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JIメールニュースNo.397  2009.04.23発行
『”門戸開放”から20年 不況で日系ブラジル人は、今』
財団法人国際平和協会会長 伴 武澄
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11年前の2009年、日本経済はリーマンショックで大きく揺らいでいた。構想日本でこんな話をしていた。

  昨年末、群馬県大泉町のある日系ブラジル人学校の卒業式に招かれた。財団法人国際平和協会が毎年秋に「東京遠足」をプレゼントしているご縁だ。
晴れやかな式典だったが、子どもたちの4分の1が新学期には日本にいられなくなるという話を聞いて悲しくなった。
20年前、日本経済がピークにあった時、外国人労働を導入するかどうかで激論があった。ここまま行くと日本経済は労働力不足で破綻するという悲観論があった。政府は労働市場の開国は決断できず、日系ブラジル人に対してだけ門戸を開放した。
 90年代以降の成長を支えたのは、日系ブラジル人だったとっても過言でない。円高が進む中で多くの企業がアジアに生産拠点を移していた時代である。安い賃金で働いてくれる日系ブラジル人たちがいなければ、企業の空洞化はもっと進んでいたはずだ。
 生活面では文化の違いによる軋轢もあったが、雇用主からは「残業も厭わずよく働いてくれる」「日本人が失った勤勉さを持っている」などという声をよく聞いた。景気が反転すると、企業は真っ先にその日系ブラジル人をリストラしている。これが今の日本の姿である。労働力が不足していた際には“日系だから”と積極的(優先的)に門戸を開放したのに、経済状況が悪化したとたんにその考慮がなくなってしまうのは、あまりにも卑怯ではないだろうか。
 日系ブラジル人の雇用切りは、多くの問題を生みだしている。帰国しようにも旅費を賄えない人も多く出現した。政府は帰国の航空運賃支給の検討をしているが、支給されると二度と日本で働けなくなる。「早く出て行け」といわんばかりで、なんともなさけない。もっと深刻なのはブラジル人学校の経営だ。
 それでなくとも政府や自治体からの補助はない。親がリストラに遭って授業料が払えなくなるだけではない。児童・生徒数そのものが激減すれば学校経営ができなくなる。否すでに危うくなっているのだ。
 景気が回復した時、日本は再び労働力が足りなくなるはずだ。誰がその労働を支えてくれるのか考えておく必要があるのではないだろうか。

<伴 武澄 氏 プロフィール>
1951年、高知市生まれ。77年、共同通信社に入社、経済中心に取材。
メルマガ「萬晩報」主宰、2005年から国際平和協会会長。
著書『日本がアジアで敗れる日』(文藝春秋社)など。
「萬晩報」http://www.yorozubp.com/