもともと電池メーカー。2008年、電池製造を強みにEV製造に乗り出し、アメリカの投資家、ウオーレン・バフェットが早くから将来性に着目し投資を開始した。深圳市のバス、タクシーはすべてBYD製だ。深圳市のタクシーはフォルクスワーゲンの赤いサンタナが有名だったが、10年で青色のBYD車が赤いタクシーを駆逐した。

BYDは昨年、テスラが上海でEV製造を始めるまでは、中国EVのトップランナーだった。2014年から2018年までの5年間に前途汽車、奇点汽車、BYTON汽車、零跑汽車など多くの新興EVメーカーが創業した。2019年の生産実績を見ると、NEV(新エネ)乗用車メーカー66社のうち、生産台数1万台以上メーカーが18社、NEV商用車メーカー141社のうち、生産台数1000台以上メーカーが22社にとどまっている。

中国のEV車製造の底流には、電動自動車と電動低速車の普及がある。EV車はエンジン車と比べて構造が簡素であるため、新規参入が相次いでいる。